第35話 友達からの些細なプレゼント

「………な、なんか凄いことを聞いたわ」


 翌日、私は急遽るちを呼び出し、かくかくしかじか私と鹿野と南の関係の事についてすべて話した。

 三角関係のことから、南の鈍感のせいで誤解が生まれたことまで包み隠さず。

 話している間、るちの口は開いたまま閉じることなく、飲もうとしたジュースも口から垂れ流しの状態であった。


「南が鈍感のせいでこんなことになった……どう思う?」


 机にうつ伏せながら私はるちに聞く。


「どう思うって、南は多分性欲ないんじゃない?」


「男子高校生が性欲ないって……普通なくない?」


「だったら南がアブノーマルなだけかもね」


 性欲がない……確かにあり得る話だ。だからエロゲをしてもただ作品として楽しむだけでやましい事をしないのか?

 でも男子高生なんて性欲の権化みたいなものじゃないのか? ないなんてことはないはず。


「性欲がないなんてことはないと思うんだけど……だってエロゲー好きだし、チラッとだけど私の胸見る時があったりするし」


「んー、ならただの拗らせ鈍感なのかもね」


「だよね~」


「だから、鹿野ちゃんは一緒に南を襲おうと提案してきたってわけね」


「……うん」


 マグカップをスプーンで混ぜながら言うるち。


「まぁ、襲う事はほぼ確定してるんだったらさ、南と絶対に堕とす方法を考えた方が最適案じゃない? 下手に襲ってもいつもの二の舞になりそうだし、恥ずかしがってたら自分も南も恥ずかしくなるだけだからさ」


「そうなのかな~。でもいい案思いつかないし」


「んなの簡単だよ。あんたエロゲーの知識あるならそれを活かしなさいよ」


「……また難しいことを」


 エロゲーなんてものはただの娯楽でしかない。現実とはまた別物だ。

 ほら、よくAVの知識をそのまま本番でしようとして失敗するみたいな感じ。

 もし私がエロゲヒロインみたいに上目遣いで谷間をちらつかせながら「シよ?」と南を誘ったとしても、どうせ南は真顔で「ゲームか? いいぜ」とか言ってくるんだろうな。


「それか、真っ向勝負を仕掛けるしかないね」


「どんな勝負よ」


「そんなの決まってるでしょっ」


「ちょっ! いきなり何すんのよっ//!」


 と、対面に居るるちは体を乗り出すと、私の胸を揉んでくる。


「これを使わなきゃ意味ないっての~」


「使っても南は全然びくともしないから言ってるんだって!」


「それは見せ方とかアピールの仕方が悪いんじゃ?」


「もっと攻めろと?」


「そうだよ! こんなの使わなきゃ損でしょ~」


「るち触りすぎッ//」


「ほらこんな感度もいいのに~」


 私の胸を揉みしだくるちに、


「そろそろ怒るよ」


 漏らしそうな声を我慢しながらギロりと睨みつける。

 もっと露出をしろという事か……だとしたら下着姿になるか全裸しか方法がない。

 どちらかを選べと言われたら、下着だけど……恥ずかし過ぎる!

 いくら鹿野ちゃんが隣で下着になったとしても羞恥で死ねる!


 でも、それくらいしないと南が堕ちてくれないって思うと……頑張るしかないな。


「とりあえず、これ使いな」


 るちは、バッグの中から無地の紙袋を取り出す。


「なにこれ」


「それは内緒。家帰ってから開けてね」


「……怪しい」


 不快な笑みを浮かべるるちに、私はジト目を向けるのであった。




 自宅にて

「なっ……! ななななにこれ⁉ ただのエッチな下着じゃん! それも黒いスケスケのやつ! これを着て南を堕とせっての⁉ るち何考えてるわけ……これを友達に着させようとするとか……るちもただのド変態かもしれない……それに「着たら自撮り送ってね」とか丁寧に手紙まで添えてあるし……今度あったらもっとエッチなやつるちに着させてやる」


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