第24話 ラスボス
9階層の戦闘で疲れた俺たちは一旦帰宅することにした。
おそらく今日だけで1000体以上のゴブリンを葬ったと思う。
「お帰り、アトム。町が大騒ぎになっているよ。」
「そうなのですか? なぜに?」
「オイオイ。お前たちが新たな階層を発見したからじゃないか。なんでそんなに他人事なんだよ。」
「へー。そうなんですね。でも、かなり高ランクの冒険者でなければ下層は危険だと思いますよ。」
「そのことなんだが、ギルマスが詳しいことを聞きたいそうだ。ギルドもダンジョンのランクを決めて管理しなければならないからな。」
「じゃあ、この後すぐにまたダンジョンに戻る気にはなれないのでギルドに行ってきます。2人はどうする?」
「寝る。」
「私はお供します。」
もちろん、寝ると言ったのはエミリンの方だ。
「ナンシーさん、こんにちは。」
「あら、アトム君。待っていたわよ。ギルマスがずっとソワソワしているから先に話てあげて。」
すぐにギルマスの部屋に案内された。
「よく来たね、アトム君。早速だが、新階層の話を聞かせてもらえるか。」
「今のところ、10階層まであることを確認しました。10階層には明らかにボス部屋だと思われる扉がありました。明日、その奥を攻略する予定です。」
その後、6階層から9階層までの詳細を説明した。
「そうか。新エリアは中級以上の冒険者じゃないと危険だな。6階層より下層はCランク以上に設定しよう。魔物の情報もありがとう。これで対策もできるし、無駄死にするやつも減るだろう。そして、君たちはCランクに昇格だ。」
Cランクに設定したのにDランクの俺達が攻略していてはギルドとしては問題なのだろう。
「貢献度からしたらBランクに上げたいところだが、Bランクには3人以上のAランク冒険者からの推薦か、ギルマス2人以上の推薦が必要なのだ。だから、俺だけの推薦では足りなくてな。すまんが、今回はCランクで勘弁してくれ。」
「了解しました。それでは10階層を攻略しましたらまた報告にきます。」
ナンシーさんにギルドカードの更新をしてもらった。
Dランクまでは白いプラスチックのようなカードだったのだが、Cランクカードはピカピカの銅板だった。
厚みも10円玉程あり、重みも感じる。
カッコイイ!
ちなみにBランクは銀、Aランクは金になるそうだ。
帰宅しエミリンに見せるとズルいと言ってギルドへ走っていった。
翌朝早くから10階層へ向かった。
「準備は良いかい? 体調はどうだ?」
「完璧!」
「準備OKです。」
「それじゃ、行くぞ。」
気を引き締め直し、大きな扉に力を込め押し開く。
ゆっくりと扉が開くと真っ暗な空間が広がっていた。
一歩中に踏み込むと扉の左右にあった壁の松明に火が着き、順に奥へ向かって火が着いていった。
どうやら円形のドーム型になっているようだ。
中央の床に巨大な魔法陣が現れ、黒い煙が渦を巻き収束してきた。
数秒後、黒い煙の塊から巨大なオークが姿を現した。
「ブォォォォォ!!」
*鑑定
名称: オークジェネラルEX
ランク: B+
特徴: オークジェネラルの強化種。巨大な斧を操る。
斧技:
前兆の気合溜めを行ったら防御に徹すること。
特技: 斧術、剛腕、身体強化、統率、咆哮(威圧)、再生
ドロップ: 魔石、革、特上オーク肉、バトルアックス、睾丸、金の宝箱
威圧混じりの咆哮で委縮しそうになったが必死に耐えた。
流石Bランクの魔物だ。威圧の密度が厚く重い。
「エミリン、カリン。大丈夫か?」
「「もちろん!」」
2人とも威圧に委縮するどころか戦闘本能に火が着いたらしい。
目つきが一変して仲間の俺でも怖いのだが。
「一発目は全力で行くから注意してくれ。」
「一発で倒しちゃったら怒るからね。」
「逆に一発で済んでくれたら有難いが、無理だろうな。んじゃ、行くぞ。」
魔力を集中し練り上げる。
ジェネラルは、やれるもんならやってみあがれ的にニヤつきながら余裕をかましてみている。
「ゴッドスパーク!『ゴッドスパーク』」
神の雷2連発が炸裂した。
ジェネラルは予想外だったらしく、モロに食らってしまった。
黒焦げになったジェネラルだが、斧を杖にして立っていた。
「ダメか。」
「じゃあ、行くわよ。」
エミリンが走った。
「ミサイルショット!」
カリンから放たれた矢は巨大化し、ミサイルのようになってジェネラルに突き刺さる。
それでも倒れない。
「ブォォォォォ!!」
再び咆哮。そして、キズが回復し始めた。
『再生魔法リジェネを獲得しました。光魔法に取り込みます。』
ジェネラルが両手で斧を持ち構え集中した。
すると周囲の空気が変わった。
「エミリン!! すぐに戻れ!」
恐らく、気合溜めだ。
大技の大地割りが来る。
「えっ?!」
間に合わない!
