第35話 メイドにイラっとしました
それから1週間が過ぎた。
王女達は落ち着いたのだが、メイドたちがギクシャクしているのが気になった。
原因は、元公爵家のメイド3人だった。
このままでは良くないので3人を呼び出した。
不貞腐れた態度で部屋に入ってきたのでカチンときてしまった。
「なぜ、君たち3人を呼び出したかわかるか? 王女様に対する態度とカリンやチーズに対する態度が違いすぎるだろう。俺は最初に君ら3人が中心となって支えてくれと言ったはずだ。カリンの仕事を手伝うとか新米メイドに礼儀作法を教えるとかあるんじゃないのか? 」
「でも、私たちは忙しいし。」
「今の態度もおかしいだろ。俺は主人だぞ! 公爵様のメイドだったことが偉いのか? お前たちは奴隷だということを忘れていないか? この家のメイドがお前たちでなければならない理由などないんだ。ここまで言っても反省がないようだな。仕方ない、返品するしかないか。」
「ご主人様! お待ちください! 返品だけはお許し下さい。」
「もう遅い。俺は反省したらそれで良いと思っていた。しかし、3人とも主人に向かって不貞腐れた態度を取った。お前たちの代わりはいくらでもいるんだ。明日、奴隷商に行くから支度をしなさい。」
念話でカリンを呼び出し、チーズとマリーを連れてきてもらった。
「3人をクビにした。明日、奴隷商に返してくる。大変だろうが代わりがみつかるまで3人で手分けして仕事をこなしてくれ。」
「はい、畏まりました。」
「それとチーズとマリー。ちょっとこっちに来てくれ。今から奴隷から解放する。」
「えっ? 私たちも捨てられちゃうのですか?」
「違うわよ。アトム様はあなたたちを奴隷ではなく、従業員として雇うと言っているの。お給金も出るということよ。」
「良いのですか?」
「ああ、もちろんだ。君たちが望むのであれば養子にしても良いぞ。」
「マリーのパパになってくれるの?」
「ああ、そうだ。じゃあ、解除するぞ。」
分かりやすいように奴隷契約解除の魔法を唱え開放した。
「奴隷紋が消えました!」
「これからもよろしく頼むぞ。」
「「はい!」」
最初は貴族を家にお迎えすることを考え経験者が必要だと思ったが、現在王家の隠れ家的な位置付けなので客を迎えることも無いだろう。
王家3姉妹は、うちの女性陣と分け隔てなく対等に接してくれるので問題ない。
王様や王妃様が来た場合は、サラ母さんやカリンに任せれば良い。
したがって、家を維持するための人員さえいれば良い。
同期の2人が開放されたのをみて後悔と悔しさで3人は泣き崩れた
翌日、泣いて許しを請う3人を無視し、奴隷商に向かった。
「お待ちしておりました、アトム・ハリス様。しつけが出来ておらず、この度は大変ご迷惑をおかけしました。今後、このようなことが無いよう心がけます。」
店主は俺に深く頭を下げた後、3人を睨んだ。
「お前たちは、アトム様を紹介した王様の顔に泥を塗った。それに店に恥をかかせ、迷惑をかけた。ペナルティは覚悟しておくように。」
3人は店主の言葉に絶望し項垂れた。
『性奴隷か鉱山送りでしょうね。最悪、打ち首だってありえますね。』
『助けた方が良いかな?』
『あの態度は私もイラっとしましたから自業自得でしょう。』
そんなことを考えているとまだ俺が怒っていると思ったらしく店主が焦りながら。
「代わりの奴隷で許して頂けるのであれば店内のどの奴隷でも構いません。気に入った奴隷がおりましたらおっしゃってください。また、前回来店頂いた時より王都中の身体的に欠損等の問題のある奴隷たちを集めております。そちらは無償で提供させていただきます。」
「そうだな。今までとても苦労した子が居たらもらおうかな。」
「それでしたら幼いころに村が盗賊に襲われ、連れ去られて奴隷として売られた子がおります。その後、買われた主人の虐待を受けておりました。そのため、怒られないために仕事は完璧にこなす癖がつき、立派な従者となりました。当店No.1です。売る予定は無かったのですが、アトム様になら託せます。彼女を幸せにしてあげてください。」
あれ? なんかその子を買うことが決定事項になっている感じ?
