第68話 従魔登録

翌朝、朝一番で王城へ向かった。

ソフィアからルビーを王様に報告しておかないと後で問題になると言われたからだ。


「アトム君か。準備が整ったのか?」


「はい。十分整いました。」


「それで、儂に言うことがあるのだろ? その頭にいる赤い物体のこととかな。」


王様は、大きな溜め息をつき呆れた顔でルビーを見つめていた。


「この子はルビーです。僕のかわいい眷属です。」


「主様、可愛いだなんて照れるではないか。」


「話ができるのか?!」


「人の王よ。我は炎龍なり。名はルビー。主様の眷属じゃ。」


「はぁ? ど、ど、ドラゴンなのか?!」


「そうじゃが? 主様、この者はどうしたのだ?」


おそらく、王様は火トカゲだと思っていたんだろうな。


「そりゃ伝説と言われていたドラゴンが目の前に現れたのだから驚くだろう。これが普通の反応だと思うぞ? 我が家の女性陣は、僕の行いに慣れてしまって反応が薄いし、何でも僕だから仕方ないと受け入れてしまうんだよ。」


「ほう、そうか。ところで、人の王よ。女性をそんなに凝視するのは失礼だと思うぞ?」


「あっ、すまなかった。さすがに驚いたぞ。まさかドラゴンまで従えてしまうとはな。」


「それで、サウザンカローナの方の状況はどうですか?」


「日々、魔物が増え拡大し、瘴気で覆われた魔の大地が広がり続けているそうだ。」


「雑魚がいくら増えても雑魚でしかない。我にかかれば一瞬で殲滅してくれるわ。」


「さすが厄災のドラゴンだな。それより向こうの王と教皇、さらに冒険者ギルド本部のギルマスがうるさくてな。早く勇者を派遣しろだの、聖女を返せだの。くどくどうるさいからそんなに騒ぐなら勇者を派遣しないぞと言ってやったわ。」


「何度も言ってますが、僕は勇者じゃないですからね。」


「わかっておる。儂は神の遣い、使徒様と言っていたのだ。向こうがかってに勇者と勘違いしただけだからな。それに神が降臨したと言ったら教皇が悔しがっていたぞ。それから神に仕えるものが神託に背くのかと言ったら何も言えなくなっておったわ。ワハハ。」


その後、向こうの王様とギルマスの事もボコボコにした王様の自慢話が続いた。

ほとんど俺のおかげのような気がするのだが。


「それじゃ、四天王を討伐してきます。」


「ああ、頼んだぞ。それから旅立つ前に大騒ぎになるからギルドで炎龍の従魔登録をしてくれ。」


「わかりました。では、行ってきます。」


その後、冒険者ギルドに向かったのだが、大騒ぎにならなきゃ良いのだが。

ドラゴンだもの仕方無いよね。


「こんにちは。従魔の登録をお願いしたいのですが。」


「では、ギルドカードの提示をお願いします。そちらの赤い魔物の登録でよろしいでしょうか?」


「はい、そうです。」


「あ、あ、アトム・ハリス様ですか?! 少々お待ちください!」


カードを確認した受付のお姉さんが慌てて奥に走っていった。

そこそこ王都で暮らしていたが、ギルドに来たのは何気に初めてだったりする。

クエストをしばらく受けていないが失効したりするのだろうか。


「お待たせいたしました。ギルマスがお会いしたいとのことなのでこちらへどうぞ。」


面倒だが仕方ない。

ギルマスなら隣の国の情報も入っているだろう。

受付のお姉さんの後ろを大人しくついていった。


「ギルマス、アトム様をお連れいたしました。」


「入れ。」


「どうぞ、アトム様。」


ギルマスの部屋へ案内された。


「初めまして、アトム君。私は王都中央ギルドマスターのカタリナだ。よろしく頼む。」


カタリナさんは、女性のギルマスでグリーンのストレートロングが美しい美女だ。

尖った耳からしてエルフなのだろう。

歳は怖くて聞けない。


「はい、アトム・ハリスです。来るのが遅くなって申し訳ございませんでした。」


「良いんだ。君が忙しいのは把握しているつもりだ。それにポーションの供給にも感謝している。」


「ポーションは足りていますか? 在庫には余裕がありますので足りないときは注文してください。」


「ありがとう。今のところは大丈夫だ。ところで、さっきから気になっているのだが頭に居る子はもしかしてドラゴンか?」


「その通りじゃ。我は炎龍のルビーじゃ。主様の眷属である。」


「やはりドラゴンだったか。何百年ぶりに見ただろうか。それに言葉が話せるドラゴンは珍しいな。」


やはり年齢は聞かないことにしよう。


「今日はルビーの従魔登録にきました。」


「そうか。では、すぐに済めせてしまおう。カエデ、登録してきてくれ。」


「畏まりました。」


「カエデを君の専属にするから偶にはクエストを受けてもらえると助かる。」


「時間が出来たら考えておきます。その前に南の世界樹を解放しなければならないので。」


「やはり君だったのだな。サウザンカローナのギルマスが言っていた我が国の勇者は。」


「勇者では無いのですが。ご存知の通り、私は錬金術師なので。」


「そうだったな。若い君に世界を託すのは申し訳ないのだが。救世主アトム殿。この世界を救ってほしい。」


「もちろん、そのつもりです。私にも大切な人がたくさんいますので、これから世界を救ってきます。」


「ありがとう。丁度、登録が済んだようだ。従魔登録とランクアップだ。ギルドカードを受け取ってくれ。」


「えっ? 金色?」


「そうだ。Aランクにランクアップだ。君も知っているだろ? カードには討伐記録が保存されているんだ。Aランクの魔物をこれ程倒しているのだ。当然、Aランクになるわけだ。ただ、どこにこれ程の高ランクの魔物が居たのかが気になるところだが、聞かないでおくよ。世界樹の解放が済んだら英雄クラスのSに昇格するからな。」


いつ気付いたんだ?


「カエデから念話で報告が来たからランクアップを指示したのさ。」


心を読まれたか?


「心を読んだりしてないから気にしなくて大丈夫だ。君は表情に出やすいからわかるのだよ。」


さすが年の功ってやつだね。

言ったらヤバそうだから言わないけどね。


「それでは僕はこれで。今日、旅立つ予定なので。」


「そうか。引き留めてしまって悪かったね。討伐記録からみても君なら大丈夫だろう。良い報告を待っているよ。」


「はい。」


俺は、ギルドを後にし我が家へ戻った。






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