第13話 冒険者登録
翌日、昨日の討伐報告を行うために父さんとエミリン、カリン、俺の4人でギルドへ向かった。
「おはよう。ギルマスはいるか? 話したいことがあるんだが。」
「おはようございます、領主様。少々お待ちください。」
受付のお姉さんがギルマスに確認を取りに行った。
「お会いになるそうなのでお部屋にどうぞ。」
ギルマスの部屋に案内された。
「おはよう、カイザー。何かあったのか?」
「ああ、ちょっと話があってな。紹介するよ、息子のアトムだ。」
「君が噂のアトム君か。君のポーションにはお世話になっているよ。おかげで冒険者の死亡率が下がっているんだ。感謝するよ。」
「いえいえ。売り上げにご協力して頂きありがとうございます。初めまして、アトム・ハリス 12歳です。」
「おいおい。本当に12歳かよ。」
「俺も偶にこいつの歳を忘れるんだよ。実はな、ギルマスと俺は若いころライバルだったんだぞ。母さんを取り合った仲だ。ハハハ。」
「余計なことを言うな。だが、おかげで俺は未だに独身なんだぞ。それは置いておいて。話しというのはなんだ?」
「ああ、昨日の定例のゴブリンの間引きなんだがな。12歳になったし、この3人に任せてみたんだよ。そしたら、2時間程度で森に居たゴブリンを殲滅してしまったんだ。信じがたいが本当の話だ。」
「はぁ? 本当か? 12歳でゴブリンを狩れるとは末恐ろしいな。」
「それでだ。この子たち3人を特例で冒険者登録してほしい。こいつら、ゴブリン程度では相手にならないんだ。実践を積んで早く強くなってこいつらを利用しようとする奴らから自衛できるようになってほしいんだ。」
「確かにアトム君はお前の後ろ盾が無かったら今頃ずる賢い奴らに利用されていただろうな。良し、わかった。俺の権限で登録してやろう。ダンジョンにも入れるようになるが、無理はするなよ。」
「「「はい! わかりました!」」」
「良い返事だ。指示してくるからしばらく待っていてくれ。」
「良かったな。これで自由に町の外にも出れるし、魔物も狩れるぞ。アトム、強くなれ。誰にも文句を言われないくらいに強くなれ。」
「はい。父さんを越えれるように頑張ります。」
「指示してきたから3人は受付で冒険者登録をしてきてくれ。カイザーには少し話がある。」
俺たちは登録手続きをするために受付に戻った。
「カイザー。お前の息子は大丈夫なのか? 俺もいろいろな強者をみてきたつもりだが、アトム君の秘めた力は異常だぞ。おそらくだが、すでにBまたはAに近い実力を持っているんじゃないか?」
「多分な。お前にだけは言っておくが、アトムは全属性魔法を習得済みだ。もう中級までの魔法が使える。それに2人の娘も上級職だ。今後、どんどん強くなっていくだろう。」
「俺もできる限り力になろう。彼らは世界を変えるかもしれない。俺の勘は当たるんだ。」
2人の元恋のライバルは難しい顔をしながら若者たちの将来を心配していた。
「アトム君にエミリンちゃん、それにカリンちゃんね。私は受付嬢をしているナンシーよ。これからあなたたちの担当をすることになったからよろしくね。何か分からないことがあったら何でも聞いてちょうだい。じゃあ、登録にあたっていろいろ質問するから答えてね。」
「「「はい、よろしくお願いします。」」」
ナンシーさんは20代半ばほどの美人さんだ。
とてもスタイルも良く、さすが受付嬢って感じのお姉さんだ。
そして、名前、職業、年齢と特技を聞かれた。
スキルの詳細は個人情報なので話さなくても良いそうだ。
良かったよ。全属性魔法を覚えてるなんて言ったら大騒ぎになるとこだった。
「アトム君は錬金術師なのね。ごめんなさい。私には錬金術師がどんな職業なのか知らないのよ。教えてもらっても良いかな?」
「簡単にいうと僕はポーションを作れます。美味しくなったポーションは僕が作ったものです。」
