第5話 ポーション革命と魔法
どうやらポーションというものはすごく不味いらしい。
俺は飲んだことが無かったから知らなかった。
死を覚悟した時じゃないと飲み込むことが出来ない程にだ。
これは流石に改良が必要だろう。
そして、俺は試行錯誤を繰り返しなんとか完成に至った。
前世の知識(小説)から魔法はイメージが大事を錬成にも応用したのだ。
ダンジョン産ポーションは赤く不味い。
色が濃いほど効果が高く、等級が上がる。
さらにとても苦いらしい。
昨日までの俺のポーションも同様だ。
何せダンジョン産ポーションを真似ているのだから。
味のイメージを強くし、錬成してみると黄色で爽やかレモン味のポーションが出来上がった。
やはりイメージって大切なんだな。
『否定します。作成時に苦みなどの雑味を抽出し取り除き、魔力を消費してレモンを錬成し添加しました。次回作製時には錬金ボックスにレモンを保管しておいてください。』
ナビゲーションさんがフォローしてくれていたんですね。
いつもありがとうございます。
不足した材料は魔力を使って作り出すことができるのか。新たな発見だ。
「父さん。新しいポーションが出来ました。試しに飲んでもらえますか?」
「え? 俺が飲むのか? 正直飲みたくないのだが。」
「大丈夫です。僕も飲んでみましたが、爽やかな味でした。」
「そうなのか? じゃあ、お前を信じて一口だけだぞ? 絶対に一口しか飲まないからな。」
父さんが嫌な顔をしながら鼻をつまみ、ちょっとだけ舐めた。
どれだけ息子が信じられないんだ。
結構ショックだぞ。
「ん? あれ? うまい? すごく爽やか? これ、本当にポーションなのか? 普通にまた欲しくなるくらいにうまいぞ。」
「これが僕の本気です。頑張りました。」
「凄いぞ! これで効果は同じなんだよな?」
「もちろんです。味しか変えてません。」
「ポーションに革命を起こしたぞ! これなら2倍の20金貨でも売れるんじゃないか?」
「前にも言いましたが、僕は誰にでもちょっと頑張れば買えるくらいに値下げしたいのです。冒険者の皆さんに命を大切にしてほしいのです。父さん、ギルドを通して国中にこの町でうまいポーションを1金貨で売っていると通達してもらってください。これは転売防止のためです。買いたいならこの町に来れば良いと。もちろん、作成者は不明でお願いしますね。」
「この町の名物にするってことだな。冒険者が集まって町が潤うかもしれないな。国王にも報告しておこう。」
それから1年。
俺は何かに憑りつかれたように我武者羅にポーションを作り続けた。
道具屋からのガラス瓶の納品が追い着かず、瓶も自分で錬成し始めた。
森からの採取だけでは癒し草が足りず、町の農家に頼んで栽培してもらった。
そのおかげで王都も含め、国中に俺のポーションが普及するほどになった。
卸しも父さんが行っていては他の仕事に支障をきたすのでギルド職員が我が家に取りにくるようになった。
そして、ある日俺は我に返った。
俺はポーションだけを作る人生で良いのか?
俺の身体はまだ7歳だ。
遊び盛りだし、いろいろ学ぶ時期でもある。
これではダメだ。
在庫もたくさんあるし、しばらくポーション作りは休みにしよう。
そうだ、思い出した。
5歳の祝福の日にエミリンにおいしいお菓子を食べさせてあげようと誓ったんだった。
それじゃ、頑張っちゃいますか。
まずはチョコレートに挑戦だ。
ナビさん、フォローよろしくね。
前世の記憶を絞り出し、カカオ、砂糖を魔力を使って錬成した。
『両者ともこの世界に存在しますが、この国では入手困難で高価です。それなりにMPを消費しましたが錬成を続けますか?』
この世界に存在する材料は魔力を消費して錬成できるのだ。
しかし、入手難易度によって消費魔力が変わってくる。
さらに材料があってもオーバーテクノロジーで数十年、数百年先でも開発できそうにないものは錬成できない。
例えば、化学繊維や石油製品(プラスチック、ナイロン等)がこれに当たる。
「はい、続けてください。さらにチョコへ。」
そして、1cm程度の立方体のチョコが出来上がった。
出来上がりとともに倦怠感に襲われた。
この世界に存在しないチョコを錬成したので結構なMPを消費し、枯渇寸前になっていた。
『大丈夫ですか? 次回からはリスト化されましたので半分ほどのMPで済むはずです。提案ですが、魔法を覚えてはいかがでしょうか。現状、生活魔法で錬成の補助をしていますが、例えば生活魔法のファイアと火魔法では火力に雲泥の差があります。生活魔法を何発も連射しなければならないところを火魔法一発で済み消費MPが減るというわけです。』
「なるほど。でも、どうやって覚えれば良いの? 魔法スキルスクロールはなかなか手に入らないんだよ。」
『あなたには全魔法適性があるのです。見てコツさえ学べば取得できるはずです。』