俺はテレポートでエミリンの元に瞬間移動し、エミリンを抱えて再びカリンのところへ戻った。
戻った瞬間に渚が
防御壁が形成されたと同時に地鳴りと共に地震が起きた。
地震がおさまったところでシェルターを解除すると床が滅茶苦茶になっていた。
「やり過ぎだろ。」
「危なかった。」
「みんな無事で良かったです。」
そして、目の前にはキズ一つ無い完全体に復活したジェネラルが立っていた。
よく耐えたなと感心しているようだ。
そして、俺たちを強敵と認めたようだ。
「エミリン。奴の間合いに入るのは危険だ。大地割り以外は力業の近接だから近づかなければ攻撃されない。しかも、足場が悪いし、不利だ。2人とも俺から離れないようにしてくれ。」
斧を構え、かかってこいと言っているようだ。
だが、まだ未熟な俺達にはこの敵は荷が重すぎる。
キズを追わせても再生してしまうし、正攻法では勝てる気がしない。
納得したエミリンは武器を槍に変えた。
「食らえ!」
エミリンが放った槍は徐々に加速し、炎を纏いジェネラルに迫る。
カリンが再び放った巨大な矢も迫る。
「ゴッドスパーク! 『ゴッドスパーク』」
3人の攻撃ともに素早く避けられてしまった。
次のこれはどうだ!
「
上空からの見えない風圧に押さえつけられ、ジェネラルが膝を着いた。
「
シェルターを解除するとボス部屋全体が凍り付いていた。
もちろん、ジェネラルもカチコチに凍っている。
エミリンがゆっくりとジェネラルに向かい、斧に持ち替える。
「
バトルマスターのエミリンはジェネラルの斧技を見てマスターしたようだ。
斧技最強奥義によりジェネラルは砕け散った。
「エミリン! 大技を使うときはひとこと言ってからにしてくれ。危ないだろ!」
咄嗟にカリンを抱えて飛び上がり上空に逃げなかったら危なかった。
「アトムだって封印したはずの上級魔法を連発したし!」
「それは仕方無いじゃないか。使わなかったら危なかったし。」
「私も一緒でしょ。」
「まあまあ。みんな無事だったんだから良かったじゃないですか。」
「「そうだね。」」
「下層のカギは無いようだし、これで終りかな。アイテム拾って帰ろう。」
えっと。触りたくない2つのボールが転がっているのだが。
*鑑定
名称: オークジェネラルの睾丸
ランク: A
特徴: 精力剤の材料。男女で服用しいたすと確実に男子を身ごもる。
跡取りが必須の貴族の間では高額で取引されている。
時には取り合いとなり闘争に発展することもある。
見なかったことにしよう。
そっと収納し封印した。
それよりも特上オーク肉だ。
上オーク肉でもあれだけうまかったのだ。
特上がどれほどのものなのか想像するだけで涎が出てくる。
そして、確定の金箱には聖剣が入っていた。
*鑑定
名称: 聖剣エクスカリバー
ランク: SS
特徴: 聖の力を宿した伝説の聖剣。闇を斬り、浄化する。
勇者が魔王に挑んだときに装備していた剣であると伝わる。
装備者の勇気、闘気により攻撃力が際限なく上昇する。
必殺技:
付与: 聖魔法、再生、魔素吸収、浄化
うーん。また厄介なものを拾ってしまったな。
エミリンは可愛くないからいらないっていうし、困ったな。
これは棚上げして収納、封印で。
『聖魔法を獲得しました。』
*ステータス
名前: アトム・ハリス
称号: ハリス伯爵家長男、ハーフエルフ、Cランク冒険者
職業: 大錬金術師
性別: 男
年齢: 15歳
レベル: 30→35
HP: 460→500
MP: 880→930
STR: 150→200
