第4話 初めてのポーション作製

「サラ母さん。この鍋にウォーターの水を入れてもらえますか?」


「良いですけど、台所の水瓶に水が入っていませんでしたか?」


「あれは井戸水だからダメなんだ。魔力がこもった水が欲しいんだ。」


実は帰宅後、スーザン母さんにウォーターボールで水をもらおうとしたのだが手加減が難しく、桶を破壊してしまったのだ。

それでスーザン母さんは諦めてサラ母さんのところへ来たというわけだ。

事情を知らないサラ母さんは渋々鍋にウォーターを入れてくれた。

いちいちサラ母さんに魔力水をもらうのは申し訳ないし、面倒だな。

生活魔法を覚えられないかな。


「ちなみに母さんはどうやって生活魔法を覚えたの?」


「私は5歳の神からの祝福で職業メイドを授かった時に覚えました。」


「そうか。ありがとう。」


魔法の取得方法は後で父さんに聞くことにしよう。

魔力水を入手できた俺は自室に戻った。

癒し草はすでに錬金ボックスの中に保管してある。

魔力水も鍋ごと錬金ボックスに入れ、ガラスの小瓶も収納しておいた。

いよいよ初の錬成だ。

リストから初級HP回復ポーションを選択。


・初級HP回復ポーション

  必要材料: 癒し草2本(OK)+魔力水100ml(OK)


「初級回復ポーション。錬成!」


『初級回復ポーションが作製されました。ガラスの小瓶へ注いでもよろしいですか?』


「え? はい、お願いします。」


神の祝福を得た時の脳内に響いた声がして驚いてしまった。


『ガラス瓶に劣化防止の付与をすることをお勧めします。今の状態での賞味期限は3日が限度です。』


「え? そうですか。では、付与をお願いします。」


『了解しました。完了です。』


手の上にガラス瓶に入った初級HP回復ポーションが現れた。


*鑑定

 名称: 初級HP回復ポーション

 ランク: D+

 特徴: ある程度のキズやケガを治す。病気は治らない。HP+100回復する。

 作製: アトムが錬成し作製(癒し草+魔力水)


