第42話 幼馴染と彼女と初体験

「これおもろ」


2人がトイレに行って20分ほどが経過した。

水族館の時も思ったが、女子のトイレ長くないか? まぁそこは事情があるだろうし詮索はしないが。


待ってる間、ずっと鹿野のおすすめのエロゲーを進めていたのだが……これがまた面白い。

一話一話、エピソードが他の作品と違い短く、サクサクと進められる。かといって内容が薄いわけでもない。


エロシーンも凝っていて、その他の会話も面白い。

これは鹿野がおすすめするわけだ。

次のチャプターに進もうとする俺だが、


「たのも~!」


と、勢いよく扉が開いた。


「うおっ、どうした鹿野」


「たのもたのも~!」


右手を腰に当て、左手には何やら目隠しを持っている。


「え、なにそれ」


手に持っている目隠しを指差しながら言うと、


「今から南くんにサプライズをしたいと思います!」


「さ、サプライズ?」


「そう! 南くんがあっと驚くようなサプライズを用意したので楽しみにしててくださ~い!」


「事前に言ったらサプライズにならないんじゃないか?」


事前報告されたらあっと驚けないんじゃないか? 相当なサプライズじゃないと俺は驚ける自信がない。なにせ俳優じゃないんだからな。


「……理屈はいいからさっさと目隠しする!」


一瞬考えて、過ちに気付いた鹿野はそれを隠すかのように俺に目隠しを投げてくる。

サプライズってなんなんだよ。別に俺は誕生日じゃないし、特に記念日でもない。

もしやエロゲー会開催記念日……とかか?


鹿野の事だからありえる。

不信感を覚えながらも、俺は強引に渡された目隠しをする。

ヤバい……視界が消えるとなんか不安だ。


鹿野が何をしているか分からないからな。元々行動が謎なところがあるのに尚更だ。

目が見えない代わりに耳を研ぎ澄ませる。

部屋の扉が開く音が聞こえ、綺海らしき足音が部屋の中に入って来る。

そして、ガサガサと音がし、ベッドが少し軋む。


だが、その軋みもすぐに消え、刹那鹿野と綺海の会話が微かに聞こえる。


『ちょっ、まだ心の準備が――』


『大丈夫だってぇ――もう南くんはスタンバイさせたから』


『で、でもぉぉ――』


『漢気見せなよぉ』


『私は女だっての――』


なにやらケンカをしているらしい。例のサプライズの件についてだろうか。

話を聞くに、綺海が俺に何かをするという事は考察出来る。

綺海のやつ……俺に何をするつもりだ。


しばらくそのまま待っていると、またベッドが軋み、何かが目の前に接近しているような気がする。


モノか人かは分からないが、結構大き目な物体が間近に迫っていることが分かる。


「さ~て!準備が整いましたよぉぉぉぉ~!」


静かに待っていると、鹿野の陽気な声が聞こえる。


「目隠し外していいのか?」


「はい! どうぞ外しちゃってください!」


「はいよ~」


言われたままに、俺は目隠しを外す。

隙間から明りが見えた刹那、俺はゴクリと生唾を飲む。

俺の瞳に写るは、黒のレースベビードールにガーターベルト。絹のように白い体のラインが目立ち、エロチックなランジェリーに身を包み、トロンとした目をこちらに向けてくる綺海の姿があった。


「なっ……」


その姿を見た俺は、赤面しながら声を漏らす。

いい意味でインパクトの強い光景に、啞然としている俺の手を握り、


「ねぇ……南……シよ……?」

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