第41話 祝賀会

今日は旅立ちの日だ。

だが、もう今は昼過ぎ。

昨晩、俺たちのための旅立ち祝賀会を開いてもらった。

王様夫婦とうちの両親、さらに今回は伯父さん夫婦も呼んであげた。

そのパーティがズルズル朝方まで続き、全員寝坊してしまったわけだ。

時を昨夜に戻す。




「今日は、僕たちのためにお集りいただきありがとうございます。」


父さんにいきなり挨拶しろと言われ、この状況である。


「まあ、固い挨拶は止めにしよう。おいしそうな料理が冷めてしまうじゃないか。アトム君達の旅にカンパーイ!」


王様が待ちきれなくなってしまったようだ。


「アトム君の料理はいつもうまいから、とても楽しみだ。」


「たくさん食べてください。では、いただきましょう。」


俺の祝賀会だというのに俺が料理を作ったのだ。

と言っても、渚が作ってくれたから俺は全く苦労していないのだが。


今日はビュッフェスタイルにしてみた。

山盛りの揚げ物と天ぷら、生姜焼きにハンバーグ、オムレツに焼きそばなど、今持っている材料で作製可能な料理を並べた。

もちろんカレーもある。


ちなみに王様に懇願してゴンザレスさんもこっそり参加している。

「師匠! 勉強させてもらいます」と大声で言われ、「ああ」としか返事できなかった。

未だに俺はあのテンションに着いていけてないんだ。

そして、こんなパーティ形式があるのか!と叫び勉強していた。


「アトム! 外からしか見たことなかったが無かったが、中もすごい家だな。俺の家よりもでかいし・・・。いつの間にかに俺より偉くなってるし。困ったな。」


先日の第2王妃の暗殺計画を阻止した功績でまた爵位が上がってしまった。

もう父さんと一緒に伯爵らしい。


「アトム様はまだまだ出世いたしますわ。そして、わたくしと結婚するのです。」


「アトムは王女様まで・・・。この際、うちの娘ももらってくれても良いのだぞ。」


「お父様!!」


「冗談だったのだが、顔が真っ赤じゃないか。満更でも無いようだぞ。はぁー。俺はどうしたら良いのだろうか。なあ、カイザー。」


「まあ、今日は飲みましょうよ、兄さん。アトムの作った酒は本当に旨いのですよ。」


この世界の酒と言えば生温いエールとワインのみ。

俺が作った渚さん作新たな酒はビールだ。

先日、市場で発見したホップと大麦を使った。


「くぅぅぅっ! 喉越しがたまらん。冷えててうまいな。」


王様と父さん、伯父さんがビールをジョッキで一気に飲み干した。


「この唐揚げがビールに合う!」


「いや、王様。ビールにはこっちのポテトフライがお勧めですよ。」


「いやいや、二人ともわかってないな。こいつにはこのクッキーが一番だ。」


「「それは無い」」


伯父さん、王様にため口になってるけど大丈夫か? 飲みすぎだぞ。


女子の皆さんは食事より会話に夢中だ。

特に伯母さんがみんなの肌艶や髪、ドレスに興味深々のようだ。

というわけで、デザートをドーンと出してあげた。


「ウッヒョー!」


エミリンが変な叫び声を上げた。

エミリンだけでなく、女性陣のテンションが上がった。

前世の知識で作ったデザートを味わうが良い。


夜が更けて行き、男どもは酔い潰れた。

女性たちは次々に風呂へ向かった。

俺は食べ散らかされた残り物や食器をメイドやゴンザレスさんと一緒に片付けた。

すると王妃様と伯母さんがお風呂から慌ただしく戻ってきた。


「アトム君! 私にもエミリンちゃんやカリンちゃんの下着と同じものを作ってちょうだい!」


「え? ああ、あれは精霊の反物と綿で作ったのですよ。あれもいろいろ付与されているからすごい高価ですよ?」


「お金を取る気なの?」


「伯母様、まさかもらえると思っていたのですか?」


「・・・。」


「フフフ、伯父さんに請求しておきます。」


まあ、冗談だが。

味をしめて何度も要求されたらたまらないからね。

あとは渚さんにお任せで。

俺に女性物の下着が作れるわけ無いし。



「王妃様と伯母様。そこに立ってください。採寸しますので。」


「ここで脱ぐの? さすがに恥ずかしいわ。」


「いやいや、脱がなくて良いですよ。そこに立っていてください。ついでに王女様たちもどうぞ。」


鑑定で採寸してと。

渚さん、よろしくね。


『ちょっと頑張っちゃいますが良いですか? ブラジャーも作れるようになったのです。』


好きにやってくれ。

俺には良く分からん。

風呂上がり用のアイスを出すとまた女子会が始まった。

一番テンションが上がっているのは初めて温泉に入った伯母さんだった。

今まで仲間外れにしちゃって申し訳ない気持ちになったが、うちの母さんの機嫌が悪くなるので仕方無かったのだ。

今は仲良くしているようなので良かった。

今後は頻繁に招待してあげようと思う。

娘のジャスミンの事も心配だろうし。

そんなことを考えているうちに出来上がったらしい。


テーブルの上に名前の書かれた紙袋が出現した。

さすが渚さんだ。下着なので外から見えないようにしてくれたらしい。

俺にもこの気遣いがあればもっともてるんだろうな。

しかし、父さんの血を引いているし。

ソファーで腹を出し寝ている父を見て溜め息をつく。


「王妃様、伯母様。出来上がりましたので問題が無いか試着してみてください。王女様たちもどうぞ。」


ニコニコしながら皆さん部屋へ帰っていった。

無言で手を出しているエミリンが立っていた。

渚さん、エミリンとカリンの分もお願いします。


「かわいいのね! ピンクね!」


愚姉は注文が多い。


「アトム君! これ凄いわ! 大きな声では言えないけど、しばらく逃走してしまっていたお胸様が復活したわ。久しぶりに谷間が現れたわ。」


良かったですね。

でも、気持ち良く寝ていた王様が叩き起こさないであげて。

王様、俺を恨まないでくださいね。

ついでに伯父さんも殴られて起こされていた。


「アトム君、見てくれ。ジャンプしても胸が痛くないんだ。」


「サリー様、はしたないですよ。目のやり場に困ってしまうのでしまってください。」


下着姿で飛び跳ねるサリー様を宥めた。

意外に素晴らしいものをお持ちなのですね。

一番驚いたのが母さんである。

母さんに谷間があるだと!


『パットです。さらに寄せて上げました。地球の技術は凄いですね。』


どうやってその知識を得たのだろうか。

聞くのが怖いので詮索しないでおこう。


母さんが父さんの腹に蹴りを入れて父さんを起こした。

そして、ドヤ顔だ。

これで母さんは当分ご機嫌だろう。


「服が合わなくなったから新しいの作って。」


また愚姉だ。面倒臭い。もう深夜だぞ。

だが、一度言い出したら聞かない姉なのだ。

そして、一人つくると次は私と続いてくる。

それで朝方まで俺が服を作り続け、ファッションショーが永遠続いたのだ。

叩き起こされた男衆も呑みなおしが始まった。

それで寝坊し、昼過ぎまで寝てしまったということなのだ。

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