第3話 町の散策
教会を後にした。
父さんの提案で町を散策することになった。
どうやらエミリンの装備を購入し、早速修練を開始したい考えのようだ。
エミリンは、飽きっぽいし気分屋だから大変そうだ。
俺は町で見たものを片っ端から鑑定している。
今までスキルに縁のない生活をしていたので楽しくて仕方ないのだ。
魔法を使えないのが残念だが。
「よし、武器屋に入るぞ。まずは剣からだ。エミリンおいで。」
「ん? 私はあっちのお菓子屋さんが良い!」
「それは後で行くからまずは剣だ。」
「お菓子買ってくれるなら良いよ。」
「わかった、わかった。」
母さんが別行動するかと提案してくれたが、俺もこの世界の武器に興味があったので一緒に武器屋に入ることにした。
「やあ、ガンツ。この子に剣を見繕ってくれ。」
「オイオイ。そんな子供に剣を持たせる気か? 正気なのか?」
だよね。5歳児に刃のある剣を持たせる親は頭がおかしい。
「何を言っているんだ。この子はバトルマスターなんだぞ。今から鍛えるのは当然だろ。」
「バトルマスターか。それは凄いな。しかし、剣はさすがに早いだろ。木剣にしとけ。」
包丁よりもちょっと長めの木の短刀をエミリンに渡した。
全く興味なしのエミリンだった。
俺は近くにあった鉄の剣を鑑定してみた。
*鑑定
名称: 鉄の剣
ランク: F
特徴: 一般冒険者が最初に購入する剣。量産品。価格3,000G。
不純物が多く脆い。ガンツ作。
作製: 鍛冶師が鉄を熱して鍛えた。鉄のインゴットが必要。
多分だが、錬成で作れそうな気がする。
材料は父さんにおねだりして、気が向いたら父さんとエミリンの武器を作ってあげようと思う。
「父さん。鉄のインゴットが欲しいです。錬成の練習がしたいので。」
「そうなのか? 鉄は重いから運ぶのが大変だぞ。どのぐらい欲しいんだ?」
「とりあえず、50kgお願いします。」
「え? 50kgは持てないだろ。店主に配達を頼むか。」
「いや、僕にはスキルがあるので大丈夫です。アイテムボックスに入れますので。」
「何だって?! アトムには驚かされてばかりだな。まさかアイテムボックスまで獲得していたなんて。」
アイテムボックスは亜空間倉庫に物の出し入れを行うことができるスキルだ。
基本的に容量制限はあるし、時間経過があるので劣化もする。
俺の錬金ボックスが異常なのだ。
錬金ボックスというと説明が面倒なのでアイテムボックスと説明した。
アイテムボックスならレアスキルではあるが所持しているものがいる。
店員が50kgの鉄の塊を準備してくれたので収納した。
目の前から鉄の塊が一瞬で消え、店員たちも驚いていた。
その後、剣以外の槍や斧、弓等の他の武器も手あたり次第鑑定した。
ミスリルの武器もあったが、オリハルコン等のレア金属の武器はなかった。
ミスリルの武器は非常に高価で材料であってもおねだりできるレベルではないだろうと判断し諦めた。
武器屋の後は防具屋だった。
ここでも同じように手あたり次第鑑定した。
狩りに行くわけでもないのでエミリンにはまだ早いと防具屋では何も買わなかった。
次は俺のリクエストで道具屋に行くことになった。
まだ菓子を買って貰えていないエミリンは不満顔だ。
しかし、俺はポーションを見たい(鑑定したい)のだ。
気が向いたら美味しいお菓子を作ってやるから今は我慢してくれ愚姉よ。
それに俺がポーションで儲けたら店ごと買ってやるぜ。
「すいません。ポーションを見せてください。」
「おやおや。坊ちゃんはポーションを知っているのね。でも、ポーションは高価だから落として割っちゃったら大変よ。」
「店主よ。その子は俺の息子なんだ。ポーションが気になっているらしくてな。すまないが見せてやってくれ。もし壊してしまったら俺が弁償する。」
「これはこれは領主様。分かりました。少々お待ちください。」
店主が奥からポーションの瓶を抱え戻ってきた。
早速鑑定っと。
*鑑定
名称: 初級HP回復ポーション
ランク: D
特徴: 軽微なキズやケガを治す。病気は治らない。HP+50回復する。
ダンジョン産アイテム。価格100,000G。
作製: 癒し草を魔力水で煮出し、さらに魔力を込める。
ちなみは通貨は下記のようになっている。
1鉄貨=1G
1銅貨=100鉄貨=100G
1銀貨=10銅貨=1,000G
1金貨=10銀貨=10,000G
1白金貨=100金貨=1,000,000G(100万)
1虹金貨=100白金貨=100,000,000G(10億)
大体、日本円に換算すると1Gが1円ぐらいと思われる。
なので、初級HP回復ポーション1本が10万円もするのだ。
「ありがとうございます。ちなみに等級の高いポーションはありますか?」
「ごめんね。今はそれ1本しか在庫が無いんだ。最近入荷が無くてね。」
「買取価格はいくらなんですか?」
「9金貨だよ。坊ちゃんも大きくなってダンジョンで拾ったら売りにきておくれ。」
これで作り方も売る場所も確保できた。
問題は材料の入手だ。
「父さん。癒し草はどこで入手できますか?」
「森に行けばいくらでも生えているぞ。あれはすり潰して傷口に塗り付けると治りが早いんだ。って、まさか! 癒し草がポーションの材料なのか?!」
「父さん、声が大きいです。確かにそうですが。」
「今度森に狩りに行ったときに採取してこよう。他に必要な材料はあるのか?」
「魔力水が必要なようなのですが、心当たりがありますか?」
「魔力を含む水ってことなら、私のウォーターボールかサラの生活魔法のウォーターで代用できるんじゃないかしら?」
「なるほど。試す価値はありそうですね。」
材料の目処は立った。
後は試行錯誤のみだ。
材料費はほぼゼロだが、子供の俺では自力で入手することは難しい。
そこは親に頼ろう。
さらに生活魔法も覚えたいので魔法の取得条件も調べようと思う。
その後、道具屋にある他の薬品や魔道具等も鑑定した。
ポーションを入れるガラスの小瓶も10本購入し店を出た。
ケガやキズの治療は教会所属の治療院で雇われている回復師が魔法で治す。
しかも、法外な値段でだ。
だから一般的には薬師が作った傷薬を塗って治すのだ。
時間(日数)はかかるが、自然治癒を待つよりかは治りが早い。
値段もお手頃だ。
冒険者は、狩り場でケガして戦えなくなれば魔物に襲われる未来しかなく死を待つしかない。
そのため、難しい狩りに行く時には回復師を雇うか即効性のある高価なポーションを準備するのだ。
確実に需要はある。
その後、エミリンのお菓子を買い、さらに冒険者ギルドでFランク冒険者が納品した癒し草を分けてもらって家に帰った。
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