第38話 エロゲに夢中

 次に、北くんとその彼女に猪村(いのむら)とのエッチなシーンが流れはじめた。

 シチュエーションは、学校から帰ろうとしたら雨が降っており、傘を持っていなかった2人が走って、帰ろうとする。


 その時、猪村の家に立ち寄ると、「家、寄ってかない?」と北くんを止める。

 お互い冷えた体をあっためる為にお風呂に入り、部屋ってゆっくりとくつろぐ。

 北くんは、濡れた猪村の髪を見てドキッとしていると、こう言われる。


「そんなドキッとしてるなら、襲ってもいいのに」


 小さめだが、色気のある胸をチラッと見せながら言う猪村に、北くんは我慢できない。


「//北くんがっつきすぎだってぇぇ//」


「がっつかせたお前が悪いんだぞっ」


「やんっ// ダメっ//気持ちいぃぃっ//」


「そうそうここここ! この濡れた髪に興奮するとかめっちゃ分かる! なにこの激萌えシチュは!」


 興奮気味に声を上げるのは、打って変わって鹿野。

 プレイする綺海の隣で体を揺らしながら画面にくぎ付けになっている。


「えっっっっっろ……なにこのあざとい表情」


 ボソリと呟く綺海に、


「でしょ! この作品は特にヒロインの表情が可愛いの! エッチなシーンもそうだけど、日常とかにも力入れてて好きなんだよねぇ~。ほら! このイく瞬間とかヤバい!」


「こんなの誰でも堕ちるでしょ」


「分かる~、即堕ち確定だよね~」


「主人公もヒロインを邪魔しない形で目立ってるからいい」


「お~! 綺海ちゃん分かる~?」


「これでも何作品もエロゲーしてるからね」


「他の作品だと主人公が悪目立ちしてるのとかあって萎えちゃうんだよね~、ヒロインの邪魔すんな! って話」


「ものすごく分かる」


 ガールズトーク(エロ)で盛り上がっている。

 エロゲーって友情を産むんだな。制作会社もまさかJK2人がエロゲでこんなにも楽しそうに話してるなんて思ってないだろう。


「南くんも分かるでしょ! このエッチさ! 前やった時も言ったけど!」


 俺の服の袖を掴みながら、鹿野は輝く目を向けてくる。


「だよな~、やっぱ主人公がヒロインの邪魔をしないのは点数高いよな」


「やっぱ南くん分かってるぅ~!」


 鹿野と俺は、こうやってエロゲーをエッチな意味ではなく作品として楽しんでいる。

 何百という作品をプレイし、それぞれの作品の良さや悪さを自分たちに評価し合っている。


 ちなみにこの作品は上位10位に入る良作だ。

 もちろんエッチなシーンも見どころで、俺はそのシーン目当てでしているところもあるんだが、鹿野の前でそんな事は言えない。


 ガチ勢にシコる為だけにエロゲーやってるなんて言ったら去勢させられるかもしれないからな。

 最終場面に到達すると、最後は3Pのシーンに移り変わる。

 猪村とエリカたんに半ば襲われる形で行為が始まる。


 最初にエリカたんが羞恥に顔を染めながらも、北くんに言い寄り、そこから猪村も加勢する。

 なんて夢のようなシチュエーションなんだこれは。

 何度見てもそう思う。


 彼女と幼馴染に襲われるとか………

 と、俺は横を見るが、そこにいるのはエロゲに夢中な彼女と幼馴染。

 こいつらが俺を襲ってくるなんて到底思えない。


 綺海は17年間も告白してこない後ろ構えな性格なのでまずないし、鹿野はエロゲと普通のエッチは別物と考えてそうだ。

 かといって、俺も自分からなんていけない。チンコに脳を乗っ取られた人間にはなりたくないからな。


 そうゆう雰囲気になって自分からいくことは出来るだろうが、今この状況なら、2人から来なきゃなにも進展はしないだろう。





「エロゲ……こんな面白かったっけ……? 私達の関係と一致してるからか更にのめりこんじゃった……鹿野ちゃんと語れるよこの作品………でも私はエリカたんみたいに南を誘えるわけないんだよぉぉぉぉ! そこだけが私とエリカたんの決定的な違いだぁぁぁぁ!」


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