第64話 神託とアトムの告白

「はぁー。サリーにとんでもない装備を与えてしまったのはアトム君だろ?」


「たぶん、そうですね。」


「昨日、城の兵士が壊滅した。」


「え? どういうことですか? 敵襲でもあったのですか?」


「敵襲ならまだ諦めもつくさ。身内に壊滅されたのだよ。サリーにな。」


「へ? 何をやっているのですか、サリー様は。」


「装備を自慢しただけでは済まなかったらしくてな、試しに全員かかってこい

と言って次々と斬っていったらしい。幸い君のポーションがあったから命には別条なかったがな。」


「何か光景が目に浮かびますね。今度暴れたら装備を取り上げると言っておいてください。」


「わかった。それにしてもサリーは強くなったな。ずっとダンジョンで篭っていただけはある。単騎でも数千の敵兵を壊滅させそうだ。」


「サリー様は敵兵ではなく、ドラゴンが目当てでしょうけどね。」


当然のように王様が我が家で朝食を食べている。

今日はサリー様の愚痴を言いたかったのであろう。

家族はみんな慣れているので普通にしているが、一人だけ普通じゃない者がいた。

オリビアが固まっている。


「オリビア、大丈夫か? 顔色悪いぞ。ちゃんと朝ご飯は食べないとダメだぞ。」


「何? 私がおかしいのかしら? 今、この国の国王が普通に食卓を囲んでいるのだけど、異常よね?」


「うちにとっては普通かな?」


「えーと。そちらの少女は聖女オリビアで間違いなかろうか?」


「はい! 私はオリビアです! ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません!」


「そんな畏まらんで良い。今はプライベートじゃ。」


「ところでオリビアはレベルいくつになった?」


「35よ。もうミノタウロスだってソロで余裕だから。」


オリビアはレベル20になったところで聖魔法を覚えた。

それからはアンデット系を狩らせている。

ターンアンデットで一発なので危険はない。

エルダーリッチですら一発なのでぐんぐんレベルが上がったのだ。

さらにMPが空っぽになるまで魔法を使い続けている。

魔力枯渇になる度にダンジョン外に飛ばされ、全回復して戻るを繰り返しMP最大値の底上げにもなった。


「そろそろ南に向かうか。ん? 神託か?」


オリビアがまた突然跪いて祈った。


「アトムよ。南の世界樹の元には悪魔が集結している。アークデーモン、エルダーリッチ、ギガンテス、そしてもう一体はデュラハンだ。」


「え? オリビア、どうした?」


「我はこの世界の創造神だ。上級悪魔の4体を倒し、邪神の復活を阻止するのだ。」


「え? 僕は勇者じゃありませんけど?」


「今、この世界に勇者は存在しない。お前だけが頼りなのだ。」


「わかりました!」


「南の世界樹には我の神力で結界を張っておる。上級悪魔であっても手を出すことは不可能であろう。多少の時間は稼げるので十分準備を整え向かうのだ。」


「はい。畏まりました。」


オリビアが崩れるように倒れた。


「オリビア、大丈夫か? カリン、オリビアを休ませてくれ。」


「四天王と呼ばれた上級悪魔4体が集結したということは魔王の復活の可能性もあるな。これは大変じゃ。各国に通達せねば! アトム君、後で城に来てくれ。」


王様は慌てて城へ戻った。


「アトム様、ご武運をお祈り申し上げます!」


「ああ、ソフィア。世界を救ってくるよ。何か勇者みたいだな。」


「そうですね。私も婚約者が物語の勇者様みたいで誇らしいです。でも、生きて帰ってきてくださいね。」


「もちろん、死ぬつもりはないさ。だが、もう少し準備が必要だな。」


「アトム君、でも楽しそうよ。」


「今までずっとモヤモヤしていたんだ。神からの使命が無いから目標が定まらなかったんだ。ソフィア、実は僕は転生者なんだよ。神からのお告げも無く放置されていたからずっと不安だった。やっと自分のやるべきことがはっきりしてほっとしたんだ。」


