第40話 カレーって最強
今日は料理教室初日だ。
リビングにカレンとマインが待機していたので軽く朝食を済ませ城に行く準備をした。
準備を終えリビングに戻るとソフィア様とジャスミンが増えていた。
「私は里帰りです。」
「私は新たな研究テーマを求めて同行します。アトム君の回りには新しい発見がたくさんあるから。」
「そうか。わかった。」
「お姉ちゃんは味見係をしてあげる。」
「私は専属メイドですから。」
いつの間にかにエミリンとカリンも居た。
まあ、2人はいつもの事だし、仕方ないか。
「二人とも邪魔しないように!」
「「は~い。」」
7人の大所帯となってしまったが、王城へ転移した。
門の前には既にゴンザレスさんが待っていた。
「おはようございます、ゴンザレスさん。」
「おはようございます、師匠! 昨日から楽しみで寝れませんでしたよ。」
ゴンザレスさんに背中を押されながら王城のキッチンへ移動した。
「では、今日は基本から行きますね。まずは主食から教えます。ゴンザレスさん、このパンを食べてみてください。そして、いつものパンとの違いを感じてください。」
いつも我が家の朝食で食べているクロワッサンとバターロールを出した。
ゴンザレスさんはパンを持った瞬間に目を見開いた。
そして、鼻から吸い込んでしまうのではないかという勢いで香りを確認した。
ちぎって一口。それからなぜか泣きながらパンを平らげた。
「大丈夫ですか?」
「私は今まで王になんて不味いパンをお出ししていたのでしょうか。師匠! どうしてこんなに柔らかく、香りの良い甘いパンが作れるのですか?」
「これからそれを教えます。」
「なんて私は幸運なんだ。ありがとう、神様。」
「それともう一つの主食となるご飯も食べてみてください。」
塩結びを手渡した。
「これは何ですか?」
「米という穀物を炊いたものです。ご飯と言って、それを握って塩をまぶしただけのものです。」
ゴンザレスさんは塩結びを噛みしめた。
「噛めば噛むほど甘くなる。初めて食しました。」
「ご飯は何のおかずにでも合います。今日はパンとご飯の作り方を教えます。」
「「はい!」」
「まずはパンから。材料の基本は一緒です。小麦粉と塩と水です。そこにバターや牛乳、砂糖や卵を加えることで味が変わります。柔らかくふっくらさせるにはイーストが必要です。後でイーストの作り方も教えます。」
「イーストとは何ですか?」
「イーストは、目に見えないほど小さい酵母菌という生き物です。その子が生地を膨らませてくれるのです。詳しいことは難しいのでそういうものだと理解しておいてください。」
「はい。後でゆっくり教えて下さい。」
ジャスミンが菌に興味を示した。。
次の研究テーマにしてもらっても良いかな。
「そのイーストによって発酵し、生地が膨らみます。2回寝かせるのを忘れないように。」
そして、バターロールと食パンの作り方を教えた。
王城のキッチンは石窯でパンを焼いていて、さすがに火加減とか分からないので慣れているゴンザレスさんに任せた。
次に米を炊いた。
「米を炊くには水加減と火加減が重要だからね。」
鍋で米を炊くのは難しい。
おばあちゃんに教わった始めチョロチョロ、中パッパを思い出した。
「ふっくら炊き上がりましたね。折角ですので食べてみますか。でも、主食だけでおかずがありませんね。今日は料理教室初日なので私の至高の一品をご馳走しましょう。」
「生姜焼き? ハンバーグ?」
「エミリン、違うよ。やっと材料が揃ってね。出来たんだよ! カレーが。」
「カレー? 絶対にうまいやつだ。やっぱり来て良かった。早く出して。」
「まあ、慌てないで。皆さん、ご飯を皿によそって待っていてください。」
そのご飯の上にカレーをかけて行く。
「「「グゥググ~」」」
皆の腹の虫が鳴った。