HP回復量が50から100にUPしている。

俺が作ると高性能になるらしい。

早速両親へ報告に走った。


「父さん、ポーションが完成しました!」


「本当に作ることが出来るんだな。さすがに聞いた時には半信半疑だったが。」


「さすが私の息子ね。でも、残念ながらそれが本当にポーションなのか、私たちには確認できないのよ。鑑定スキルが無いの。」


「それならキズを治してみましょう。確かサラ母さんの手が荒れていたと思うので治してみましょう。」


スーザン母さんがサラ母さんを連れて戻ってきた。


「何か御用ですか?」


「サラ母さん、手を出してください。」


サラ母さんの手は水仕事で荒れて血が出ていた。

そこに俺の作ったポーションをかけてみる。

するとみるみるうちにサラ母さんの手が綺麗に治っていった。


「え? えええ! どういうことなの?」


「サラ母さんの手で回復ポーションの効果を確認したんだ。テストに使ってしまってごめんなさい。」


「それより高価なポーションを手荒れなんかに使わないでください。勿体ないです。」


「俺が作ったものだから大丈夫。それにさっき母さんから魔力水をもらったからお礼だよ。初めて作ったポーションで母さんのキズを治せて僕は嬉しいよ。」


それを聞いたサラ母さんは泣いてしまった。

数分後、母さんが落ち着いたところで家族会議が始まった。

議題は、このポーションを世の中に出しても良いのかということだ。

一般常識としてポーションは人には作れない。

ダンジョンを通して神から与えられた贈り物という認識なのだ。

しかも、俺のポーションはダンジョン産よりも効果が高い。

俺が作成者と知られれば誘拐され利用される可能性が高い。

俺はまだ5歳なのだ。

だが、メリットも大きい。

ポーションが出回ると領内の怪我人が減り、死亡率も下がる。

売れば我が家(特に俺)の家計が潤う。

さらに高価な中級や上級のポーションを購入することができる。

そうすれば、俺が等級の高いポーションを作れるようになるのだ。

部位欠損まで治せるポーションを作れるかもしれない。

俺は魔法を使いたい。

魔法はダンジョン産のスキルスクロールでも獲得できると父さんに聞いた。

とても高価らしいがギルドやオークションで入手できる。

お金があれば買えるのだ。


ということで、領内限定で作成者不明にし、領主の父さんが道具屋と冒険者ギルドのみに卸すことが決まった。

冒険者ギルドには魔法スキルスクロールを優先的に俺に回すように条件を付けた。

そして、俺がポーションマニアという噂を道具屋経由で広めてもらった。

それで冒険者が上位のポーションを見つけた場合には俺に見せてくれることになった。

これで上位のポーションのレシピも入手できそうだ。


父さんが森へゴブリンを討伐に行ったついでに癒し草を採取してきてくれた。

それを使ってポーション作製の練習だ。

小瓶が10本しかないので10本のポーションを作製した。

前回同様の性能になった。

それを試しに5本ずつ道具屋とギルドに卸してもらうことにした。

価格はダンジョン産と一緒の販売価格10金貨だ。

手数料で1割引かれて9金貨が俺の取り分だ。

現在ポーションが品薄だったこともあり、一瞬で完売したらしい。

さらに高性能なことが話題となり問い合わせが殺到しているとのことだ。

道具屋には小瓶の大量発注、ギルドには癒し草の採取依頼を急募してもらった。

そして、サラ母さんの負担にならない程度に魔力水を出してもらい俺はひたすらポーションを作り続けた。

そのおかげで当初の目的の領内の死亡率の低下と我が家の金銭的余裕ができた。

その金で生活魔法の魔法スキルスクロールを購入し、俺は生活魔法が使えるようになった。

これでサラ母さんの負担が無くなる。


月日が流れ1年が過ぎた。

俺が自身で魔力水を作れるようになって生産数が増加。

在庫が持てるまでになった。

これは需要よりも供給が上回ったということだ。

余裕が出来た俺は改良を加えることにした。


「父さん。もう1年が経つので僕のポーションの問題点や改良してほしいところを使用者から聞いてもらえますか? それと僕は庶民でも手が届く値段に落としたいと思っています。そうですね、今の10分の1の金貨1枚でどうでしょうか。」


「アンケートの件はわかった。値下げの件はもう少し様子を見よう。どうやら大量購入し、他の町に転売しようという輩がいるようなのだ。安く大量に卸すとそういう奴らが増えかねない。」


「わかりました。それと他の薬草も入手してもらえますか? 例えば毒消し草とか。」


「了解した。明日、ギルドに依頼してみるよ。それと癒し草採取の依頼のおかげで初級冒険者が生活できるようになったと感謝していたぞ。」


「それは良かったです。」


「それにしてもお前と話をしているとお前が6歳だってことを忘れてしまうよ。」


まあ、精神年齢は父さんよりも上だし。

6歳になった俺は鑑定の熟練度が上がり、さらに詳細が見れるようになった。

それに伴って自身のステータス表示も変わった。


*ステータス

 名前: アトム・ハリス

 称号: ハリス男爵家長男、ハーフエルフ

 職業: 錬金術師

 性別: 男

 年齢: 5→6歳

 レベル: 1→5


 HP: 100→180

 MP: 200→450

 STR: 5→20

 INT: 150→300

 DEF: 8→30

 AGI: 10→35

 DEX: 120→250

 Luck: 100


 スキル

  錬成、錬金ボックス、鑑定、分解、合成、抽出、付与、リスト


 魔法スキル

  生活魔法:ファイア(種火)、ウォーター(飲料水)、ウィンド(送風)、

       ライト(光源)、クリーン(浄化)

    

 ユニークスキル

  異世界言語、全魔法適性、導く者ナビゲーションシステム


どうやら生産職の俺は魔物を狩らなくても生産することで経験値を得てレベルアップするらしい。

それにしても最近脳内で和訳しなくなったなと思っていたんだよね。

こっちの言葉に慣れたのだと思っていたが、スキルのおかげだったらしい。

おそらくだが、神の祝福を受けた時だろう。

それといつもお世話になっている天の声さんは導く者(ナビゲーションシステム)というスキルだったらしい。

ちょっと待て! 全魔法適性ってかなりチートだよね?

これって転生特典だよね?!

神様! 俺って使命を忘れているってことは無いですか?

いきなり天罰を与えるとか止めてくださいよ?

今度教会に行きますから降臨して説明してください。

精一杯頑張りますので命だけはお願いします!

もっとこの世界を楽しみたいので。


話しは変わるが、うちの愚姉のエミリンが張り切り過ぎた父さんにドン引き。

さらに木剣での素振りばかりの日々に飽き、3日で鍛錬をやらなくなった。

庭で木剣を持ち、エミリンが出てくるのをずっと待っている父さんの背中がとても寂しそうだった。


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