第31話 幼馴染の彼女との会話

「綺海ちゃん~、今日はどうしたの~?」


 翌日、真相を確かめる為、放課後に私は鹿野ちゃんを駅チカのカフェに呼び出した。

 鹿野ちゃんが南と付き合ったのは、私と付き合うため。

 これが本当なら、私は覚悟を決めなければならない。


「今日は綺海ちゃんから誘って来てくれて嬉しいなぁ~」


 今から重大な話をするとは露知らない鹿野ちゃんは、相変わらずのほほんとした笑顔を浮かべている。


「今日はね、大事な話があって鹿野ちゃんを呼んだの」


 注文していたホットコーヒーを一口飲むと、改まった顔で言う。


「大事な話? なにかあるの?」


「うん、これからの事に関わることだから」


 南を傷つけない為にも、そして私と鹿野ちゃんの為にもはっきりしなきゃいけない。


「もしかして、婚約とかの話? だったら嬉しいなぁ~」


「な、なわけないでしょ!」


「嘘、どうせ私が南くんと付き合ったのが綺海ちゃんと付き合うためだった的な話でしょ?」


 フーフーとマグカップに息を吹き込みなががら落ち着いた様子で言う鹿野ちゃん。


「な、なんで分かったの」


 冗談を言ってから、急に目の色が変わる鹿野ちゃんに、私は不信感を覚える。

 もしかして、私達全部鹿野ちゃんの手駒にされてた⁉ だとしたら凄い腹黒い女子だな鹿野ちゃん。

 手際がいい。尊敬できるくらいの手際の良さだ。


「綺海ちゃんが深刻そうな話って言ったらそれくらいしかなくない?」


「いつから気づいてたわけ……?」


「うーん、私と綺海ちゃんが付き合いだしてから、南くんの対応がよそよそしくなったからそうなのかな~って」


「そ、そうなんだ………」


 南の鹿野ちゃんへの対応が変わったから気付いたのか。


「それで、綺海ちゃんはどうなの? 私が本当に綺海ちゃんと付き合う為に南くんと恋人になったと思ってるの?」


 頬杖を付きながら、にこやかにこちらを見てくる鹿野ちゃん。そこにはどこか威圧感がある。


「まぁ……南から聞いたし、南より私と居た方が鹿野ちゃん楽しそうだって私も思った所があるからさ」


「その事について南くんはなんて?」


「私達が傷つかなければなんでもいいって表面は言ってたけど、やっぱみんなで円満に過ごしたいとも言ってた。それに、鹿野ちゃんの事が本当なら少し考えるって」


「やっぱ南くんは優しいね、ホントに」


「で! 鹿野ちゃんはどうなの? 本当に私と付き合う為に南と付き合ったわけ⁉」


 テーブルに前のめりになり、私は鹿野ちゃんの顔に近づく。

 本当は、鹿野ちゃんから「そうだよ」なんて聞きたくない。


 でも、どこか心の中で鹿野ちゃんと南が別れて独占できる嬉しさもある。

 そう思ってたら私も結構罪な女なのでは⁉ 普通に私も性格悪いじゃん!


 いやいや、この件が本当だったとしたら鹿野ちゃんの方がよっぽど罪深い女だけど……そう判断するには鹿野ちゃんからの言葉を聞かなければいけない。

 ジーっと鹿野ちゃんを見つめる私に、


「私がそんな事すると思う?」


 優しい目でそう答えてくる。


「……分からない。でも、してないって信じたい」


「なら、安心していいよ」


「……え?」


「私が南くんと付き合ったのは、南くんの事が大好きだから。綺海ちゃんと付き合ったのは、綺海ちゃんが南くんと幸せになって欲しいからだよ。まぁ、私が綺海ちゃんを好きっていう理由もあるけどさ」


 はにかみながら言う鹿野ちゃんに、私の瞳孔は光る。

 鹿野ちゃん、嘘ついてない。心の底から言っている。


 まっすぐと私を見た鹿野ちゃんの目。透き通っていて、南の事を好きという事がちゃんと伝わってくる。

 このちょっと鈍感な私でも分かるんだ。嘘では絶対にない。





「よ、よかったぁぁぁぁぁぁ……鹿野ちゃんが「うん」とか言い出したら私どんな反応すれないいか分からなかったもん………とりあえず、今から色々話を聞いて誤解やら南の事について話そう……今度こそちゃんと仲良くならないと………でも南を取り合うライバルという事実には変わりないけどね!」


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