第30話 南の意見を聞きたいの

「私と付き合う為に南くんと付き合うって、そんなことありえるわけ?」


 俺の手を掴むと、綺海はグンと顔を寄せてくる。


「あり得る話だと思うぞ?」


「理由がなにかあるの?」


「上げるとするなら、俺といる時もずっと綺海の話してるし、エロゲも百合ばっかやってる記憶がある。あとは、俺と綺海が幼馴染って聞いた時のがっつきがすごかった」


「……そう……なんだ」


 鹿野と付き合う前、放課後に話してる時に綺海と俺が幼馴染だってことを話したら質問攻めされたからな。そこから綺海と仲良くなりたいとか俺に頻繁に言うようになったし。


 その後から、俺に告白してきたからな。

 辻褄は合っている。


「もし、鹿野ちゃんの事が本当だったら南くんはどうするの?」


「うーん、振られたら振られたでおしまいかな。それは鹿野が決めることだけど」


「私との関係は? 鹿野ちゃんは私にもっとグイグイくるだろうし、私と南はどうしたらいいの?」


「それも、綺海が決めることだ」


「違う」


 と、綺海は俺の頬を手で挟むと、ムスッとした顔を浮かべる。


「私は南の意見を聞きたいの」


「俺の意見……か」


「昔っから、南は自分の事言わないで全部相手に合わせちゃうじゃん。お人よしすぎなの!」


「まぁ、俺は綺海とか鹿野がいいならそれでいいかなーって」


「それがダメって言ってるの!」


 少し声を張る綺海。

 どうであれ、俺は他人をあまり傷つけたくはない。仲が人が悲しんでいるのは見たくない。それだったら、自分は置いておいてみんなが幸せになる方がよっぽどいい。

 本当にお人よしかもしれないな。


「それで? 南はどうなの?」


 俺の顔をがっちりとホールドして、逃がさないようにする綺海。

 これはちゃんと話さなきゃ逃がしてくれなそうだ。


「俺は、別れ話をされたなら鹿野とは別れるつもりではいる。でも、綺海とは一緒がいい。幼馴染とかどうこうもあるけど、恋人として」


「っ……そ、そうなんだ」


「あと、欲を言うなら鹿野と綺海もそうなったら別れて欲しいかもしれない」


 鹿野と俺が別れたとして、鹿野と綺海は付き合ってるわけだし、俺と綺海も付き合ってる。

 そうすると、どちらかが関係を切るのは必然的だ。


「私は、鹿野ちゃんとは友達だけど、可愛いとは思うけど私全然好きってわけではないし。そうなったら別れるよ私」


 真面目な顔をして、俺の手をぎゅっと握る。

 まだ、鹿野の件に関しては確定情報ではない。あくまでの話。

 だから、その真相を確かめるにも、


「綺海、今度鹿野に聞いてみてくれないか? 俺の事と綺海のこと」





「鹿野ちゃん、もし南を糧に私と付き合ったならブチ切れしたる……私と付き合いたいなら真っ正面から来いっつうの! 南を駒に使うな! なにか理由があってそうなったなら考えるけど……ただの下心だけだったらエロゲー出来ない体にしたる!」


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