第65話 デュラハンと世界樹の状況

次は、いよいよデュラハンだ。


*鑑定

 名称: デュラハン

 ランク: S-

 特徴: 馬の首の部分に首の無い騎士の胴体がある最強の悪魔。

     大きな槍(ランス)と大楯を持ち、素早い身のこなしで攻撃を

     繰り出す。首からは常に闇の瘴気が漏れ出している。

     騎馬隊隊長が仲間の裏切りにより打ち首となり無念の死を遂げ、

     悪魔となったとされている。騎士精神を重んじる。

 特技: 槍術、盾術、呪術、闇魔法(死の宣告)、魔力感知、瘴気、

     死者の嘆き(全デバフ付与、全ステータス-50%)

 ドロップ: 魔石、死の騎士のランス・大楯、魔攻の指輪、魔畜の腕輪、

       敏速の耳飾り、巧妙の手袋


魔攻の指輪: 魔法攻撃力を大幅に上げる指輪。INT+300

魔畜の腕輪: 最大MPを大幅に上げる腕輪。MP+300

敏速の耳飾り: 素早さを大幅に上げる耳飾り。AGI+300

巧妙の手袋: 器用さを大幅に上げる手袋。DEX+300


『デュラハンの首から漏れ出した瘴気を吸うと狂乱状態に陥ります。状態異常とは別物なので絶対に吸い込まないように注意してください。』


「みんな、不用意にデュラハンに近づかないように。首から漏れてる瘴気を吸うと狂乱状態になるそうだ。オリビア、もし誰かが狂乱状態になったらすぐに浄化してくれ。」


「わかったわ。任せてちょうだい。」


その間、デュラハンは動かない。様子を見ている?

まるでこちらの準備が整うのを待っているようだ。

全員が武器を構えると徐に動き出した。

速い! あっという間に近づき、一番前に居たエミリンが吹き飛ばされた。

そして、デュラハンは何事もなかったかのように定位置に戻った。


「エミリン、大丈夫か?」


「うん、大丈夫。」


「まずは馬の機動力を奪うことに集中しよう。」


「スターダストレインアロー!」


走りながらカリンが矢の雨を降らす。

その隙に前線に復帰したエミリンが鎧と馬の間を狙って斬り込む。

エミリンが離れた瞬間を狙って俺が魔法を打ち込んだ。


「シャイニングレイン!」


光属性上級魔法の光の雨がデュラハンに降り注ぐ。

逆属性の光魔法はデュラハンの身体を焼き、煙を上げる。

口があれば悲鳴を上げていただろう。

流石に大ダメージを食らったデュラハンの動きが鈍った。

そこにエミリンが突進し、馬の前足を斬り捨てる。

デュラハンは前屈みに倒れて動きが止まった。


決定打がほしい俺は新たな魔法を考える。

エクスプロージョンは闇+火+重の合成魔法だが、闇を光に替えた合成魔法を編み出した。


「ビッグバン!」


デュラハンの瘴気が漏れ出す首に極限まで凝縮された光の玉が吸い込まれる。

その後、鎧の至る隙間から眩い光が漏れ出し、爆音とともに爆散した。

爆風で俺たちも飛ばされ壁に激突した。


「アトム! 大魔法を使う時は合図してよ!」


「ごめん。余裕が無かったんだ。でも、倒せたな。もっと余裕をもって倒せるように練習しようか。」


それから夕方までダンジョンに篭り対策を練った。




翌日、王城へ向かった。

別に王様との約束を忘れていたわけじゃないからね!


「遅かったじゃないか、アトム君。」


「申し訳ございません。ダンジョンで四天王を打ち倒す作戦を練っていました。」


「それを言われてしまうと怒れないじゃないか。まあ良い。まずは状況から伝えておこう。」


それから南の世界樹の情報を聞いた。

王都の冒険者ギルドとサウザンカローナの王都ギルド間で情報交換をしたそうだ。

そういう通信ができる魔道具があるらしい。

もちろん、アーティファクトだが。

情報をまとめると、


・南の世界樹の元に居たエルフ、また周辺の町の人々は全て王都へ避難した。

・世界樹は不思議な光の結界に包まれ、魔物を寄せ付けない。

・結界に触れた魔物は浄化される。

・周囲の魔物が世界樹に向けて大移動し、スタンピードが発生している。

・さらに上級悪魔が眷属を召喚し、悪魔やアンデット、魔族が溢れている。

・サウザンカローナの国土の1割以上が魔界のようになってしまった。

・国王と教皇が聖女はどこに行ったのだと必死に探している。



「勇者よ。受け取るが良い。」


装飾ギラギラの聖剣エクスカリバーである。


「勇者じゃないし、使えないし、いらないです!」


「ノリが悪いのぉ。神託で勇者が居ないって言われちゃったから、もうチャンスが無いし、付き合ってくれても良いではないか。」


「もしかしたら勇者が現れるかもしれないじゃないですか。それまで大切に保管しておいてください!」


「そうかのぉ。おや、アトム君も装備を新調したのかい?」


「はい。エルダーリッチからドロップした賢者のローブを魔改造しました。これでもプレートアーマーと同等の防御力を誇るんですよ! エッヘン。」


「それは凄いな。付与が凄そうだな。」


「もちろんです。ですが、如何せん魔法職なので力が無く、踏ん張れずに飛ばされるでしょうね。って、俺って生産職だった。」


普通に魔法で魔物を狩ってたから忘れてたけど、俺って生産職じゃん。

魔法使いや賢者だと勘違いしてたよ。

と言っても神様からお願いされちゃったし、引き篭もってポーションを作り続ける錬金術師にはもう戻れないな。

だって、冒険が楽しいんだもの。


「あと数日、レベルをもう少し上げたら南に向かいます。」


「気を付けるのだぞ。」


「あと、オリビアの件はよろしくお願いします。王様同士でうまいことやってください。」


「あちらの王様は頭が固いのだ。面倒だな。仕方ない、書を送っておく。」


「お願いします。」


「深い関係になってしまったとでも言えば諦めてくれるだろう。聖女は汚れてしまうと能力を失うというからな。」


「はぁ? それって、僕が捕まったりしませんか?」


「儂の庇護下にあると言っておけば手出しできんだろう。聖女と話を合わせておいてくれ。」


「まあ、わかりました。それでは、時間がもったいないので失礼します。」



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