第33話 鈍感が原因

「よ、よかったぁぁぁ~」


 その言葉を聞いて、安堵のため息を吐く私。


「何~? そんなに疑ってたわけ~」


 クスクスと笑いながら言う鹿野ちゃん。


「色々辻褄が合ったから、疑いざる負えないというか~……」


「そうなの?」


「だって南くんによると、私の方が鹿野ちゃんデレデレしてるみたいだし、友達みたいな感覚って言ってたから」


「そうなの⁉」


「うん」


 目を見開く鹿野ちゃんに頷く。


「え? そうじゃないの?」


 キョトンとする私に、


「南くん、やっぱ鈍感だよ……」


 と、額を抑えながらため息を吐く。

 確かに、南は鈍感だけど、そこまで重度ではないと思う……いや重度だな。それも結構、ものすごく、救いようがないくらいに……。


「鈍感だけど、それがどうかしたの?」


「いや~、私綺海ちゃん以上に南くんに色々してるんだけど、多分されてる事に気付いてない」


「そ……それはなんとも……」


「色々してるのに、南くん全然襲ってこないんだよ⁉」


 赤くなった頬をプクリと膨らませながら言う。


「襲ってこないって……」


「胸元開けた服とか着たり、胸押し付けても南くん私に欲情しないんだもん!」


 それは胸がないからなのでは? と思ったのは内緒にしておこう。


「もっと、グイグイ行ったらいいんじゃない?」


「行ったとしても絶対南くん襲ってこないから! 南くん鈍感だもん! 綺海ちゃんだって分かってるでしょ⁉」


「ま、まぁ……」


「幼馴染であれだけ仲がいいのに綺海ちゃんに告白しないし、ベッドに潜りこんだって襲ってこなかったんでしょ⁉」


「な……っ⁉ なんでそれを知ってるわけ⁉」


 しれっと口から出て来たけど、なんで私が南のベッドに潜り込んだの知ってるわけ⁉ どっからその情報が漏れ出た⁉


「南くんから聞いたの!」


 南ぃぃぃぃぃ‼ なんでそうゆう事を人にバラスんだよ! アソコ切り落とすぞ! ……いや、そうしたら色々問題があるからやめておこ……


「南くんはこう……もっとガッッてくればいいのに、一歩引いてるのか知らないけど漢気がないんだよね!」


「分かる!」


「私たちは襲われ待ちしてるのに、全然来ないからこっちの気分も下がるよね!」


「超分かる! ……私は襲われ待ちはしてないけど……(実際ちょっとしてるけど)」


「もっと南くんは積極的になってもいいと思うの!」


「んねんね!」


 南の話になって意気投合する私達。

 さっきまでの緊張感がどこかに消え去ったような会話だ。


「だからさ、この件については南くんが鈍感だって話なんだよ!」


 フンスと鼻を鳴らす鹿野ちゃん。


「だね……なんかごめん、南が……」


 南が鈍感だから誤解が生まれ、結構大きな問題になった。・

 要するに、すべて鈍感な南が悪い。


 そうだよ! 昔っから鈍感なのが悪いんだよ! 鹿野ちゃんのアピールに気付いてればこんな事態にはならなったんだよ⁉ それに私にも告白してきて今頃には幸せに恋人生活してるかもしれないんだよ⁉


 全く、この鈍感幼馴染がっ! 心配して損したわ!


「ま、ホントに誤解が解けて良かったよ~! ギスギスしてるのは嫌だからさぁ」


「だよね~、私もみんなと仲良くしたいもん」


「もうこんなことにならないように私達で南くんの鈍感を直さない?」


 ピシっと人差し指を立てて提案する鹿野ちゃん。


「直すってどうやって?」


「そりゃ~もちろん………エッチな攻撃してだよ!」





「全部南せい全部南のせい全部南せい…………グルル………ホント心配して損した…………あの鈍感は本当に迷惑……メリットもなにもない……南……今度土下座でもしてもらおうかな」

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