第36話 ユグドラシル
「皆様、お洋服を交換いたしましょう。その前にお風呂にどうぞ。」
「お屋敷にはお風呂があるのですか?」
「あるよ。しかも、温泉だ。いつでも入れる状態になっているから、これからは毎日入るように。これは義務だかね。」
「気持ち良いし、お肌がスベスベになるのよ。」
念話でカリンとマリーを呼び出した。
「カリン、新しいメイドたちだ。風呂に入れてメイド服を支給してくれ。ここにいるカリンが君たちの上司になる。そして、僕の婚約者だ。良く言うことを聞くように。それと最終的にはアリサがメイドをまとめるようになってもらいたいからそのつもりでいてくれ。」
「畏まりました。ご主人様。」
「俺は実家に戻って両親とエミリンに報告してくるよ。あとはよろしく頼むよ、カリン。それにマリーもよろしくな。」
「サラ様にもご挨拶させたいと思いますので、サラ様にもお伝えください。」
「わかった。」
俺は、ハリス領の実家に転移した。
「父さん。元公爵家メイドの3人の態度が目に余ったので解雇しました。」
「そうか。お前の家なのだから好きにして構わん。」
「はい。それで購入した奴隷商に返却したら代わりに7人の奴隷をいただきました。」
「随分多いな。あまり商人をいじめるなよ。」
いやいや、誤解だから。
「1人以外は欠損奴隷でしたので無理に奪ったわけではありませんよ。それに父さんは奴隷制度が嫌いなのにすいません。」
「アトムは奴隷を差別したりしないだろ? それどころか救ってあげているじゃないか。俺は奴隷に人権を認めていない制度を良く思っていないだけだから気にするな。」
「それを聞いて安心しました。それでは母さんにも伝えてきます。」
テラスで母さん2人とエルフのミントがテーブルを囲んでお茶をしていた。
「母さん、ただいま。」
「あら、アトムちゃん。珍しいわね。丁度良かったわ。お菓子が無くなってしまったのよ。甘くておいしいのをお願い。」
「その前にミントさんの奴隷紋を消してしまいますね。」
「解放してくれるのかい?」
「はい。僕も父も奴隷制度がきらいなので。それにミントさんは逃げたりしないですよね?」
「もちろんだ。助けてもらった恩は返すぞ。」
「母さんの相手をしてあげてください。では、新作のパイの試食をお願いします。」
餡子やカスタードクリームをパイ生地で包んだものだ。
乳牛から新鮮な牛乳を得ることができるようになり、バターが作れるようになった。
バター風味のサクサクの生地と甘い餡が絶妙なバランスでたまらなく旨い。
「これはおいしいわ。サクサクの新食感よ。」
「アトム。私にも頂戴。」
エミリンが現れた。
甘いものを察知するエミリンの勘は凄まじい。
エミリンが幸せそうな顔でパイをハムハムしている。
庭をみると数週間しか経っていないのに庭師エイジが作った菜園が青々としていた。
ん? 庭の真ん中に違和感のある木が。
俺と変わらないくらいの高さの木だ。
以前には無かったはずだが。
「あの木は何ですか?」
「あれは私が植えた木だ。私の母はエルフの里の村長でな。木の種を引き継いでいたんだ。定住先が見つかったら植える予定だったのだが、その前に捕まって奴隷に落とされてしまった。そして、大怪我をして捨てられたわけだ。あの木はな、エルフの守り神
「ここにはエルフの母さんもおりますし、他種族を受け入れる父さんがいるので問題無いでしょう。」
「最終的にアトム殿があの木を引き継いでくれるとうれしいのだが。」
「僕は純粋なエルフではありませんよ?」
「問題無い。世界樹があなたを受け入れている。まだ若木だが、すでに意志を持っているようだ。」
意志? 良く分からないがエイジに新しい種を渡すついでに木も見てこよう。
「そうだ。王都の家で雇った元公爵家のメイド3人の態度が悪かったので解雇しました。代わりに7人のメイドを連れて来たのでサラ母さんに伝えてくれとカリンに言われてきました。危うく目的を忘れるところでしたよ。」
「夕方3人でお風呂に行くときに挨拶するとカリンに伝えてください。」
「わかった。あと、状態異常耐性のアクセサリーを忘れないでくださいね。新入りメイドの中にサキュバスの子がいるので。ミントさんもこの指輪をしておいてください。状態異常耐性の指輪です。」
「ほう、サキュバスか。珍しいな。魅了対策というわけだな。で、この指輪の性能は凄まじいな。こんなに付与の着いてるアクセサリーを初めてみたよ。」
