第67話 炎龍ルビー

ルビーを肩車状態したアトムが帰宅した。


「お疲れ様です、アトム様。お水をどうぞ。」


ありがとうと言ってソフィアから水の入ったコップを受け取るとコップが手の中で砕けてしまった。


「あちゃ~。力のコントロールが難しいな。」


ブレスレットのおかげで急にSTRが500も増えてしまったため、力のコントロールが難しい。

通常時は、ステータスの上昇をセーブするような機能が欲しい。

そこで、オリハルコンのブレスレットに戦闘時以外の力を抑制するスキル「力加減」を付与した。


「みんな手を出して。力のコントロールができるようにスキルを付与するから。」


3人のブレスレットにも力加減を付与した。

その間、ずっとソフィアの視線が俺の頭の上にある。


「あの、アトム様。その肩に乗っているものは何ですか?」


「ああ、ごめん。紹介して無かったね。新しく仲間になったルビーだ。仲良くしてあげてね。」


「我は炎龍のルビーじゃ。よろしく頼む。」


「え? 今、炎龍と言いましたか?」


「ああ、炎龍だ。だが、僕の眷属になっているから安全だから心配しないでほしい。」


「は、はい。わかりました。えっと、炎龍の子ですか?」


「いや。大きいと不便だから縮んでもらっている。本当は10mはある立派なドラゴンだぞ。」


「えっへん!」


「そ、そうですか。ところで、ルビーさんは何を召し上がるのですか?」


「ああ、もう晩飯の時間か。ルビーは何を食べるんだ? 肉か?」


「基本は魔素。この大きさの時は燃費が良いので主様の魔力だけで十分なのじゃ。」


「え? 僕の魔力を吸っていたの?」


「今も吸っているぞ。だが、主様の回復力は化け物だな。化け物の我が言うのも何だが、いくら吸ってもすぐに回復してしまう。」


「まあ、足りてるなら良いか。」


「あっ、でもご飯も食べれることはできるぞ。食物は嗜好品にあたるのだ。」


「じゃあ、一緒に食べることにしよう。ソフィア、ルビーのご飯の用意も頼む。」


「了解しました。ルビーさん、私はアトム様の婚約者のソフィアです。よろしくお願いいたします。」


「おお、主様の番いだったか。それは失礼した。こちらこそ、よろしく頼む。」


「ルビーさんは女の子ですの?」


「ん? そうじゃな。だが、ドラゴンでは主様の子をなすことができないのだ。」


「人化は出来ないのか?」


「主様は、我との子が欲しかったのか! 竜人化の魔法を獲得すれば可能なのじゃが。」


「いや、そういう意味では無かったのだが。人化した方が目立たないし、ご飯も食べやすいだろうなと思ってね。あとで専門家のサンドラ様に聞いてみようか。」


「その前にサリー姉さまに見つかったら大変ですよ。」


「ソフィア、私がどうかしたか?」


「いや、別に? 姉さまもご飯にしますよね?」


「ああ。何か誤魔化された気がするのだが。って、アトム! その頭に乗っている赤いのはまさか炎龍か?!」


「分かりますか? さすがに長い時間じゃれ合っていただけありますね。彼女はルビーと言います。僕の眷属になったのでよろしくお願いします。」


「炎龍のルビーじゃ、よろしくな。」


「おお! 話せるのか! あれ? 眷属にしたということはまさか、炎龍に勝ったのか?!」


「主様は強かったのじゃ。我は手も足も出なかったのじゃ。」


「遂に勝ったのか。さすがだな、アトム君。」


とても悔しそうなサリー様だった。


「サリー様、どうしても炎龍に勝ちたいですか? ここにアーティファクト級のアクセサリがあるのですが、差し上げますか? ちなみに全ステータスが500上がります。」


「それは凄いな。だが、私は実力で炎龍を倒したいのだ。」


「そうですか。時間経過なしで無限収納のインベントリも付与されているのですが。それに見てください。おしゃれでしょ?」


「戴こうか!」


あっさりサリー様は折れた。


「アトム様、わたくしもそのブレスレットをいただけませんか?」


