第9話 全属性魔法コンプリート
父さんの魔剣が終わったので、次はサラ母さんのアクセサリーだ。
サラ母さんは、指輪もネックレスもしていない。
指輪はメイドさんの仕事をするときに邪魔になるだろう。
なので、ペンダントを作ってあげようと思う。
渚、よろしく。
父さんの剣を作った時に余ったミスリルを使ってペンダントが作製した。
そして、付与だがスーザン母さんと同じものにし、さらに家事に疲れていると思うので疲労回復、治癒も付与しておいた。
*鑑定
名称: 癒しのペンダント
ランク: B
特徴: 亜空間(各2mの立方体)に収納可能。時間経過半減。重量不感。
状態異常に強くなる。
簡易的な物の鑑定ができる。
魔力を込めるとヒールが発動し、身体を癒す。
サラ専用。アトム作。
付与: アイテムボックス、状態異常耐性、簡易鑑定、治癒魔法ヒール
「サラ母さん。このペンダントを付けてください。使い方はスーザン母さんの指輪と一緒ですが、このペンダントには治癒魔法も付与しておいたので疲れた時やケガしたときは魔力を込めてヒールと唱えてください。」
「え? 私がヒールも使えるようになるってことなの? 治療魔法を受けるには凄くお金がかかるのよ?」
「母さんは僕が何度言ってももったいないと言ってポーションを使ってくれないので。これなら自分の魔力ですし、気軽に使えるでしょ?」
「ありがとう。大切にするわね。」
俺の背後にいるチョロミンが私にはって顔をしているのが見なくても分かる。
振り向き様にチョコを口に放り込み、目で行くよと合図するとチョロミンは笑顔で着いてきた。
自室に戻って机にプリンを出した。
実はバニラエッセンスを錬成することに成功した。
これでバニラアイスやカスタードクリームも作れる。
「食べても良いの? 凄く甘い匂いがするわね。」
「良いよ。これはプリンって言うんだ。甘くて冷たくておいしいよ。」
「いただきます。お、おいしい! 口解けまろやか。」
チョロミンは御満悦のようだ。
「エミリン。父さんが王都に行っていないからって朝練さぼっちゃダメだからね。さぼったら、お菓子は無し。」
「えっ!! それはひどいわ。真面目に練習するからそんなこと言わないでよ。」
「僕も魔法の練習をするから一緒に頑張ろう。」
翌朝、俺の作った新しい剣を帯剣した父さんが試し切りしたくてウズウズしながら王都へ旅立った。
俺はいつものポーション作りを終え、余ったMPを使って魔法の練習を始めた。
隣で頑張ってるアピールをしてくるチョロミンがウザい。
「まだ習得していない土、闇、雷も習得したいな。そうだ、町に行って魔道具を解析して入手すればいいか。母さんに連れていってもらおう。」
リビングへ向かうと2人の母さんが紅茶を飲みながら寛いでいた。
「あら、どうしたの? アトムちゃん。」
「母さん、町に行きたいのですがお忙しいですか?」
「見ての通りよ。サラとアトムちゃんの将来について話し合っていたのよ。」
これは行きたくないと遠回しに言っているな。
母も女性だ。きっとチョロミンと同じように甘いお菓子が好きだろう。
「母さん。実はお菓子の開発もしてまして試作品があるのですが、味見をしてもらえますか?」
「え? 良いわよ?」
クッキーを皿に並べテーブルに置いた。
いつの間にか、チョロミンも席についていた。
「クッキーはサクサクして甘くておいしいの!」
「あら? エミリンは食べたことがあるみたいね。」
あっ!って顔したが、もう遅いから。
これから食べさせて共犯にする予定だから、もう母さん達にはバレても問題無いし。
「こ、これは! おいしいわ。エミリンはいつもこんなにおいしいお菓子を食べていたのね? ズルいわね。」
「私は試食係。問題無い。」
大人げなくスーザン母さんが拗ねていた。
サラ母さんは涙を流しながら噛みしめている。
「そんなに気に入ってもらえたのならまた作りますね。でも、この世に無い材料を錬成して作ったお菓子なので内密にお願いしますね。ところで、町に行く件ですけど。」
「もちろん、良いわよ。でも、これを食べてからよ。」
母さんもチョロかった。
1時間ほどお茶会に付き合わされた後、町へ出かけた。
「ところでアトムちゃんはどこに行きたいの?」
「市場と道具屋です。母さん、ところで魔力切れした時に魔力を回復するポーションは無いのですか?」
「あるわよ。ものすごく高いけどね。私も冒険者をしていた時は必ず常備していたわ。魔力切れした魔法使いなんて一般人より弱いからね。でも、もの凄く苦いのよ。」
「そうなんですね。次は魔力回復ポーションに挑戦しようと思います。」
「それなら家に1本だけあるわよ。あとであげるわね。」
あるんかい!
