第49話 東の世界樹ダンジョン ①

「久しぶりのダンジョンね。ワクワクするわ。」


「未知のダンジョンなんだから慎重にな。特にエミリンは突っ込んで行かないように。」


「そんなに言わなくても分かっているわよ。子供じゃないんだから。」


「よし、行くぞ。」


世界樹の根元にある1m程の真っ暗な洞に近づくと吸い込まれた。


「エミリン、カリン! 大丈夫か? って、ひどい恰好だな。」


振り向くと大股開きでひっくり返ったエミリンとカリンがいた。

スカートじゃなくて良かった。


「なんとか大丈夫。」


「私も大丈夫です。」


「良かった、ケガはなさそうだね。」


「アトム、あれ見て! 綺麗なお花畑。」


エミリンが走り出そうとしたので首根っこを捕まえて止めた。


「何するのよ!」


「突っ込んで行くなって言ったばかりだよね? あの花は全て魔物だから。」


「え?」


こちらの気配を感じ取ったのか、急に花畑の花たちが動き出した。

あまりの数に気持ちが悪い。

そして、辺りにピンク色の霧が現れた。

なんか甘い匂いがする。


*鑑定

 名称: ダンシングフラワー

 ランク: C

 特徴: 近づくと動き出し踊る花型魔物。睡眠ガスと踊りで睡魔を誘う。

     眠った相手に寄生し、養分を吸い取る。

 特技: 睡眠ブレス、子守りダンス

 ドロップ: 魔石、眠りの花びら、快眠薬


俺たちには状態異常耐性があるから睡眠は効かない。


『睡眠薬、快眠薬、麻酔薬のレシピを獲得しました。眠りの花びらは、これらの薬の材料です。』


睡眠薬: 強制的に眠らせる薬。半日は眠り続ける。

     眠りの花びら(1)+魔力水(100ml)

快眠薬: ごく自然な睡眠だが、すっきり目覚めることができる。

     眠りの花びら(1)+初級回復ポーション(1)

麻酔薬: 神経を麻痺させ、痛みに鈍感になる薬。

     睡眠薬(2)+快眠薬(1)


「近くで見たら花に口があって気持ち悪いわね。しかもこの数でウネウネされると鳥肌が立つわ。アトム、焼いちゃって。」


「ラシャ! ファイアストーム!」


「ぎょええええええ」


えええ、声まで出すのかよ。

キモい。キモ過ぎる。

それにしても数が多い。

爆発寸前なのが頷ける。


「ファイアストーム、ファイアストーム。」


でも、動けないようだし、こいつらがダンジョンから出てくることはないか。

すると遠くに大きな魔力を感じた。


「アトム様、あれはきつそうですね。」


大きなバラの花の中央に顔があり、胴体はトゲトゲのツタが絡み合って構成された魔物だ。ボスかな?

そのツタが触手のように動かしている。

さらにツタを足のように使ってゆっくりとこちらに向かってきている。

そして、ハチ型の魔物を召喚した。


*鑑定

 名称: バトルローズクィーン(エリアボス)

 ランク: C+

 特徴: 薔薇の花の顔とツタで構成された魔物。

 特技: トゲの鞭、睡眠ブレス、眷属召喚、土魔法

 ドロップ: 魔石、バラの鞭、バラの香水、宝箱


*鑑定

 名称: キラーホーネット

 ランク: C

 特徴: 体長50cm程あるスズメバチ型の魔物。

 特技: 毒針、毒牙、噛みつく

 ドロップ: 魔石、毒針、毒液


*鑑定

 名称: キラーハニービー

 ランク: C

 特徴: 体長30cm程あるミツバチ型の魔物。

 特技: 毒針、威嚇

 ドロップ: 魔石、毒針、蜂蜜


「エミリン、カリン。薔薇のでかいやつをなるべく倒さずに牽制しつつ、ハチを狩ってくれ。特に小さめの黄色の方ね。甘い蜜をドロップするらしい。」


「それはいっぱい召喚させてたくさん狩るべき。」


「了解しました。」


100m先に俺の魔法とカリンの矢でクィーンを足止め、たまらずハチを召喚。

近づくハチたちはエミリンによって切り刻まれる。

そして、ドロップしたハチミツの入った黄色の小瓶を俺が拾い集める。

緑の毒液はいらん!

そして、MPが切れて召喚できなくなるまで絞り取った。


「玉切れのようだな。じゃあ、一気に行くよ。」


カリンの炎の矢が全身に突き刺さり燃え上がる。

エミリンが走り出し、襲ってくるトゲの鞭を剣で裁きながら上段から斬り落とし、真っ二つにした。

追い打ちに俺からの感謝の気持ち、「ファイアストーム」。

消し炭となり崩れていった。


ドロップした鞭はカリンが装備し、中距離用とした。

香水の方は香りが強すぎて、獣人の2人には無理ということで貴族に高く売りつけることにした。

宝箱に入っていたのはバラ柄のナイフ。

エミリンが可愛いと飛びついたのでエミリンの物になった。

しかし、鑑定してみると。


*鑑定

 名称: 毒薔薇のナイフ

 ランク: C

 特徴: 薔薇の花柄のナイフだが、切り付けると毒を付与する。

     令嬢の護身用ナイフ

 付与: 毒付与


「エミリン、そのナイフは毒が付与されてて危ないからちょっと貸して。」


錬金ボックスに入れて付与を上書きした。


*鑑定

 名称: 薔薇のナイフ

 ランク: C

 特徴: 薔薇の花柄の可愛いナイフ。食べ物を切ると甘味を付与する。

 付与: 甘味付与


「アトム、天才! これ最高!」


試しにレモンを切ってみたら甘くなったらしい。

こうなると薔薇の鞭も怪しい。


*鑑定

 名称: 薔薇の鞭

 ランク: C+

 特徴: 棘から毒が分泌される鞭。軽く持ちやすい。

 付与: 毒付与


やっぱり毒だ。

味方に間違って当たってしまったら大変だ。

こちらも上書きだ。


*鑑定

 名称: アメと鞭

 ランク: C+

 特徴: 鞭を振る度に音がなり、音楽を奏でる。

     応援歌となり、仲間のステータスをアップする。

 付与: 応援歌(全ステータス+10%)


アメとムチだが、アメのみの効果にしてみた。

もちろん武器としても使えるので、攻撃しながら味方のステータスを上げるという一石二鳥の武器となった。


「カリン、索敵。」


「敵の気配なし、殲滅完了。」


「次の階層はあるのかな? あっ、あるね、あそこに。入り口にあったものと同じ真っ暗な穴。」


そう言えば、入り口は無いな。

閉じ込められてたのか? 帰れないじゃないか。

先に進むしかないってことか。

仕方ない。次の階層に行こう。


「行くよ、カリン。」


「コラ! お姉ちゃんを置いてくな!」




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