「もちろん、全員分作ってあるから皆に配布するよ。ちなみに俺がファミリーと認めた者以外は装備できないから転売したりしないでよ?」


「アトム様の庇護下にある私たちの中にそのようなことをする愚か者はおりませんわ。今の生活がどれ程幸せなことか。」


「そう言ってもらえると嬉しいよ。この生活が続くように俺は明日の朝、南の世界樹に向けて旅立つことにする。あとのことは頼んだよ。ソフィア、それとアリサ。」


晩御飯を食べながらサンドラ様に竜人化のスキルまたは魔法が無いか尋ねてみた。


「竜人化ね。えっと、あるね。でも、竜人化より人化の方は良いんじゃないかな?」


「人化もあるの?」


「もちろんある。竜人は、ドラゴニュートという種族で太い尻尾と身体や顔に残る鱗が特徴だ。人というよりトカゲのリザードマンに近い。」


「なら、人化の方でお願いします。ルビーもその方が良いだろ?」


「そうだな。人になった方が主様とまぐわえる。」


「おい!」


「主様は、我との子が欲しいのだろ? えっ、欲しくないのか? シュ~ン。」


「ルビー、そんなに落ち込むな。これからこの世界の運命を左右する戦いの前なのだから。そういう話は戦いに勝利してからだ。」


「先程から運命の決戦でもあるかのような話をしているが、魔神でも現れたのか?」


「いや、魔王軍四天王が我々が来るのを待ち構えているそうだ。」


「はぁ? 魔神でもなく、魔王でもなく、その配下の四天王だと?! 主様が負けるはずが無かろうに。我を倒した実力があるのだぞ? 魔神クラスじゃなけりゃ、相手にならんだろうに。」


「え? 俺達ってそんなに強いのか?」


「逆にそんなに我が弱いと思っていたのか?」


「そう言えば、ルビーと戦う前に四天王と同格の魔物を軽く狩れるようになっていたな。それにルビーが仲間になったのに負けるはず無いか。アハハ、気が楽になったよ。ありがとう、ルビー。」


「主様、我に任せると良い。話が反れてしまったが、人化について詳しく‼」


その後、サンドラ様から人化について詳しく聞いた。

そのおかげで俺はトランスフォーム変身という魔法を獲得した。

この魔法は、光魔法に吸収された。


「人化を我が獲得するのは難しそうだな。」


「もし無理だったときは、ルビーのブレスレットにスキルを付与するから問題ないさ。」


「流石、主様じゃ! よろしく頼むのじゃ。」


トランスフォームは、亜空間倉庫にある装備と瞬時に切り替えることが可能にすることもできた。

寝巻きから部屋着、部屋着から戦闘装備と一瞬に切り替えられる。

さらに剣から斧、斧から槍などの武器だけの交換も可能になった。

一旦しまってから持ち替えるという手間は無い。

さらに一旦裸になって着替えることも無い。

非常に便利な魔法だ。

早速、全員のブレスレットに付与した。


「防御のDEFだけは通常時も発動するように設定しておくこと。」


DEFが500もあれば中級冒険者上位の防御力を誇るので、大抵の攻撃は効かないだろう。

素のDEFも加算されるのでなおさら。

安全第一だ。


晩飯の後、風呂に入ることになったのだが、そこでひと悶着あった。


「ルビーさんは女湯ですよ!」


「嫌じゃ! 我は主様から離れんのじゃ!」


「女の子なのですからダメです!」


ソフィアが鬼の形相でルビーを俺から引きはがそうとする。


「嫌じゃあああ! 眷属の我は、主様から離れると死んでしまうのだあああ。」


「え? サンドラ姉様、そうなのですか?」


「確かにドラゴンの消費魔力は大きそうだからそうかもしれない。しかし、そもそも鱗肌のスベスベボディにアトム君は欲情しないのではないか?」


「確かにそうですわね。」


やっとソフィアが納得してくれたようで落ち着いた。

風呂に入ってゆっくりしたかったのに余計に疲れたよ。


「覚えておれよ。絶対に人化をマスターしてやるからな!」


ルビーが悔しそうに小さな声で呟いていた。


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