INT: 820→900
DEF: 180→220
AGI: 210→250
DEX: 630→700
Luck: 100
スキル
錬成、錬金ボックス、神眼、分解、合成改、抽出、付与、解析改、
リスト、複製、魔力操作、亜空間工房、調理、裁縫
魔法スキル
生活魔法:ファイア、ウォーター、ウィンド、ライト、クリーン
全初級属性魔法:火▽、水▽、風▽、土▽、氷▽、雷▽、光▽、闇▽
全中級属性魔法:火▽、水▽、風▽、土▽、氷▽、雷▽、光▽、闇▽
光魔法▽-
闇魔法▽-
全上級属性魔法:火▽、水▽、風▽、土▽、氷▽、雷▽、光▽、闇▽
空間魔法:スペース、テレポート、ゲート、ダンジョンウォーク
時魔法:ヘイスト、スロー、タイマー
重力魔法:グラビデ、ライト
契約魔法:奴隷契約、眷属契約、
聖魔法:
ユニークスキル
異世界言語、全魔法適性、
『アトム、エミリン、カリン。ダンジョン完全攻略おめでとう。まさか意地悪して難易度を上げたのに、攻略できるとは思わなかったよ。さすが、選ばれし者だね。あっ、自己紹介が遅れたね。僕はこのダンジョンの管理者のダンジョンマスターさ。』
「えっと、いろいろと引っかかるところがあるんだが、今回は通常では無かったということかな?」
『そうだよ。初回だったし、いろいろ試したかったからね。君たちの戦闘力もあがっただろ? 僕からの試練、いやプレゼントだと思ってくれ。ちなみに9階層のボスは通常だとゴブリンソルジャー、ウィザード、プリーストの3体さ。10階層のボスはオークファイターになってるよ。それに魔物の密度も低いから安全さ。』
「もう一つ。選ばれし者ってなんだい? 君は何か知っているね? 僕はいったい何者なの? 僕の使命とか知ってる?」
『それは僕の口からは言えない。そのうちわかるさ。それまで死なないように注意するんだよ。そして、強くなるんだ。』
「わかりました。頑張ります。」
『奥の部屋に初回攻略報酬と入口への転移魔法陣があるから行ってみてくれ。報酬のお宝は全て君たちの物だ。全部持って帰って良いよ。でも、コアには触れないでね。』
「ありがとうございます。遠慮なくもらっていきます。」
「ねえ? アトムは誰とお話しているの? それとも頭がおかしくなっちゃったの? バカなの?」
「はぁ? ダンジョンマスターとだよ。えっ? 二人には聞こえてなかった?」
「うん。アトムが上をみながら阿保面で話しをしていたわ。」
「阿保面はしていないだろ! それより奥の部屋にお宝があるから持って行けってさ。」
山のように積まれた金銀財宝を遠慮なく回収し帰宅した。
「父さん、只今戻りました。全階層制覇しました。」
「おお! それは凄いな。それで最後の階層には何がいた?」
「オークジェネラルの変異体の強化種でした。ダンジョンマスターの話では、今回はイレギュラーだそうです。通常はオークファイターがいるそうですよ。」
「そうなのか。それで貴重なドロップはあったのか?」
「あったのはあったのですが、父さんは知らない方が幸せだと思います。僕も見なかったことにして封印したくらいですから。」
「ん-。気になるが、止めておこう。アトムが言うくらいだ。よっぽど不味いものなのだろうな。」
その後、ギルドに向かってダンジョンの詳細をギルマスへ説明した。
今回はイレギュラーで通常は難易度が下がっているし、Cランクで十分だろうという判断になった。
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