「アトムちゃんが作ったのよ。凄いでしょ。」
「それではエイジに新しい種を渡してくるので失礼しますね。」
エイジのいる庭へ向かい新しい種を渡した。
今回は芋類も追加で渡した。
「中央にある木は、1日であの大きさに成長しました。それから野菜の成長スピードが加速し、来週には収穫できそうです。」
「野菜の成長にも影響しているのか。」
そして、俺はその木に引き寄せられるように近づいた。
『よく来たな、アトム。私は世界樹に宿る精霊ユグドラシルだ。世界各地のエルフの里は、野盗に襲われエルフが散り散りになり、世界樹を守るものがおらず、世界樹が絶滅の危機にある。世界樹を絶対に絶やすな。絶やした時、世界が終わる。世界樹の保護を頼む。その代わり、お前に我の祝福を与えよう。』
『ユグドラシルの祝福を獲得しました。』
ユグドラシルの祝福: HP/MPの回復量アップ、自然治癒力アップ
なんか使命的なものをもらった気がする。
今まで思い付いたものをとりあえずやってきただけの人生だったが目的ができた。
「ユグドラシル様、了解しました。他の土地の世界樹を探してみます。」
『もし、世界樹の無いエルフの里を見つけた時には種を渡してくれ。』
突然世界樹に白い一輪の花が咲き、実ができ、種となって俺の掌に落ちてきた。
「確かにお預かりしました。」
テラスに戻りスーザン母さんとミントさんへユグドラシル様との会話を説明し、世界樹の世話をお願いした。
「エミリン、旅に出るぞ。世界樹を救う旅になる。」
「わかったわ。最近動いてないから身体がなまっているし丁度良い。」
「また朝練さぼったな?」
「え?! さぼってない・・・。と思う。」
「おやつはしばらく無しかな。」
「そんな・・・。」
尻尾も耳も下がってエミリン反省中。
「母さん、今晩は久しぶりに焼肉パーティをしようと思ってます。ぜひ、来てくださいね。」
「もちろん、行くわよ。」
父さんにもお願いしておこう。
「父さんにお願いがあります。」
「改まってなんだ?」
「その前に庭に世界樹があることを気付いてますか?」
「世界樹? 世界樹って、あの世界樹か?」
「おそらく、その世界樹です。その世界樹を求めてこれからエルフがこの町に集まってくると思います。父さんにはそのエルフの保護をお願いしたい。先程、お告げがありまして、世界樹が絶滅すると世界が滅ぶそうです。庭にある世界樹を絶対に守って下さいね。それとエルフの里や世界樹の情報を集めてください。僕は1週間後に世界樹を救うため旅に出る予定です。」
「良くわからんが、とりあえず分かった。世界樹とエルフの保護、情報収集だな。ギルドへも協力を依頼しておくよ。」
「はい。では、よろしくお願いします。」
それから、ハリス領の領都はユグドラシルに改名した。
もちろん、ユグドラシル様に了承を得ている。
これは、さまよっているエルフ達に世界樹がこの町にあるということをアピールするためだ。
*ステータス
名前: アトム・ハリス
称号: ハリス伯爵家長男、ハーフエルフ、Cランク冒険者
職業: 大錬金術師
性別: 男
年齢: 15歳
レベル: 35
HP: 500
MP: 930
STR: 200
INT: 900
DEF: 220
AGI: 250
DEX: 700
Luck: 100
スキル
錬成、錬金ボックス、神眼、分解、合成改、抽出、付与、解析改、
リスト、複製、魔力操作、亜空間工房、調理、裁縫
魔法スキル
生活魔法:ファイア、ウォーター、ウィンド、ライト、クリーン、
デオドラント、フレグランス
全初級属性魔法:火▽、水▽、風▽、土▽、氷▽、雷▽、光▽、闇▽
全中級属性魔法:火▽、水▽、風▽、土▽、氷▽、雷▽、光▽、闇▽
光魔法▽-
闇魔法▽-
全上級属性魔法:火▽、水▽、風▽、土▽、氷▽、雷▽、光▽、闇▽
空間魔法:スペース、テレポート、ゲート、ダンジョンウォーク、
セレクトバリア
時魔法:ヘイスト、スロー、タイマー
重力魔法:グラビデ、ライト
契約魔法:奴隷契約、眷属契約、
聖魔法:
精霊魔法:火精霊魔法、水精霊魔法、風精霊魔法、土精霊魔法、
光精霊魔法、闇精霊魔法
ユニークスキル
異世界言語、全魔法適性、
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