第11話 上級ポーション

毎朝カリンが起こしてくれて、朝の身支度も手伝ってくれる。

栄養状態が良くなって段々と女性らしくなってきたカリンにちょっとドキドキしてしまう。

幼いながらも確実に美人さんになる片鱗が見える。

ドアの隙間からこっちを覗いているチョロミンが拗ねているようだが、後でお菓子をあげておこうと思う。


「エミリン、朝練は?」


「もう終わったわよ。アトムが起きるのが遅いのよ。」


「じゃあ、俺も朝練してくるかな。エミリンもやるよね?」


「ねえ、今私は終わったって言ったの聞いて無かったの?」


「朝練を一緒にしたいなって思ったんだけどね。」


「そう、じゃあ仕方ないわね。付き合ってあげるわよ。」


エミリンにツンデレ属性が付いた。


「私は朝ご飯の準備をしておきます。」


「よろしくね、カリン。」


「何か、カリンには優しくない?」


やっぱりエミリンは嫉妬しているようだ。

可愛い奴目。


「気のせいだよ。じゃあ、行くよ。」


俺は毎日魔法の練習を続けた。

意外と狙い通りに行かなくて苦労している。

これでは動く魔物に当てられるか心配になる。

偶に母さんが指導してくれるのだが、なかなか上達しないのだ。

やはり専門職ではないのが影響しているのかもしれない。

そして、1カ月が過ぎ父さんが王都から帰ってきた。


「ただいま。アトム、上級ポーションが手に入ったぞ。国王に謁見した時に上級ポーションが手に入れば上級ポーションも増産できるんですがねって言ったら下さったんだ。美味しく作れたら献上しろとも言われたけどな。」


「そうですか。では早速見せてください。それとこれが父さん用の収納ペンダントです。」


背景に炎、ドラゴンの前でクロスした剣のカッコイイデザインのペンダントだ。

父さんはもの凄く喜んでいた。

このデザインを家紋にしようと言い出したが、ドラゴンを狩ったことが無いのだから恥ずかしいから止めようと説得した。

そのうちお前が倒すだろうから別に良いじゃないかと無茶なことを言いだした。

エミリンとカリンには既にサラ母さんと同じペンダントを渡してある。


*鑑定

 名称: 上級HP回復ポーション

 ランク: A

 特徴: 致命的な重症でも命さえあれば治すことができる。

     HP+300回復する。

     ダンジョン産アイテム。価格10,000,000G。

 レシピ: 中級ポーション(2)+魔石A(1)+ドラゴンの血(1滴)


「・・・。ドラゴンの血が必要だと。流石に難しいですね。それとAランクの魔物の魔石が必要です。」


父さんのペンダントが嫌なフラグになってしまったようだ。


「近年、ドラゴンを倒したという話は聞かないな。過去に勇者が邪龍を狩ったという伝説は残っているのだが。Aランクの魔石は昔俺が入手したものがある。」


『渚、どうかな? ドラゴンの血って錬成可能?』


『可能不可能で言えば可能ですね。この世に存在するものではあるので。全MPを消費すれば何とかなるレベルかと。』


「全力を出せば何とかなるかどうかというレベルですね。寝る前に頑張ってみますので明日までお待ちください。」


「無理はするなよ。そうだ、それと次回はお前を連れてこいと言われたぞ。覚悟しておくんだな。」


「ちょっと待って下さい。父さん、まさか僕のことを話したのですか?」


「国王に嘘は付けないから仕方なかったんだ。許してくれ。でも、やっとお前のことを自慢できると思うと俺はウキウキが止まらないんだ。ずっと隠してきたからな。」


勝手に解禁にしてるし。

押さえていた親バカが覚醒してしまった。

母さんに助けを求めて視線を送ってみたが、こっちもダメみたいだ。


「はぁ。2人ともほどほどにしてくださいね。それより僕が危険にさらされる心配をしてくださいよ。」


「それなら多分問題無い。俺の息子に手を出すような馬鹿はおらんだろ。」


「私のアトムちゃんに手を出したら未来は無いわ。」


2人とも現役時代は相当有名だったらしく、絶対に逆らってはいけないというのが冒険者の中では常識らしい。


「一応、親衛隊を王都から送ってくれるそうだ。まあ、必要ないとは思うのだが。」


「そうですか。。。 諦めるしか無さそうですね。それと俺の専属メイドになったカリンです。」


「初めまして、旦那様。カリンと申します。よろしくお願いいたします。」


「ああ、スーザンからの手紙で知っているよ。よろしくな。それとアトムのことをよろしく頼む。」


「それと父さんがいない間に変わったことと言えば、MP回復ポーション(マジックポーション)も作れるようになりました。ちなみにピーチ味です。」


「もう販売しているのか?」


「まだです。母さんの話では爆発的に売れるはずだというので溜めているところです。材料の入手が難しくてあまり数が作れないのです。」


「そうだろうな。魔法職には必需品だ。それが美味しくなって安くなったらそりゃ売れるよ。」


*鑑定

 名称: MP回復ポーション(マジックポーション)

 ランク: B

 特徴: MP+300回復する。ピーチ味。ピンク色。アトム作。

 レシピ: 魔力草(5)+魔石(適量)+魔力水(100ml)


