第76話 神殿とギルド

「じゃあ、僕は拠点を作ろうかな。エミリンとカリンはソフィアの護衛を頼む。サリー様は、一人でも大丈夫ですよね?」


翌朝、朝食時の打ち合わせ中。


「そうだな。今の私には1000人の兵でも敵わんだろうて。それとお父様も連れて行こうと思っている。その方が話が早いからな。」


サリー様には交渉事は向かなそうだものね。

すぐキレるし、脳筋のイメージが強い。


「私は予定通り商業ギルドに行ってポーションの交渉をしてきます。」


「よろしく頼むよ、ソフィア。ついでにハワードの野菜も交渉してほしい。」


「わかりました。もし、あちらの穀物や名産品で継続的に購入したいものがありましたらおっしゃってくださいね。」


「フルーツと香辛料をよろしく。オリビアは案内をよろしくね。」


「わかってるわ。」


オリビアはいつもの調子に戻っていた。


「ちょっとだけ神殿を覗いても良いかしら? 教皇様が居なくなってどうなったのか気になるの。仲が良かったシスターもいるし。」


「わかった。じゃあ、まずは神殿に向かおうか。」


「うん。ありがとう。」



そして、今朝早くに世界樹奪還のニュースが王城から報告され、街はお祭り騒ぎとなった。


「噂の隣国の勇者様が魔物を退けてくださったらしい。」

「勇者様は凄くイケメンらしいわよ!」

「勇者様には、炎龍の使い魔がいるそうだ。」


街の人々が俺たちの噂をしている。

気持ち良い!


「教皇が天罰でカエルにされたらしいぞ。」


そそ。教皇は馬鹿だよね。これでこの街も平和になるよ。


「勇者様は、女ったらしでたくさんの婚約者がいるらしい。」

「英雄、色を好むって言うしな。」

「とんだクズ野郎だな!」


はぁ?


「聖女オリビア様が勇者様と結婚するらしいぞ。」


いや、しないから!

オリビア! 赤くなっていないで否定しなさいよ。


「あれが私が育った神殿よ。」


って、誤魔化したな。

おお、それにしてもでかいな。

でも、教皇の裏金で立派にしたんじゃなかろうか。


「今、変な事考えなかった?」


「いや、別に。悪いお金で建てたのかな、なんて考えてないよ。」


「まあ、否定しづらいわね。」


神殿の扉をあけるとこちらに視線が集中し、見覚えあるオリビアの顔を見て安心したのか皆が集まってきた。


「オリビア様! 戻ってきていただけたのですね! 教皇様の替わりは神の恩恵を受けたオリビア様しか考えられません。」


「いいえ。わたくしは勇者様と旅に出ます。皆さんで新しい神殿の組織を構築し、民の幸福を祈ってください。それと神託です。不正を犯したものはカエルにします。」


「ひええええ。」


あれでも教皇は、教皇であるが故、様々な耐性を持ち、治癒のスキルも持っていた。

その教皇が成すすべなくカエルにされたのだ。

間違いなく天罰であったこと明白だ。

その事実をしっている司祭たちは恐れおののき怯えた。

悪いことした心当たりがあるのだろう。


「オリビア! 結婚おめでとう! そちらが勇者様よね? 予想していたよりイケメンだわ。羨ましい。」


「ちょっと、レミ。止めてよ。まだ、結婚はしないわよ。」


まだ?

ちょっと引っかかったが、この子が言っていた仲の良かった子なのだろう。


「オリビアは皆さんとお別れの挨拶もあるだろうから僕は冒険者ギルドを見てくるよ。その後、拠点の土地も見てくるからゆっくりしていて良いぞ。」


「ありがとう。じゃあ、終わったら念話するわね。」


「了解。」


俺は神殿を出て冒険者ギルドに向かった。

この街で一番大きな建物は、もちろんお城だ。2番目が神殿。そして、3番目が冒険者ギルドなのだ。

なので迷うことなく冒険者ギルドに辿り着いた。

お向かいさんは商業ギルドになっているようだ。

流石に王都のギルドだ。どちらも大きい。

早速、冒険者ギルドに入り、掲示板を確認した。

王都のクエストの8割が護衛依頼だった。

王都は商業の拠点であるため、商人の護衛が多いのは頷ける。

それに貴族が地方へ向かうときの護衛もあるのだろう。

あとは街道周辺の魔物の間引きといったところだ。

おいしいクエストは無かったのでもらった土地を見に行くことにした。


冒険者ギルドの裏手に荒れ果てた土地があった。

なかなか広い土地だ。

老朽化し崩れてしまった元宿舎の残骸が3棟分並んでいた。

邪魔なので全て収納し、古くて資材にはならないので粉砕し肥料にすることにした。


まず、ギルド側に倉庫と事務所を建てた。

販売は、商業ギルドと冒険者ギルドに任せるつもりなのでこちらは卸しのみの予定。

店舗は作らない。

まだまだ土地が余っているので別荘を建てることにした。

神に頂いた創造スキルがここでも活躍する。

錬金術がパワーアップし、思い浮かべた理想像が現実のものになっていく。

微調整は渚さんがしてくれているのだろうが、再現力に驚かされる。

あっという間に洋風の豪邸が完成した。

明らかにやり過ぎた気がする。

4階建ての豪邸は神殿を抜いて街で2番目に大きな建物となってしまった。

最上階の4階は家族のスペース。2~3階は客間、1階は大浴場とトイレ、キッチンのみで後は空きスペースとなっている。

1階をどうしようかなと悩んでいるとソフィアから念話が届いた。


『アトム君、ちょっと良いかしら?』


『うん。大丈夫だよ。』


『今、どれだけのポーション持ってます?』


『初級が1万、中級が3千かな。』


『全部商業ギルドで買い取るそうよ。こっちに来てもらって良いかしら?』


『わかった。すぐに行くね。』


ソフィアに相談しよ。

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