「先程、お茶を持ってきた子なのですが、いかがですか?」
ああ、さっきの美人さんか。
ちょっと谷間に吸い込まれそうになっちゃったあの子か。
全く問題ないんじゃないの。
「アリサ、ちょっとこちらに来なさい。接客も完ぺきにこなします。メイドとしても優秀だと思います。いかがですか?」
「問題ないですね。」
無償提供された欠損奴隷は、多種族で多様な問題を抱えた子供たちだった。
女の子ばかり6人だ。
「これでお許しいただければ幸いです。」
「十分ですよ。返品した3人の処分の方はお任せします。」
リカバリで問題部位を完全治療し、テレポートで我が家に帰った。
直接家の中に帰ってしまうとまだ登録していない新人たちが弾かれてしまうので門の前に転移した。
呆然として我が家を見つめる新人7人。
「あの。ご主人様はお貴族様ですか?」
「一応ね。でも、驚くのはまだ早いぞ。それから、ここから先は登録しないと入れない仕様になっているから一人ずつ名前を教えてくれるかな?」
「アリサと申します。接客から家事まで何でも頑張ります。夜伽の方は経験がございませんので不慣れですが頑張ります。よろしくお願いします。」
「ああ、頑張ってくれ。」
『ところで夜伽って何?』
『性的な処理のことですよ。』
『はぁ? そんなことエミリンにバレたら大変じゃないか。気を付けないと。』
アリサ 18歳 ヒューマン 指揮者
マリン 16歳 犬獣人 剣士
セーラ 15歳 鳥人族 風魔導士
カレン 15歳 猪獣人 料理人
メリッサ 14歳 ドワーフ 鍛冶師
ラブ 13歳 サキュバス 悪魔
テレサ 99歳 吸血鬼 ナイトウォーカー
また1人、見た目だけ少女がいた。ロリババアってやつだね。
6人目、7人目の種族は見なかったことにしたい。
絶対厄介事に巻き込まれるだろう。
「一応、聞いても良いかな? テレサさんは血を吸うのかい?」
「いいえ。おじいちゃんが吸血鬼なだけで私は吸血鬼モドキです。牙もないので血は吸えませんし、日に当たっても死にません。ほぼヒューマンですよ。食事は、野菜も肉も食べます。強いて言うなら不老はこの見た目なので確かだと思いますが、不死なのかは不明です。ただ、身体の半分以上を失っても辛うじて生きていたので不死なのかもしれないですね。」
見た目、色白の美人さんなので吸血鬼は気にしないことにした。
サキュバスは触れるのが怖いので止めておいた。
『
シャドー: 影に潜み、影から影へ移動する。
エナジードレイン: HPを奪い、自分のものにする。
吸血鬼のテレサから新たな魔法を獲得したようだ。
門を潜り、玄関に向かう途中でチーズに会った。
「チーズ。ちょっと来てくれ。新たにここで働くことになった7人だ。よろしく頼む。」
「はい。畏まりました。アリサさん、また会えてうれしいです。お店ではありがとうございました。」
手足を失っていたチーズは、アリサに大変世話になっていたそうだ。
「チーズさんもご主人様に治して頂いたのね。本当に良かったわ。」
「チーズは良く働いてくれているから奴隷から解放したんだ。君たちも働き次第で解放するぞ。」
「アトム君。お茶請けが欲しいの。」
珍しくサンドラ様が研究所から出てきた。
「仕方ないですね。チーズ、ジャスミンも誘ってティータイムの準備をしてあげて。チーズの分もあるから3人で食べるといいぞ。」
チーズにショートケーキを3つ渡した。
「私もよろしいのですか?」
「もちろんだ。2人の面倒を頼む。」
チーズとサンドラ様がルンルンでジャスミンの研究室に入っていった。
「あの、今の方はもしかしてサンドラ王女様では?」
「アリサは、引きこもりのサンドラ王女様のことを知っているのか? 珍しいね。」
「えええ! やっぱりですか! なぜここにおられるのですか?」
「王城が居心地悪いっていうからここに研究所を建てて上げたんだ。それでチーズには研究所2つを任せている。ちなみに隣の研究所のジャスミンは僕の従妹ね。薬師で薬の研究をしているんだ。それと驚くのはサンドラ様だけじゃないぞ。」
「もしかして、ご主人様は大変偉いお方なのでしょうか?」
「いや? 父さんが伯爵。俺は、つい最近爵位をもらって男爵になったんだ。」
「ウフフ。アトム様はすぐに伯爵、いや侯爵に出世しますわ。さらに私と結婚して公爵になるのです。」
「ええ! ソフィア様まで!」
「初めまして、皆さま。第3王女のソフィアです。そして、アトム様の婚約者候補ですわ。今はこの家の経理を任されておりますの。」
「ちなみに夕方になると第1王女サリー様を帰ってくるよ。それにほぼ毎日のように王様と王妃様が遊びに来る。というわけで、君たちの仕事はこの屋敷の掃除、王家の方々のお世話だ。失礼のないように頼むよ。」
「プレッシャーが凄いです。」
アリサ以外の6人は、王族を目の当たりにし緊張のあまり放心してしまっている。
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