「やはりあなたは特別なお方だったのですね。発想が飛びぬけていたのでもしやとは思っておりました。これからも誠心誠意支えていきますね。」


「ありがとう、ソフィア。みんなも今まで黙っていて申し訳ない。これからもよろしく頼む。」


「アトムはお姉ちゃんの弟なのだから当たり前。」


「私はアトム様の専属メイドです。助けられたご恩を忘れません。」


突然転生者であることを告白してしまったが、皆受け入れてくれて良かった。


「この戦いが終わったら結婚しよう。あっ! 死亡フラグ・・・?」


「「ん?? 喜んで!」」


「それじゃ、ギガンテスとデュラハンを試し狩りと行こうか。」


マイダンジョンへ向かった。

復活したオリビアも一緒だ。

さらにオリビアをパーティに入れ、経験値配分をオリビアに50%の設定にした。


「オリビアは光魔法と聖魔法で支援を担当してくれ。そうしてくれると僕は攻撃に集中できる。」


「わかったわ。任せてちょうだい。」


*鑑定

 名称: ギガンテス

 ランク: A+

 特徴: オーガの上位特異種。一本角で一つ目の巨大青鬼。巨大な棍棒を持つ。

     魔王配下の四天王の1体とされている。

 特技: 威圧、咆哮、力溜め、渾身の一撃、統率、剛腕、身体硬化、大地割り

 ドロップ: 魔石、青鬼の大棍棒、生命の指輪、守護の指輪、剛力の腕輪



でかいな。見上げてしまうわ。

体長5mはあり、電柱よりも太い棍棒を担いでいる。

そして、一本角の青鬼は大きな一つ目でこちらを睨んだ。


「GAAAAAAAAA‼」


威圧のこもった咆哮をあげた。

ドシンドシンと大地を踏みしめながら向かってくる。

動きは遅いようだ。

オリビアから支援魔法が飛んでくる。

黄金に輝いたエミリンとカリンが走り出した。

カリンから連射される矢が放たれる。

狙いは大きな瞳だ。

だが、硬化した左手で矢を防ぐ。しかし、それは囮。

その左側の死角からエミリンが襲い掛かる。

左足の腱を狙って斬ったのだが、ギガンテスは瞬間的に腱周辺を硬化し弾かれてしまった。

そして、巨大な棍棒を振り回した。

2人とも一旦距離を置く。

すると動きを止めたギガンテスが光った。

何か来そうな予感がした。


「エミリン、カリン戻れ!」


2人が戻った瞬間にギガンテスが振りかぶった棍棒を力任せに振り下ろした。


「シェルター『シェルター』、シェルター『シェルター』、シェルター『シェルター』」


6重の壁を作り攻撃を耐える。

力溜め、渾身の一撃、剛腕、大地割りを重ね掛けしたギガンテスの最大奥義だ。

衝撃による轟音と揺れがおさまったので壁を除くとクレーターのような大穴と周囲に飛び散った残骸でめちゃくちゃになっていた。


「危なかったな。ん? 大技のあとは動けなくなるのか?」


ギガンテスが仁王立ちのまま動かない。


「ゴッドスパーク! エクスプロージョン!」


頭部を吹き飛ばされたギガンテスがそのまま背後に倒れ消えていった。

ドラゴンの右腕をも奪ったエクスプロージョンの破壊力は凄まじい。


生命の指輪: 最大HPを大幅に上げる指輪。HP+300

守護の指輪: 防御力を大幅に上げる指輪。DEF+300

剛力の腕輪: 力を大幅に上げる腕輪。STR+300


「ギガンテスが光って力溜めに入ったら退避。大技のあとは反動で動けなくなるようだから総攻撃で倒す。これが作戦だ。」


「「了解。」」


「それを踏まえてもう一度挑戦だ。」


攻撃タイミングに慣れるまで討伐は続いた。

その後、エルダーリッチやアークデーモンも参戦した場合の練習もした。



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