第24話 ちょっと休憩

 そんな事を考えながらも、俺は問題集にシャーペンを走らせる。

 テスト範囲の所を重点的に、応用のところまでをこなしていく。

 隣で勉強している鹿野は、苦しそうな表情をしながらも一生懸命に取り組んでいた。

 綺海は、自分の課題をしながらも、俺達の問題をちょこちょこ見ながら間違っている個所を指摘してくる。


「綺海ちゃん教え方上手~! この問題出来ちゃったよ~」


 手をパチンと叩くと、綺海をキラキラとした目で見る鹿野。


「別に、そんな事ないと思うけど」


「ううん! さっきまで分からなかったのに綺海ちゃんの説明聞いたらすぐ出来ちゃったもん!」


「ならよかった」


 褒められて嬉しそうな綺海は、鹿野から少し顔を背ける。


「ホント、こいつ教えるの上手いんだよなー、中学の時からそうだけど」


「そうなの?」


「だって、毎回定期テストの時勉強見てもらってたし、そのおかげで赤点回避どころが平均点以上取れたしな」


「ほへぇ~、すごいね~」


 綺海は、その人が出来ない部分を把握して、そこを分かるように説明するのが上手い。

 どうしてここができないのか、どうやったらここが出来るようになるのかを順々に説明してくるから分かりやすいのだ。


「綺海ちゃん、がっこ~の先生とか向いてるんじゃないの~?」


 問題を解きながらも、鹿野はチラリと綺海の方を見ながら言う。


「わ……私が?」


「そうそう~。教えるの上手だし優しいから絶対に向いてると思うんだよねぇ~」


 自分の事を指差しながら小首を傾げる綺海。


「自信ないからなー。あと私、一応将来の夢あるし」


「え⁉ 綺海ちゃん何かなりたいものがあるの⁉」


 グンと顔を寄せる鹿野。


「ま、まぁね……あんまり、というか絶対に人には言いたくないけど」


 綺海が将来の夢を持っていることに関しては、俺も知っている。けど、その内容の件については小学校の頃から一度たりとも話してくれない。

 それほど言いずらいことなのだろうか?


「そうなんだ~、なら詮索はしないでおくよ~」


 ニコッと微笑む鹿野は、問題集をパタンと閉じる。


「もう勉強はおしまいか?」


 まだ課題の終わっていない俺は、手元と鹿野をを交互に見る。


「まだおしまいってわけじゃないよ~、でも疲れたからさ~息抜きしない?」


「まだ30分くらいしかやってないんだけど?」


 横から苦笑いを浮かべる綺海。


「適度な休憩は必要だよ?」


「普通は1時間とか2時間に一回の休憩が適度だと思うんだけど」


「それは頭が良い人の考えだよ~、私と南くんみたいな人はそんなに集中力が続かないの!」


 目を瞑りながらプクりと頬を膨らませる。


「俺もこれ以上数式とにらめっこしてたら気が狂いそう」


 勉強してると逆にもっとバカになりそうだ。


「じゃぁ、とりあえず5分休憩ね。それからまた数学するから」


 ハァとため息を吐く綺海に、


「5分あるなら早速出来るね」


 と、コントローラーを持たせる。


「え、なにこれ」


「コントローラーに決まってるじゃん」


「5分でなんのゲームが出来るって言うのよ」


「もちろん―――」


 鹿野は棚からとある作品を取り出すと、綺海に向けて言う。


「エロゲー!」





「えぇぇぇぇぇぇ⁉ 5分でエロゲーするつもりなの鹿野ちゃん! しかも勉強の息抜きでエロゲとか信じられないんだけど⁉ 南も隣にいるし……恥ずかしい……」

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