第2話 神の祝福
朝食後、身支度を整え馬車で教会へ向かった。
前世を含めて初めて馬車に乗ったよ。
なんか興奮する。
俺よりもさらに興奮している幼女がいるが。
「スーザンお母様。あの建物は何ですか?」
「あれは冒険者ギルドよ。」
なんだって!
冒険者ギルドが存在するのか。
「母さんも冒険者登録をされているのですか?」
「そうね。私も若いころは冒険者をしていたのよ。冒険者にはランクがあってね。Fから始まって最高はSランクなの。Sランクは、過去に勇者様に与えられたらしいわ。ちなみに私はBランクだったのよ。すごいでしょ?」
「凄いですね。ちなみに父さんは?」
聞いてほしそうにこっちをチラチラみているので仕方なく聞いてあげた。
「俺は、Aランクだ。今でも週に1度は近くの森でゴブリンを狩っているんだぞ。」
滅茶苦茶ドヤ顔だ。
確かに一般人ではAは最高ランクになるわけだしな。
面倒なので聞き流すことにした。
父さんは満足したようなので母さんに話を戻す。
スーザン母さんは、水と風の2属性の魔法が使えるそうだ。
但し、攻撃魔法以外使えないらしく、それで母さんが魔法を使っているところを今まで観たことが無かった。
ちなみに魔法には火、風、水、土、光、闇、それ以外の無属性の7つの基本属性が存在する。
さらにで水と風で氷、光と闇で雷の複合魔法も存在するらしい。
但し、氷、雷が覚醒する条件は分かっていない。
残念ながら母さんは氷属性が覚醒しなかったそうだ。
熟練度やレベル等が関係しているのかもしれない。
「アトムは希望の職業があるのかい?」
「魔法職が希望です。」
「!! 私の息子ですもの。きっと私の魔法スキルを引き継いで魔法使いになれるわよ。」
「いや、アトムは俺の血を引いて剣士になるに決まっている。」
「何を言っているのかしら?!」
なぜか両親が喧嘩しそうな雰囲気に。
そんな空気をぶち壊す幼女エミリン。
「私はお菓子屋さんになるの!」
両親は苦笑いするしかない。
エミリンよ。毎日お菓子が食べれると思っているのだろう。
現実は、生活のために売らなきゃならんのだから大変なんだぞ。
「お姉ちゃんだからアトムにもちょっとだけ食べさせてあげるんだからね!」
ちょっとかよ!!
ちなみにエミリンの大好きなお菓子は、小麦粉を練って焼いたビスケットぽいものに果実のジャムを乗せただけのものだ。
きっとチョコレートやシュークリームなんか食べたら驚くんだろうな。
そんな話をしているうちに町はずれにある教会に辿り着いた。
「久しいな、神父よ。今日は息子と娘の5歳のお礼参りに訪れた。よろしく頼むぞ。」
「これはこれは領主様。お久しぶりでございます。お子様の5歳のお迎えを心よりお祝い申し上げます。」
「ああ、ありがとう。アトム、エミリン。神に祈りを捧げるのだ。」
「では、お嬢様からどうぞ。」
エミリンが前世での記憶にあるマリア像に似た神様の像の前に跪いた。
この世界の神は女神様のようだ。
「お菓子屋さんになれますように!」
エミリンが光った。
「身体が光ることなど今まで無かったのですが・・・。神のご加護でしょうか・・・。」
神父が涙を流し祈り出した。
「ん? バトルマスター??」
「なんだって?! エミリンは上級職か! その中でも最高の物理攻撃職のバトルマスター。す、すごいぞ!」
父さんが滅茶苦茶興奮している。
バトルマスターは、全ての武器、防具を装備し扱うことができ、さらに素手でも戦えるという物理特化の上級職だ。
当の本人は全く興味なし。
お菓子屋さんじゃなかったことのショックの方が大きいようだ。
「エミリン。身体が光っていたけど、大丈夫かい?」
「そうなの? 全然平気よ。それより早くお祈りしてきなさい、アトム。」
俺の順番になったので女神像の前で跪き祈った。
周囲から悲鳴が聞こえた気がしたが気にしない。
おそらくエミリンよりも光ったのだろう。
『初期化中・・・。しばらくお待ちください。・・・。初期化終了。職業及びスキルをインストールします。』
え? 初期化? インストール?
『インストールが完了しました。ステータスを調整します。』
『ステータスの調整完了しました。以降、ステータスオープンと唱えるとステータスを確認できるようになりました。』
ほう。そうなんだ。じゃあ、早速。
「ステータスオープン!」
*ステータス
名前: アトム・ハリス
称号: ハリス男爵家長男
職業: 錬金術師
性別: 男
年齢: 5歳
レベル: 1
HP: 100(Hit Point、生命ポイント)
MP: 200(Magic Point、魔法ポイント)
STR: 5(Strength、物理攻撃力)
INT: 150(Intelligence、魔法攻撃力)
DEF: 8(Defense、防御力)
AGI: 10(Agility、素早さ)
DEX: 120(Dexterity、器用さ)
Luck: 100(運)
スキル
錬成、錬金ボックス、鑑定、分解、合成、抽出、付与、リスト
「やったー!! 錬金術師だ!」
やったぞ!
超当たり職の錬金術師じゃないか。
前世でアニメやそれ系の小説で観たことがある。
それにしても魔法関係と器用さの数値が異常に高いな。
ちなみに一般人の初期ステータス値の平均は10程度なのだ。
錬成: 錬金ボックス内のアイテムを使用し、新たなものを錬成する。
生物は錬成できない。
錬金ボックス: 亜空間倉庫。容量無制限/時間経過・劣化無し。
生きているものは入らない。
鑑定: アイテムの詳細を確認できる。構成物質、作成方法がわかる。
分解: アイテムを材料レベルに分解できる。魔物の解体も可。
合成: アイテムとアイテムを合成することができる。
抽出: 必要な成分のみを抽出することができる。
付与: アイテムにスキルを付与できる。
リスト: 錬成したものをリスト化し、次回MP消費を抑え時間短縮可能にする。
鑑定結果をリスト化する。
どうやら俺は錬金窯に材料を入れて錬成するのではなく、亜空間倉庫内(錬金ボックス)で錬成することができるようだ。
エミリンは戦闘職だが、俺は生産職になった。
我に返って周囲を確認すると微妙な雰囲気になっていた。
「神父よ。錬金術師とは何だ?」
「聞いたことがございません。」
「じゃあ、ハズレ職なのか?」
「さあ? 分かりかねます。」
「あなた! 何てことを言うの! アトムちゃん、気にしないでね。どんな職業でも私たちの息子であることは変わらないのだからね。」
「そうだぞ、アトム。気にするな。」
「アトムのことはお姉ちゃんが守ってあげるから大丈夫!」
えっと。慰めモード?
「父さん、母さん。それにエミリン。錬金術師は超当たり職ですよ?」
「アトムには錬金術師が何なのか分かるのか?」
「もちろんです。ちなみにですが、ポーションは錬金術師が居ないとなるとどの職業の人が作製しているのですか?」
「ん? アトムはなぜポーションを知っているのだ? まあ、それは置いておいて、ポーションは稀にダンジョンの宝箱から出現するものだ。だから、入手した者が売りに出すことは少なく非常に高価なものとなっている。」
「そうですか。錬金術師はそのポーションを作製することができます。」
「なんだって! これは大変なことになるぞ。」
やっと錬金術師の素晴らしさを理解してくれたようだ。
それにポーションだけでも大金持ちになれそう予感がする。
後で分かったのだが、俺は世界で唯一の錬金術師だったようだ。
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