魔力草は、ダンジョンの森林フィールドのみで入手できる薬草なのだ。

町の近くにはダンジョンが無いので入手が難しい。

さらに魔石は魔物の中心に存在し、活動の源になっているものだ。

魔物を倒し、解体して取り出すらしい。

魔石は、魔道具の燃料になるために高く買い取ってもらえるそうだ。

そして、マジックポーションは魔石の量や大きさ、質(ランク)でMP回復量が変動する。

今回使った魔石は、父さんがゴブリンを討伐した際に採取した魔石が換金されずに放置してあったものを拝借した。

魔力草は母さんがギルドにあった在庫を買い占めたものだ。

それしかないため、量産できていないのだ。


「それとだが、伯爵になって領地を広げてもらったのだ。東西南北にある隣町までが我が領土となるそうだ。今度、視察に行くからアトムも同行してくれ。ちなみに一番遠い北にある町の近くには鉱山採掘場が変異したダンジョンがあるんだ。」


「了解しました。」


ダンジョンか。ワクワクするな。

ダンジョンに行ければ魔力草も魔石も入手しやすくなる。


夜になり遂に上級ポーションを作ることになった。

確実にMP枯渇で気を失うのでベットで寝る準備をしてから始めることにした。

念のため、カリンに見守ってもらっている。

そんなときでもお菓子を要求してくるマイペースのエミリンは無視だ。

渚、準備OKだ。


『では、まずドラゴンの血を錬成します。念のため、マジックポーションを準備しておいてください。』


「カリン、俺が気を失いそうになったら、このマジックポーションを飲ませてくれ。」


「分かりました。お任せください。」


『いきます。錬成開始。』


一気にMPが吸い取られていく感覚がし、目眩がした。

これはやばい!

カリンに目で合図をし、マジックポーションを飲ませてもらった。

旨い。なんて感想を言える余裕などない。

ドンドン吸われていく。

事前に準備していた5本を消費してしまった。

もうお腹はチャポチャポだ。


『ドラゴンの血、完成しました。自前のMPだけじゃ全く足りませんでしたね。てへっ。続きまして、上級ポーションを錬成します。』


ふぅ。マジックポーションが無かったら危なかったじゃないか。

てへっ。じゃないから!

1滴だけでこんなにMPを使うのか。

毎回これではたくさん作るのは無理だな。


『上級ポーションが完成しました。』


手には金色に輝く上級ポーションがあった。


*鑑定

 名称: 上級HP回復ポーション

 ランク: S

 特徴: 致命的な重症でも命さえあれば治すことができる。

     欠損部位も再生する。全ての状態異常、呪い、病を回復する。

     HP/MPが全回復する。黄金色。ミント味。アトム作。

 レシピ: 中級ポーション(2)+魔石A(1)+ドラゴンの血(1滴)


「ふぅ。完成したよ。ありがとう、カリン。」


「いいえ。お身体は大丈夫ですか? 一晩、一緒に居ましょうか?」


「大丈夫だよ。カリンも明日仕事があるんだからゆっくり休んでね。」


「やっぱり、カリンには優しいわ。」


何もしなかったエミリンは無視だ。


翌朝、渚から嬉しい報告があった。

上級ポーションを作ったおかげで錬金術師の熟練度が上がり、新たなスキルが発現したそうだ。


*ステータス

 名前: アトム・ハリス

 称号: ハリス家長男、ハーフエルフ

 職業: 錬金術師

 性別: 男

 年齢: 7歳

 レベル: 10→12


 HP: 250→270

 MP: 650→680

 STR: 50→60

 INT: 630→650

 DEF: 60→70

 AGI: 50→60

 DEX: 400→420

 Luck: 100


 スキル

  錬成、錬金ボックス、鑑定眼、分解、合成、抽出、付与、解析、リスト、

  、魔力操作


 魔法スキル

  生活魔法:ファイア、ウォーター、ウィンド、ライト、クリーン

  初級火魔法:ファイアボール、ファイアストーム、ファイアウォール

  初級水魔法:ウォーターボール、ウォーターカッター、ウェーブ

  初級風魔法:ウィンドカッター、トルネード、エアカーテン

  初級土魔法:ストーンバレット(石礫)、アースシェイク(地震)、

        アースウォール(土壁)

  初級氷魔法:アイスニードル、アイススピア、アイスウォール

  初級雷魔法:サンダーボルト(落雷)、サンダーアロー(雷の矢)、

        サンダースピア(雷の槍)

  初級光魔法:ヒール、キュア、ホーリーアロー

  初級闇魔法:バインド(拘束)、スリープ(睡眠)、サイレス(消音)

  空間魔法:スペース、テレポート、ゲート

  時魔法:ヘイスト、スロー、タイマー

  重力魔法:グラビデ、ライト

  契約魔法:奴隷契約、眷属契約、主従契約(テイム)


 ユニークスキル

  異世界言語、全魔法適性、共に歩む者


『魔法が増えて見難くなったので整理し、属性魔法を統合します。』


全初級属性魔法:火▽、水▽、風▽、土▽、氷▽、雷▽、光▽、闇▽


▽を意識すると詳細が見れるようになるらしい。

凄くすっきりした。

そして、新たなスキルだが。


複製: 錬金ボックス内のアイテムをMPを利用して複製することができる。

    熟練度によりMPの消費量が減少する。


アイテムを少ないMPで複製することができる。

しかも、材料だけでなく完成品も複製ができ、材料を必要しないということにもなる。

暇さえあれば作っていたポーションだが、各段に楽になるだろう。

ドラゴンの血を作らなくても上級ポーションを複製できるってことかな?


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