「それにしても、ナビさんと普通にお話できるようになったね。」
『あなたの成長とともに私も進化できるのです。』
「なるほどね。とりあえず、スーザン母さんに水魔法と風魔法を教えてもらおうと思う。」
スーザン母さんを探し、お願いしてみた。
「あら! アトムちゃんも魔法が使いたいですって! もちろん教えるわよ。でも、覚えられるかどうかは分からないから覚えられなくてもがっかりしないでね。」
「うん。わかった。でも、僕は母さんの息子だから覚えられる気がするんだ。」
「そうね。私もアトムちゃんが魔法を使えるように頑張って教えるわね。」
それから魔力操作や詠唱など基本的なことを学び、イメージの仕方、発動方法を教えてもらった。
「ウォーターボール!」
3日かかったが、水魔法を覚えた。
「凄いわ! さすが私の息子ね。魔法使いにジョブチェンジよ!」
母さん。残念ながら俺は今もなお錬金術師です。
さらに2日後、風魔法も覚えた。
両親ともに驚きを隠せない。
「アトムちゃん、もう一度教会に行ってみない? もしかすると本当にジョブチェンジしているかもしれないし、確かめてきましょう。」
魔法というものは、適性があっても年単位で訓練を重ね獲得するものだ。
俺はそれだけ異常なのだ。
でも、神に俺の転生目的を聞きに行きたいと思っていたので丁度良い。
7歳の俺一人で教会に出かけるのは許してもらえない。
理由を伝えても何を言っているんだと思われるだけなので悩んでいたところだった。
「はい、わかりました。」
「よし。じゃあ、明日教会へ行くことにしよう。」
翌日、両親とともに教会へ行った。
エミリンはお留守番だ。
それにしても我が家の馬車が豪華になっていた。
俺のポーションでの稼ぎが凄いらしい。
家の建て替えを考えているくらいだ。
国家予算ぐらいあるらしく、城を建てようかという話も出ているらしい。
そんな話を父さんとしていると教会へ着いた。
教会には鑑定水晶というステータスを確認できるものがある。
神の祝福を受けた後は、この水晶で自分のステータス確認することが出来るらしい。
俺は鑑定スキルを持っているので自分で確認できる。
「アトムちゃん、水晶に触れてみて。そして、ステータスオープンと唱えるのよよ。」
「はい。ステータスオープン。」
*ステータス
名前: アトム・ハリス
称号: ハリス男爵家長男、ハーフエルフ
職業: 錬金術師
性別: 男
年齢: 6→7歳
レベル: 5→8
HP: 180→200
MP: 450→600
STR: 20→40
INT: 300→600
DEF: 30→40
AGI: 35→40
DEX: 250→300
Luck: 100
スキル
錬成、錬金ボックス、鑑定、分解、合成、抽出、付与、リスト、魔力操作
魔法スキル
生活魔法:ファイア、ウォーター、ウィンド、ライト、クリーン
初級水魔法:ウォーターボール(水の玉)、ウォーターカッター(水の刃)、
ウェーブ(波)
初級風魔法:ウィンドカッター(風の刃)、トルネード(竜巻)、
エアカーテン(風の壁)
ユニークスキル
異世界言語、全魔法適性、導く者
俺の鑑定と同じ結果だ。
魔力操作や魔法を覚えたおかげでMPとINTが大幅に上がっている。
「特に変わったところは無いですね。職業も錬金術師のままですし、しっかりと魔法も覚えています。」
「そうなの? おかしいわね。」
「神様にお祈りしてきても良いですか?」
「もちろんよ。それにしても変ね。錬金術師は魔法も使える職業なのかしらね?」
俺が特別なだけです。
悩ませてごめんなさい。
俺は女神像の前で跪き祈った。
『神様、どうか俺の転生理由を教えてください。使命を忘れているのではないかと心配で不安になります。いきなり天罰とか勘弁してください。お願いします。』
2~3分ほど待ってみたが、応答は無かった。
『ナビさんは俺の使命とか知らない?』
『いいえ、わかりません。特に使命が無いのであれば自由に生きれば良いと思います。気にしすぎです。』
『そうかな? 心配しすぎかな。』
それから隣接する治療院を見てみたいと父さんへお願いし、治癒魔法をみせてもらった。
おかげで光魔法を手に入れた。
その後、父さんの剣のメンテナンスをお願いしていた鍛冶屋へ寄り、火魔法もゲットした。
火魔法を覚えたところで氷魔法が覚醒した。
どうやら氷魔法には水と風だけでなく、火も必須条件だったようだ。
これで火、水、風、光、氷の5属性持ちとなった。
両親は呆れていたが、ここまで来たら全属性を制覇しようと開き直った。
その後、市場で小麦粉や豆などの穀物や野菜を大量に購入した。
チョコ以外にも挑戦してみようと思っている。
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