「見た目はあれだが、なんともそそられる香ばしい香りだ。」
「アトム。食べて良いよね? 良いよね?」
「どうぞ。うますぎると思うので落ち着いて食べてくださいね。」
「う、うまい!!!」
「口に運ぶスプーンが止まらない!」
「そして、オークカツをトッピングすることでさらなる高みへ!」
「うおおおお! サクサクの衣とジューシーな肉が相まってカレーがさらに極上な味に。ああ、生きてて良かった。」
確かに王を暗殺しようとしていたわけだし、打ち首だってありえたよね。
ゴンザレスさん、泣きながらカレーを食うのは止めようね。
「アトムが至高の一品というだけあるわね。スプーンが止まらないわ。」
「今回はオーク肉を使ったが、牛だろうが鳥だろうが何の肉を入れてもうまいんだ。さらに海産物でもうまい。」
「無限の可能性があるということですね。」
「そうだね。香辛料を変えることで香りや味も変わるんだ。そうだ、ジャスミンにカレー粉の調合をお願いしようかな。調合は薬剤と同じようなものだから任せるよ。」
「わかりました。任せて下さい。それと先程のイーストや菌のことも詳しく聞かせてください。」
「了解だ。」
「うおおおお! カレーはパンにも合うじゃないか。」
ゴンザレスさんがさっき作った食パンにカレーを付けて食べていた。
さすが料理人だ。味への探求心が凄い。
それからカレーが無くなるまで皆も皿にパンを擦りつけていた。
洗わなくて良いのではないかというくらいに皿が綺麗になっていた。
「パンにもカレー専用のナンというものがあるんだ。それにカレーを挟んで油であげたカレーパンもある。さらに野菜炒めや魚や肉にカレー粉をまぶして焼いても旨いんだぞ。」
「カレーには無限の可能性が・・・。師匠! 是非ともカレーの作り方を教えてください。」
「今日は時間だから今度ね。」
するとキッチンの扉の方から「グゥー」という輪唱が聞こえた。
カレーの臭いって広がるよね。
近所でカレーの家があるとすぐわかるくらいだし。
だが、申し訳ない。すべて平らげてしまった後だ。
気付かない振りをして本日の授業を終了した。
翌日は生姜焼きと野菜炒め、回鍋肉。
3日目は揚げ物、味噌汁、漬物。
4日目は煮物、蒸し料理。
5日目はシチュー、カレー。
6日目はデザート。
「僕たちは明日から世界樹とエルフの里を救済する旅に出ます。本日で料理教室は終了になります。それで3人には卒業の証に私からペンダントを贈ります。」
*鑑定
名称: アトム料理教室修了の証
ランク: S
特徴: ドラゴンの前にフォークとナイフがクロスしたデザインのペンダント。
亜空間(各2mの立方体)に収納可能。時間経過無し。重量不感。
素材の鮮度、食用の可否を判定できる簡易鑑定。
殺菌効果のあるクリーンが使える。
アトム料理教室卒業生専用。アトム作。
付与: アイテムボックス、簡易鑑定、クリーン
「師匠! ありがとうございました。師匠に教えて頂いた料理法を基礎に新たな料理の研究に励みます。」
「そうしてくれるとうれしいよ。帰ってきたらゴンザレスさんが発明した料理を食べさせてください。あと、料理に使った調味料を差し上げますね。無くなったら自分で作ってみてください。ちなみにそのペンダントには時間経過無しのアイテムボックスが付与されているから食材や調味料を保管しておくと良いよ。簡易鑑定もつけておいたから詳細を確認してね。」
「なんと! 国宝級のお宝を私のようなものが頂いてもよろしいのでしょうか?」
「僕が作ったものだから気にしないで。有意義に使ってほしい。」
「ありがとうございます、師匠!」
「カレンとマインは両親と従業員の食事をよろしくね。あと3姉妹の王女もよろしく。」
「「畏まりました、ご主人様。」」
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