第7話 太陽の少女
「えーっと、お前はさっきの」
「はい、そんないい方したらダメだよ。初対面の相手に“お前”何て言ったら失礼でしょ?」
「うっ!」
何だこの女は。俺は正直に言えば唖然とした。
呆れるほど真っ直ぐで太陽のように溌剌としている。
俺にはそんな印象が湧いていた。
「えーっと、誰?」
「って失礼だよね、それ! 私だよ。ほら高台で会ったでしょ」
「そうじゃない。俺はお前の名前を知らない」
少女の名前も知らない。にもかかわらず説教をされるのはごめんだ。
すると少女は納得したのか、ポンと手を叩きピースサインをしながら自己紹介をしてくれた。
「じゃあ自己紹介タイムだね。私はエクレア。エクレア・エーデルワイスだよ」
「エクレアか。美味しそうな名前だな」
「おっ、可愛いこと言ってくれるね。でも私はそう簡単には食べられないよ」
「冗談だ。真に受ける奴がいるか」
「むっ、それはちょっと酷いよ」
どこが酷いのか俺にはさっぱりだ。人の沸点何て知る由もない。
しかし向こうが自己紹介をしたにもかかわらず、俺だけ名乗らないのは不釣り合いだ。
俺はコホンと咳き込むと自己紹介を手短にしておく。
「俺はブキヤ・カイ。ここに泊まっている客だ」
「おっ! じゃあ私と一緒だね」
「お前もなのか」
「はいそこ! 私の名前はエクレア。エクレアだよ」
「わ、わかったよ」
かなりウザいな。けれど俺にも非があるのは認めざるを得ない。
かなり高圧的なスタンスでいたのには長年染み付いてきた1人の性格が由縁する。
だから少しだけマイルドに努める。
「はぁ……わかったよ。じゃあ俺のこともカイでいいから」
「そうするね。何だか面白い子でよかった」
「面白い?」
「うん。私、自分がある子って嫌いじゃないんだ。むしろ大好き」
理解できない。俺とは全く……いいや、そうでもないか。
俺の作る武具も個性が強い。
そんな武具達が嫌いになれないので、もしかしたらいい関係を築けるかも知れない。
そうはならないだろうが。
「そう言えばお店の人は?」
「見当たらないから俺も捜していたんだ」
「えっ? 捜してなかったでしょ」
エクレアは思った以上に周りがよく見えている。それとも端的に見えたものを口に出してしまったのだろうか。
俺はテーブルに肘をついていたが、スッと立ち上がった。
「そっか。よく見てるね」
「あはは……私は昔から人目を気にするタイプだったからだよ。率先して前に出て、みんなを守る。それが私のしたいことなんだー」
「へぇー。だったら騎士にでもなればいいのに」
「むっ! それができないから冒険者になったんだよ」
エクレアは頬を膨らませた。怒っているんだ。
それにしてもこんなに表情豊かな少女を俺は初めて目の当たりにした。
きっと可愛いとはこういうタイプのことを言うんだろう。俺にはウザいが頼もしいコミュ力の化身に見える。
「そう言えばカイはどうしてこの町に?」
「俺は……まあ色々と」
「色々?」
あまり自分の素性をひけらかす気はない。
こ都が上手く運ぶ確率よりも最悪に転ぶ可能性の方が極めて高い。
それを考えれば、俺は【勇者】達の元仲間と言うワードはあいつらにとっても汚名に繋がりかねなかった。
(結局俺は、なんだかんだ言ってマーリィ以外の仲間が好きだったんだな)
とは一度追い出された身だ。ここは大人しく身を引く。
エクレアはそんな俺の顔色をうかがいながら次の言葉を待っていたが、不意にクルミナが店の扉をくぐった。
「あっ、2人とも揃っていたのね」
「クルミナさん……それは?」
「はい。カイさん作っていただいた包丁を試してみたくて、買って来たんです」
「買ってきたんですか!」
2人は驚いていた。
クルミナの持っていた魚は今作った包丁では切れるかわからないような高ランクの魚のモンスターだった。
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