世界で唯一の錬金術師 ~家族と領民のために自重はゴミ箱に捨てました~

蒼い空

第1章 転生、幼少期

第1話 転生?

たぶん、俺って転生者なんだと思うんだ。

身体は赤ちゃんだけど、しっかり意識はあるし前世の記憶もある。

周囲を目だけでぐるりと見渡すと両親と思われる人物がいた。

父親らしき男性は、赤髪で超濃い顔していた。

母親らしき女性は、緑髪で耳が尖った超美人さんだ。

うちの母さんって、もしかしてエルフじゃね?

ということは、俺はハーフエルフってこと?

そして、極めつけは俺の世話をしてくれている猫耳の獣人さんだ。


絶対にここは日本じゃないよね?!

ていうか、地球でもない!

転生バンザイ!

退屈な人生よ、さよなら。


でもさ、定番の神様に会ってチートスキルを授かったりっていうイベントが全く無かったんだ。

少なくとも勇者では無いよね?

使命とか知らんし。


今の状況だが、俺はおそらく生後数か月の赤ちゃんだろう。

もちろん、話せないし、寝返りすらできない。

首もまだ座っていない感じだ。

おそらく、猫耳獣人さんはメイドさんかな。

メイドさんを雇うことができるということは我が家はそれなりに裕福なんだろうな。

俺の母さんは超美人だ。

大切なので2度言ってみた。

できれば母さんの母乳を希望したいのだが、そのイベントは無いようだ。

うちの母さんはここだけの話だが、ぺったんこさんでロリっこなのだ。

だから乳の出が悪かったのかもしれない。

その代わり猫耳さんから乳をもらっているのだ。

メイドさんじゃなく乳母なのかもしれない。

それにしても周囲の人が話している言葉が全く理解できない。

神様、翻訳スキルをプリーズ!

父さんがニヤニヤしながら話しかけてくるのがウザい。

そんなに顔を近づけないでくれよ、あんた臭いんだよ。。。

とにかく顔が暑苦しい。

母さん、こんな男のどこが良かったんだよ。


そんな感じで2年が過ぎた。

やっとだが、言葉を理解できるようになった。

しかし、俺の脳内では日本語が母国語になってしまっているので、いちいち和訳してしまう癖が抜けず困っている。

そう、英語習い始めたばかりの中学生の気分だ。

俺にとっては外国語なんだから仕方無い。

おかげで言葉をしゃべるのが遅れてしまい、さらに変な言葉(日本語)をたまに話すので両親に大変心配されてしまった。

やっと言葉が理解できるようになったことで家庭環境が分かってきた。

父さんは小さいながらも領地を任された男爵らしい。

ということは貴族制度があるようだ。

よって、兄弟のいない俺は男爵家の長男ということになる。

父の名は、カイザー・ハリス。

母は、スーザン・ハリス。

猫耳の母さんは、サラ。

そして、俺はアトム・ハリス。


どうやら俺には幼馴染の女の子がいたようだ。

猫耳サラ母さんの娘だ。

名はエミリン。もちろん、猫耳だ。

俺よりも1か月早く産まれている。

別の部屋で寝かされていたので気付かなかった。

最初、父さんがメイドさんに無理やり・・・。

で、できちゃったのかと思ったがどうやら違うらしい。

娘が産まれてすぐに未亡人になってしまって途方に暮れていたサラ母さんを父さんが俺の乳母になることを条件に助けたらしい。

とりあえず、俺たちは異母兄弟では無かったので安心した。

それからは双子の兄弟のように分け隔てなく育てられた。

もちろん、貴族と平民の子の差など関係無い。


さらに3年が過ぎた。


「ねえ、アトム。お姉ちゃんが遊んであげるわ。」


1カ月だが早く産まれているため、やたらと姉を強調しあがるエミリン。

そんなお年頃なのだろう。可愛い奴め。

精神年齢が45歳(前世の記憶)の俺は、幼女の戯言など気にしない。


ここで俺の前世について話しておこう。

俺は、出世に縁の無かった万年平社員のサラリーマンだった。

両親は早く他界し、嫁も子もいない。

何の刺激もなく、毎日家と会社を行き来するだけの人生だった。

ファンタジー系RPG(ロールプレイングゲーム)や異世界転生もののアニメ、小説で現実逃避していた。

そんな40歳の夏に突然の病に襲われた。

原因不明の難病らしく、治療法も見つからない。

日々弱っていくばかりだ。

そして、発病から一週間目の朝に目覚めること無く人生を終えた。

病気で亡くなっただけで特にパッとしたことが無い人生だった。

先に話したが、その後転生イベントは無かった。




「アトム。今日は教会に行くぞ。エミリンも一緒だ。朝ご飯を食べたら出かける準備をしなさい。」


寝ぐせだらけの父さんだ。


「ねえ、アトム。外に出るのは初めてね。楽しみだわ。」


俺たちは危ないからと庭の先にある門から外へ出たことが無かった。

エミリンが分かりやすくソワソワしだした。


「母さん。教会に何しに行くの?」


「話して無かったわね。5歳になったら神様にお礼を伝えに行くのよ。」


この世界は、5歳の誕生日をむかえることのできない子供がそれなりに存在する。

栄養状態や衛生状態に問題があるからだ。

前世の記憶と照らし合わせると定番の中世ぐらいのレベルだ。

さらにエルフや獣人さんのいるこの世界はもちろん、剣と魔法のファンタジー世界だ。

魔物もおり、親が魔物に襲われ孤児となる子も多い。

エミリンの父も魔物と戦い、命を失った。

また農業も遅れており環境の影響を受け、度々飢饉に襲われる。

一番驚いたのはトイレ事情だ。

桶に用を足し、裏庭に穴を掘って捨てるのだ。

伝染病が蔓延する危険性が高い。

現代日本の記憶がある俺には耐えがたい。

話を戻そう。



「その時にスキルや職業を授かるのよ。」と母。


ずっと気になってたんだ。

幾らステータスオープンと言ってもステータスが見れないし、魔法も使えなかったから。

俺は転生者だからステータスが無いのかと心配だった。

こんな事は誰にも相談できないし、この歳になるまでずっとモヤモヤしていた。


「ちなみに母さんは魔法使いよ。父さんは剣士ね。」


「サラ母さんは?」


「メイドよ。」


やっぱりメイドだったのか。

俺は、折角魔法の使える世界に生まれ変われたのだから魔法職になりたい。

母さんの話では遺伝もあるらしく、魔法使いの子は魔法使いになる確率が高いらしい。


「準備できたわ!」


居ないなと思っていたらいつの間にかに着替えてきたエミリン。

朝ご飯の時に余所行きの服を汚すなよ。


「エミリンは随分気が早いわね。お出かけはご飯の後よ。」


スーザン母さんが微笑みながらエミリンに話しかける。

そこへサラ母さんが登場。


「エミリン! 汚すから着替えなさい!」


怒られた。

エミリンは半ベソ状態だ。


「だって、アトムが早く出かけたいっていうから。。。」


おい! 俺を巻き込むな。

そんなこと言ってないだろ。

猫耳幼女め!

嘘がバレ、さらに怒られたエミリンだった。


サラ母さんはお留守番。

朝食の後、両親とエミリンの4人で教会へ向かった。


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