第36話 ただのエロゲ会

「今日はただのエロゲ会! ジュースとお菓子OK! エロゲもやりたいやつをピックアップしといたから大丈夫! さぁ~! パーティーの始まりだぁぁぁぁ!」


 週末、鹿野の部屋にて、鹿野はテンション高く立ち上がりながらコントローラーを持ち上げる。


「今日は最高の日になりそうだな」


「……そう、だね」


 その様子を、俺たちは小さく笑いながら見ていた。

 先日、綺海にから聞いた真実。鹿野はちゃんと俺の事が好きで、別になにも企んでいないと。


 綺海が聞いたなら嘘はないだろう。もし鹿野が嘘を吐いていたなら綺海は容赦なく胸ぐらをつかみ問いただすだろうからな。


「最初はなにする~? 軽めに純愛もの? それとも最初から寝取られぶっこんじゃう~?」


 パッケージを見比べながら唸る鹿野。


「最初は落ち着いたのがいいかな~。飛ばし過ぎると綺海が付いてこれないし、後々大変なことになりそう」


「だよね~、なら最初はこれにしよーっと」


 と、鹿野はパッケージからディスクを取り出すと、ゲーム機の中に入れる。


「何するんだろ」


 綺海は机に置いてあるパッケージを取る。


「ん~、純愛だから結構シンプルなや――つじゃない……」


「な……っ! 全然純粋じゃない!」


「どした~?」


 絶叫する俺達を横目に、ホーム画面を操作しながら鹿野は言う。


「これのどこが純愛なのよ! それも何か親近感が凄い!」


「そうかな~? これ純愛の方だと思うんだけど?」


「なら感性がヤバい!」


 指摘するエロゲーのタイトル「幼馴染と彼女との三角関係」。サブタイトルには「幼馴染と彼女が居繰り広げる純愛。どちらともに愛を注ぐ主人公は2人に搾り取られる毎日――」


 これのどこが純愛なのか、俺と綺海にはさっぱり分からない。

 どっからどう見ても三角関係のドロドロとした恋愛関係にしか見えない。


 それに親近感が凄い! なにこの俺達を描いたかのようなエロゲー! よりによっても幼馴染と彼女との内容とか当てはまりすぎてる!


 よく鹿野はこれを選んだものだ……感性が豊か過ぎないか? それかただ単に鈍感なだけか。


 まぁ、俺達はドロドロとした関係ではない。むしろ良好すぎる関係だ。

 お互い満場一致での三角関係ってものおかしな話だけど。


「とりあえすもうゲームスタートしちゃったしはじめようよ~」


 エピソードを進めながら言う鹿野に、


「ま、まぁこれはゲームだからな。別に俺達とは何も関係はないし」


「関係はないけど! けど! ヒロインに自分当てはめちゃうでしょ⁉」


「確かに感情移入しちゃうかもしれんけど……」


「ねぇ鹿野ちゃん! 他のにしない? 別に最初から過激なのでいいから他のにしようよ」


「えー、これゲームだしただ楽しむだけなら関係なくない? それに――――」


 と、鹿野は綺海に耳打ちする。

 すると、綺海の顔はみるみる赤くなり、次第にはコクリと頷き、


「これ……しよ」


 このエロゲーをしようとまで言ってきた。


 鹿野のやつ、綺海に何を言ったんだ? このゲームをするメリットでも言ったのか?

 前、幼馴染もののエロゲーした時夢中になってたから、このエロゲーしたらもっとのめり込んで盛り上がるとか言ったのだろうか。


 別に俺はゲームとして楽しめる……だろうからいいけど。

 少し気まずい事には変わりない。




「これでムード作ってそのまま南をエッチな気持ちにして押し倒せば流石に堕とせるとか言われたらするしかないでしょ! は、恥ずかしいけど……南をエッチな雰囲気にさせるためなら……するしかないよね……そのまま押し倒して行為が始まるってなったら……最高すぎるっっっっっ‼」

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