ツッコミたい気持ちをグッと押さえた。
すると市場が見えてきた。
「ここから歩くわよ。この先は馬車では入れないのよ。」
馬車を降り、スーザン母さんと並んで歩いた。
なぜか一歩下がったところをエミリンが付いてくる。
「ねえ、エミリン。なんで後ろを歩いているんだい?」
「ん? 母さんから女は男の一歩後ろをついて行くものよって教えられたの。」
いつの時代の話だよ。
って、この世界では今なのか?
前世の記憶と被って面倒だな。
「話辛いから横を歩いてくれ。そこじゃ、はぐれても気づかないぞ。」
「わかった。じゃあ、手をつなぐ。母さんに言われた。」
サラ母さん。娘に変なことを教えないで欲しい。
すると市場の手前で家を建て直しいる現場の横を通った。
あれ? あれって魔道具か?
粘土のような土を捏ね繰り回し、その後焼き固めている機械があった。
レンガを作っているようだ。
*鑑定
名称: レンガ製造機
ランク: C
特徴: レンガを自動で作製する魔道具。
付与: 土魔法、火魔法、風魔法
おっと、土魔法発見!
『土魔法を習得しました。』
お目当ての土魔法がこんなに早く手に入るとは思わなかった。
そのまま市場へ向かい食材をいろいろと入手した。
お金はポーションのおかげでいくらでもあるので手あたり次第に買って収納している。
特に野菜や果物は多めで種類多く買った。
魔力ポーションは何味にするか悩むな。
すると道端で蹴られている少女を目撃した。
痩せていて頭から被った服? 布はボロボロだった。
「母さん、あの子はなぜ蹴られているのでしょうか? 誰も助けようとしないのは何故ですか?」
「あの子は赤い首輪をしているでしょ。あれは奴隷の首輪っていうものなのよ。あの子は奴隷だって証明するものなの。あの首輪をしていると主人には逆らえない。そして、主人の所有物だから誰も何も言えないのよ。可哀想だけど見なかったことにするしかないの。」
この町には奴隷商は無い。
それは父さんが奴隷制度を嫌っているからだ。
だから俺も今まで奴隷を目にすることは無かった。
でも、ポーションの普及に伴ってこの町に多くの人が入ってきた。
それで奴隷を買った人間も入ってきたわけだ。
俺には見て見ぬふりをすることが出来なかった。
母さんの手を振りほどき、少女の元へ走ってしまった。
そして、蹴っていた主人らしき男を突き飛ばし、少女をヒールで癒した。
突き飛ばされた男が立ち上がり、俺に殴りかかってきた。
するとドカンという音とともに男が吹き飛んだ。
そして、水の塊が追い打ちをかけた。
「大丈夫? ケガは無い?」
「アトムちゃん、大丈夫?」
男はエミリンに殴られ、さらに母さんのウォーターボールでトドメを刺されてのびていた。
「どうしましょうかね。人に向けて魔法を使っちゃったわ。領主のあの人は不在だし、私の権限では無かったことにするのは難しいかしら。」
「アトムを殴ろうとした。それだけで大罪。」
「それもそうなのだけれども。そうだ! 貴族に手を上げたってことで無礼討ちってことにしましょう。それが良いわね。」
「殺されなかっただけ有難いと思え!」
女は怖いとアトムは思った。
そして、奴隷の首輪を鑑定した。
*鑑定
名称: 奴隷の首輪
ランク: C
特徴: 奴隷契約魔法が施された首輪。
主人の命令に従わないと痛みを与える。
主人の言うことは絶対という暗示がかかる。
付与: 契約魔法、闇魔法
『契約魔法、闇魔法を習得しました。条件がそろったので雷魔法が覚醒しました。』
全属性魔法をコンプリートした。
「この子はどうしましょうか?」
「没収で良いんじゃない? でも、この首輪があると所有者はこの男のままなのよね。」
「首輪を外しても良いですか? 丁度、契約魔法を覚えたので外せると思うんです。」
「あら、そうなの? じゃあ、外しちゃって。この男が文句言ってきたら脅した後でお金で解決するから大丈夫よ。この子は我が家で引き取ります。」
俺は奴隷解放の魔法を発動し、奴隷の首輪を解除した。
「助けてくれてありがとうございます。でも、私は奴隷なのでご主人様には逆らえないのです。ご主人様が怒ると蹴られるし、ご飯をもらえなくなるのです。私には人権が無いので見なかったことにしてもらって構いません。ケガを治していただいたご恩は一生忘れません。」
「えっと。君はもう奴隷じゃないよ。首輪が無いでしょ? 今日からうちの子になったんだ。よろしくね。」
「え? 本当だ! 首輪が無い。どういうことですか? 理解が追い着きません。」
母さんが傭兵を呼び、男は捕らえられ連れていかれた。
この町に来たばっかりにボコられ、奴隷まで失った彼は災難だったろう。
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