第40話 2人になった……

「どう? この調子だったら南くん襲えそう?」


 トイレに行くという態で私と鹿野ちゃんはリビングにて会議をしていた。

 もちろん、議題はどうしたら南を襲えるか……というか南に襲わせるかだ。


 それにしても南……なんで私と似てるヒロインがいるエロゲーしても無表情なわけぇぇぇぇぇ⁉ おかしいでしょ! こっちは必死で赤い顔を隠してるのに、あの澄ました顔はなに⁉ 舐めてるわけ⁉


 こっちは南をエッチな気持ちにさせるためにあのエロゲ―することを認めたのに、これじゃ全く意味ないじゃないぃぃぃぃ‼


「多分、南くん相当興奮してると思うよ?」


「……え?」


 悲しさと怒りがこみ上げてくる私とは違い、なにやら南を冷静に分析する鹿野ちゃん。


「それ、マジ?」


 予想外な事を聞いた私は、目をキリッとさせる。


「うん、幼馴染と彼女のエロゲ―を幼馴染と彼女の前で興奮しない方がおかしいって」


「……たしかに」


「あと、私はエロゲ―に夢中になってたけどチラチラ南の方見たら綺海ちゃんの事見てたりしたし」


「……これ、もしかして勝率ある?」


「大アリだね」


 南はムッツリスケベなの? ジロジロ見るならいっそのこと襲ってきてもらいたいものだ。

 でも、南の人の気持ちをちゃんと考えるところも私は好きなんだよね……だから悩ましい。


「鹿野ちゃん、なにか作戦あるの?」


「これと言ってないけど……あ! 綺海ちゃん最終手段持ってるって言ってたよね?」


「まぁ、あることにはあるけど」


 その最終手段と言うのは、るちから貰ったあのエロい下着。

 南がどうしても襲ってこないなら、私と鹿野ちゃんで攻めるしかない。


「でも、まだ使うのには早くない?」


 これから南が襲ってくる可能性だってある。

 使うのを渋る私に、鹿野ちゃんは顎に人差し指を当てながら、


「このままだと、いつもみたいに何も進展がないのは綺海ちゃんも分かるでしょ?」


 と、小首を傾げる。


「……そうだけど」


「私も南くん誘う用のエッチな下着あるからさ、2人で一緒に着て襲わない? その方が恥ずかしさも半分だよ?」


「鹿野ちゃんも、持ってるんだ……」


「もちろん! 綺海ちゃんのは大人な感じだけど、私のロリっぽいから違うエロさがあるんだよね~」


「詳しくは別に聞いてないんだけど……」


「それに……」


 鹿野ちゃんは私の耳元で囁く。


「私、綺海ちゃんのエッチな姿見たいし」


「んなっ………!」


 小悪魔に微笑む鹿野ちゃんに、私は赤くなった顔を向ける。


「南くんを襲うのは第一だけど、私、綺海ちゃんも襲いたいんだよね~」


「さ、させるか!」


「とりあえずは南くんをどうにかしなきゃ綺海ちゃんは襲えないから早く南をその気にさせよう!」


「……」


 私、気に掛ける人が2人になっちゃったよ………。南を襲うのも大変なのに、鹿野ちゃんから襲われるのも警戒しなきゃいけないなんて……


「でも、具体的にどうするの?」


 ハァっとため息を吐きながらも、私は鹿野ちゃんに聞く。

 南を襲うとなっても、手順が必要だ。やり方次第では、南をゾッコンにさせられる。


「それなら安心して? 私にいい案があるから」


「全然安心できないんだけど………」


 ドヤ顔でサムズアップする鹿野ちゃんに、私は疑いの視線を向けるのだった。




「なんで鹿野ちゃんは南を襲う予定なのに私まで襲おうとしてるわけぇぇぇぇ⁉ 私の負担が増えるだけなんですけどぉぉぉぉ⁉」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る