第44話 新たなエルフの里誕生
サリー様たちを王都に送り届けた後、再度火の民の町へ戻った。
「町長さん、いかがでしょうか?」
「世界樹のことだろ? 問題無い。但し、まだ森の民と暮らすことを良しとしないものも正直いるので少し離れたところで暮らしてほしい。」
「了解しました。隊長さん、問題無い場所まで連れて行ってください。」
「じゃあ、着いてきてくれ。エルフの長も連れて行こう。」
トゥーリさんと3人で町を出た。
「世界樹って、里にあったあのバカでっかい木のことだろ? 町が日陰になっちまうから少し離れるぞ。」
「了解です。」
西に向かって100mほど歩くと何やら邪悪な魔力の流れを感じてきた。
トゥーリさんも気付いたみたいだ。
脳筋のホムラ隊長は全く感じていないようだが。
『魔素の流れを感じ取れるようになったのですね。成長しましたね。さらに100mほど歩いたところに魔素が渦を巻いて集まっている魔力スポットが存在します。ダンジョンの卵のようなものですね。魔素は世界樹の栄養になるので魔力スポットの中央に種を植えましょう。』
渚が褒めてくれた。単純に嬉しい。
「何をニヤニヤしているんだ? 気持ち悪いぞ。まあ、これだけ町から離れたら良いかな。この辺りでどうだ?」
うっさいぞ。脳みそ筋肉野郎が!
「もう少し先の方が良いかも。」
「アトム様。これ以上は近づかない方が良いのでは?」
「魔素は世界樹の栄養になりますから、こいつの一番濃いところに植えましょう。」
「何を言っているのだ? 説明を求む。」
脳筋ホムラは無視だ。
草原と森の堺に巨大な魔素の渦が発生していた。
「これは凄いですね。肌がピリピリします。」
「じゃあ、種を埋めますね。」
収納しておいた世界樹の種を取り出し、渦の中心に種を埋めた。
そして、俺の魔力を含んだ魔力水をたっぷりとかけた。
するとすぐに芽が出て、魔素を吸収しながら急速に成長を始めた。
あっという間に10mほどの若木となった。
「凄いですね。こんなに早く成長するとは思いませんでした。流石、使徒様ですね。」
すると若木が光り、精霊が現れた。
『我が名はユグドラシル。アトムよ、ご苦労であった。』
「ユグドラシル様、お久しぶりです。って、同じユグドラシル様ですか?」
『もちろんだ。地脈のネットワークを使って移動してきただけだ。この木も私の恩恵を受けたからすぐに大きく育つだろう。』
「トゥーリさん。この木を守ってくださいね。世界平和のためにもよろしくお願いします。」
「はっ! あまりにも驚いて意識が飛んでしまいました。お初にお目にかかります、ユグドラシル様。北の里の長をしておりましたトゥーリと申します。誠心誠意お守り致しますのでお任せください。」
『よろしく頼む』
「それでは私は町で待っている里の者を呼んできます!」
おいくつなのか分からないが、猛ダッシュで町に戻って行ったが大丈夫だろうか。
「お前たちは誰と話をしているのだ?」
エルフで無いと見えない設定なのか?
俺も一応ハーフエルフだしね。
説明が面倒なのでとぼけることにした。
そうだ。エルフ達が来る前に家を作ってあげよう。
「隊長さん。そこの森の木を少し切っても良いですか?」
「構わんぞ。特に所有権は無い。あまり切りすぎて森が無くなってしまうのは困るがな。」
森に入りエアカッターで程よく間引きする感じで木を切り倒し、錬金ボックスで乾燥させ木材に加工した。
それを使ってエルフ達の家を作り、世界樹から少し離れたところに家を並べた。
あまり近いと世界樹の成長とともに巻き込まれて崩壊しかねないからだ。
それを見たホムラが文句を言ってきた。
町の家よりも立派じゃないかと。
町の家も建て直してくれと。
だが、断る!!
するとトゥーリさんがエルフ一行を連れ戻ってきた。
「アトム様、ありがとうございます。私たちの家まで作っていただけるとは感激しております。」
「これが俺の仕事だから気にしないで大丈夫。他に必要な設備はありますか?」
「そうですね。礼拝堂があると有難いです。あとは水場ですかね。」
『水場は儂が作ってやるぞ。』
すると世界樹の根元から水が湧き出し、池が出来た。
全くもう! 範囲を説明してからやってほしい。
水没しそうになった家を慌てて移動しましたよ。
それから世界樹の隣に大きな礼拝堂を建てた。
建てた後でユグドラシル様に邪魔だと言われ移動する羽目になりましたが。
どうやら北のエルフは世界樹と豊穣の女神を崇めているそうだ。
前の里にあった礼拝堂に豊穣の女神像があったらしい。
「女神像を持ってこようか? 壊されてなければ良いのですが。」
「ありがとうございます。結構大きいので運べないと思いますので気持ちだけ有難く頂いておきます。」
「たぶん大丈夫だよ?」
さっき礼拝堂や家を収納し移動したことを説明し納得してもらった。
「では、お礼に里の先にある農園や果樹園の作物を好きなだけ持って行ってください。」
「それは有難い。遠慮なくもらっていきます。それじゃ、行ってきます。」
エミリンとカリンを拾って元エルフの里へ向かった。
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