「え? えええ! アトム君が作ったの? みんなポーションを美味しく安くしてくれた製造者に感謝しているのよ。まさか12歳のアトム君が作っていたとは思わなかったわ。ちょっと待って。7年前から売り出されているわよね? 5歳から作っていたってことなの?」
「まあ、そうですね。危うくポーション職人として一生を終えるところでした。」
「あはは。それは危なかったわね。」
「アトムは凄い!」
「アトム様は凄いんです!」
何故かドヤ顔のパーティメンバーの2人だった。
「エミリンちゃんは。えっ?! バトルマスター! カリンちゃんは、アサシンですって! 2人ともレアな上級職じゃないの。」
「ナンシーさん。声が大きいです。注目浴びちゃってます。僕たちはまだ幼いので絡まれちゃうじゃないですか。」
「ごめんなさい。私としたことが。」
「よう! ここはお前たちのような子供がくる場所じゃないんだ。公園に行って鬼ごっこでもしてな。」
ほら、言ってるそばから面倒くさいやつが絡んできたじゃないか。
「僕たちは冒険者登録をしているので邪魔しないでください。」
「はぁ? お前らどう見てもまだ未成年じゃねえか。嘘つくんじゃねえ。」
「おい! うちの息子に何か用か?!」
「はぁ? えっ! カイザー様?! いや、子供が紛れていたので注意していました。」
「その必要はない。俺の息子は、俺の血を引いてるから実力があってな。特例で冒険者になるんだが、何か文句があるのか?」
「えっ! 息子さんだったのですか? それはそれは申し訳ございません。それでは私は失礼いたします。」
風のように去っていった。
「ナンシー! あれ程気を付けろと言ったじゃないか‼」
「申し訳ございません!」
「アトム君、許してやってくれ。今後、このようなことが起きないように注意する。」
「いえ、構いません。予想はしていましたから。それと依頼を出していた薬草の採取依頼ですが、ポーションに十分な在庫ができたので止めてもらって良いですか?」
「それは残念ですね。了解しました。それでは丁度カードが出来上がりましたのでお渡しします。まずはアトム君。無くさないでね。エミリンちゃんとカリンちゃんもね。」
「「「はい!」」」
「カリンちゃんは成人しているから正式登録よ。アトム君とエミリンちゃんは仮登録で15歳になったら正式登録するわね。カリンちゃんが保護者ということで魔物狩りが許可される形になったのよ。」
そうか。カリンは3つ上だから既に成人していたんだった。
「ちょっとだけ説明するわね。あなたたちは今日からFランクの冒険者です。冒険者にはランクがあり、Fから始まりSまであります。Sランクは特別なランクなので一番上のランクはAランクになりますね。このランクはギルドへの貢献度、実力をギルドが判定し昇格します。またクエストには難易度によりランク分けされてます。Fランクの皆さんは1つ上のEランクまでのクエストを受けることができます。失敗すると違約金を支払わなければならなくなりますので無理なクエストは受けないようにしてくださいね。質問はありますか?」
「大丈夫です。」
ちなみにゴブリン討伐はFランクだった。
5体倒すと1銀貨の報酬だった。
あれ? 俺が出した薬草採取クエストも10本で1銀貨だったな。
危険度を比べたらもっと安い報酬で良かったのかもしれない。
低ランク冒険者から感謝されていた話に納得した。
討伐報酬とは別に素材や魔石を売ることで冒険者は収入を得るそうだ。
ゴブリンからは人間でいうところの心臓のある部分にある小さな魔石が得られるが、俺は錬金術に使いたいので売らずに保管してある。
残念ながらゴブリンからは魔石以外、使える素材は得られない。
だから魔石を抜いた死体は燃やすように言われた。
血の匂いで他の魔物を呼び寄せたり、アンデット化してしまうからだ。
そして、ゴブリンは討伐証明として右耳を5体分ギルドに提出すると報酬の1銀貨がもらえるという仕組みらしい。
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