第29話 すきぃ~
三角関係が始まってから1週間程経過し、これまでとは何も変わらない生活が…………送れる訳もなく、
「ねぇねぇ、南~。すきぃ~」
綺海は別人かの様にベタベタと俺に寄り添っていた。
もう付き合ってるからいいのかもしれないが、俺が困惑する。
だって、これまで幼馴染で脈ナシかと思われてた相手にベタベタとされてるんだぞ⁉
動揺しないわけがない。
それに、綺海だったらもっと落ち着いた恋愛をするかと思ったら、
「もっとぎゅーして?」
このように愛情表現を欲しがる甘えん坊へと豹変した。
それに、今いるのは俺の部屋。
綺海が幼馴染のままであったら、そこまで意識することもないだろうが今は恋人同士。
ナニかがあるかもしれないと思ってしまう。
「なぁ綺海」
「ん、なに?」
俺の腰に抱きついている綺海に、俺は聞く。
「綺海って、もっとクールというかそんなにデレデレじゃなかったよな」
多分、性格が変わらないままだったら、赤面して口数も少なくなり、手を繋ぐのまで時間がかかりそうだ。
頭を撫でる俺に、綺海は上目遣いで、
「だってさぁ~? 17年も我慢してたんだよ? このくらい……してもいいでしょ?」
と、小首を傾げる。
していいですぅ! てかもっと甘えて来て下さいぃぃ!
鹿野とは違った甘え方だし、これは一生されても飽きない。
それに、鹿野では感じられない柔らかが感じられる。
俺の腰に当てられるたわわな胸。なんだこの幸せなふんわり感。
もちろん、鹿野のも柔らかくて小ぶりなのが可愛いけど、満足感が桁違い。
プラスで、これまで見せなかった綺海の表情が相まって…………マジで好きだ。
「でも、なんか鹿野ちゃんに申し訳ない気持ちがあるんだよね」
「そうなのか?」
「うん、横取りしたみたいになってるじゃん? 今だってこうやって2人でいるわけだし」
「前も2人で登下校してたし遊んでたから変わりないんじゃないか?」
「前はでしょ? 今は付き合ってるんだし、鹿野ちゃんは心配じゃないのかなーって」
遠い目をしながら綺海は言う。
確かに、鹿野の気持ちを考えると少し申し訳なく思えるな。
元々、俺は鹿野と付き合ってたわけだし、後から来た綺海と一緒にいたら嫉妬するかもしれない。
「まー、多分大丈夫だと思うぞ」
綺海の頬を突く。
「なんで?」
「だってさ、鹿野は俺達の関係に許可出してるし、それに……綺海と鹿野は毎日のように放課後どっか行ってるやん?」
鹿野と綺海は、放課後にゲーセンやらカフェやらに行って、2人きりの時間を過ごした後、日替わりで俺と会っている。
付き合ってから、毎日こんな感じだ。
「しかも、鹿野は俺より綺海のこと好きそうだしな」
「それってどうゆうこと?」
「素直に言えば、綺海と付き合う為に、俺と付き合ったってことかな」
そんな感じがする。
関係が変わってから思ったが、鹿野と俺との間にある友達みたいな感覚というのは多分それが原因だと思う。
もし、それが事実だとしたならば、俺はどうすればいいのか自分でも分からない。
なにせ、俺は鹿野の事が好きだからな。友達みたいな感覚とはいえ、好意があることには変わりない。
「え……………鹿野ちゃんが南くんと付き合ったのは私と付き合うため…………噓でしょ…………でもそれが真実だとしたら、私の大好きな南を全部私の物にするしかない! それから鹿野ちゃんをエロゲーの世界から抜け出させなくしたる!」
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