第77話 商業ギルド

商業ギルドに行くと豪華な応接室に通されて、ギルドマスターやサブマスターなど管理職のお偉いさんが勢揃いで出迎えてくれた。


「勇者様、ご足労頂きありがとうございます。私は、当ギルドのマスターをしておりますジャニーと申します。お見知りおきを。」


「いえいえ。それでポーションはどちらに出しましょうか?」


「それでは、倉庫の方にお願いできますでしょうか?」


そうだ。倉庫まで行くの面倒だし、マジックバッグに詰めて渡せば良いか。

渚さん、よろしく。

ワイバーンの革でおしゃれなナップサックを作り、神から頂いたスキルギフトを使ってインベントリを付与した。


*鑑定

 名称: お洒落なナップサック(マジックバッグ)

 ランク: SS

 特徴: 容量無制限、時間経過なしのマジックバッグ。

     ジャニー専用

 付与: インベントリ、不壊、清潔


「このバッグに全て詰め込んでおいたのでどうぞ。バッグはサービスです。」


「え? はぁ?」


ジャニーが鑑定したのだろう。バッグを見つめたまま固まってしまった。


「ジャニーさん、大丈夫ですか? ジャニーさん専用なので取り扱いには気を付けてくださいね。」


「はい! このような素晴らしいバッグをありがとうございます!」


声が裏返っていたぞ。


「あの、勇者様。このバッグのデザインは素晴らしいですね。どなたがデザインしたのでしょうか?」


サブマスターの女性が身を乗り出して聞いてきた。


「僕が作りました。」


「シャイナ! デザインも素晴らしいが、その前に鑑定したまえ。このバッグはアーティファクト級ですぞ。」


「い、インベントリ・・・。」


今度はサブマスターがフリーズした。


「そうだわ。アトム君、野菜は持ってきてますか? 現物が見たいとおっしゃるので。」


「もちろんあるよ。」


ガラスの大きなサラダボールにキャベツにレタス、キュウリにトマト等の生野菜を山盛りにして出した。

頂上には母さんの里の名産のコーンをたっぷり乗っけた。


「どうぞ。まずはそのまま食べてみてください。」


「え? 生で野菜を食べるのですか?」


「苦いですよね?」


「我が国の野菜は苦くありません。甘いのです。騙されたと思って食べてみてください。」


「え? 苦くない!」

「ほんとだ。おいしい。」

「なんて新鮮なんだ。みずみずしいぞ。」


そうだろ、そうだろ。


「では、お好きなドレッシングかマヨネーズを付けて食べてみてください。さらにおいしくなりますよ。」


本日用意したのは、和風、フレンチ、ゴマドレ、そしてマヨだ。


「野菜って、こんなにおいしかったのね。」

「このタレもうまい。」

「ギルマス! これは売れますよ!」


「野菜の種類はこれだけじゃありません。それに煮ても焼いてもおいしいですよ。」


「野菜もこのタレも買います!」


「毎度あり!」


「実は、急に押し寄せた避難民の数が予想以上に多く、食糧の備蓄がカツカツなのです。できるだけ食糧を売っていただきたいのですが。」


「そうですか。では、魔物の肉も大量に持っていますので卸しますよ。」


「ありがとうございます。あなたは食糧の面でも我々を救ってくださった救世主様です。」


「今後とも永いお付き合いをよろしくお願いします。」


ギルマスは、俺から食料を買えだけ買い付けておしゃれなナップサックに詰めていった。

ナップサックをとても気に入ってくれたようだ。

隣で羨ましそうに見つめているサブマスターの目が怖い。

仕方ないので付与をしていないピンクのナップサックをあげた。


「ありがとうございます! ありがとうございます!」


マジックバッグじゃないのにめちゃめちゃ喜んでるよ。

でも、ギルマスとペアなんだよね。

興奮してそこに気付いていないらしい。

事情をしらない人が見たら気持ち悪いと思うか、怪しい関係なのかと勘違いしちゃうよ。

俺のそんな心配よりも勇者から授かったバッグとしてバッグが崇められるようになってしまった。

それでサブマスターのバッグは、業務命令で取り上げられカウンターのショーケースに入れられてしまった。

それを涙ながらにソフィアに訴え、やっとサブマスターの手に戻ったそうだ。

それからナップサックは革職人によって再現され、サウザンカローナ王都の名産品となった。



商業ギルドを後にした俺たちは、さっき俺が作った倉庫の前にいた。


「アトム君、やり直し。倉庫はもっと広くして、2階を事務所にしましょう。それと倉庫の奥にハワード王都やハリス領につながるゲートを設置してください。」


「はい。おっしゃる通りに。」


「それにしても何ですか、この豪邸は。ハワードよりも大きいじゃないですか。ここは別荘ですよね? 誰が住むのですか?」


「だよね。僕もやり過ぎちゃったなとは思っているんだ。それにまだ1階は何も無い状態なの。どうしようか?」


「そうですね。ハワードの方は完全に部外者が立ち入り禁止になっているので、こっちは公用にしてはどうですか? ゲートをつなげばどこにあっても一緒でしょうし、パーティや社交界はこちらでってことにしましょう。客間もたくさんあるようですし。」


「そうしようか。」


「では、1階には応接室とダンスホール、そして会食ホールを作ってください。キッチンも広く取ってくださいね。」


「了解しました。」


絶対、俺ってソフィアの尻に敷かれるんだろうな。


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