第21話 3人で!?

「お待たせ~南くん」


「お、おまたせぇ~」


 2人がトイレに行ってから約20分後、手を振りながら帰って来た。

 元気な鹿野とは違い、綺海はどこかよそよそしい。

 ずっと俯いてるし、手ももじもじとさせている。鹿野と何かあったのだろうか。


「トイレ混んでたのか?」


 ベンチに座っていた俺の横に座る2人に聞く。


「そうなの~、結構前に人居てさぁ~」


「そりゃーしょうがないな」


 公共施設に行くと、大体女子トイレに列ができているもんな。水族館ならなおさら混んでいそうだ。


「にしても、なんでお前は元気ないんだ?」


「え? いやなんもないけど」


 声を掛けると、綺海は体をビクッとさせながら反応する。


「その反応なにかあったただろ」


「何もないって言ってんじゃん」


「俺を騙せるとでも思うのか?」


「……別に、南には関係……ない事だから」


 頬を赤らめ、体をもじもじとさせる。

 俺に関係ない事の割には様子がおかしい。トイレに行っている間に鹿野と何かあったのだろうか。にしては鹿野はいつもと変わりないよな。

 喧嘩でもしたなら鹿野は感情が表に出るから不機嫌なはずだし。


「お前もしや、もらし―――」


「てない! あんた何考えてるの⁉」


 予想が外れてしまった。両足を擦り合わせていたからまさかと思ったけど、勘違いだったようだ。


「デリカシーなさすぎじゃない⁉ 普通女子に聞く事じゃないから!」


 と、ポコポコと俺の肩を叩いてくる綺海。

 うん。平常運転に戻ったな。この程度で戻るんだったら大丈夫そうだ。


「あ、そうだぁ~。南くんと綺海ちゃん来週暇ぁ~?」


 俺達の顔を交互に見ながら鹿野は言う。


「暇だぞー」


「私も、予定はないよ」


「ならさ、私の家で勉強会&エロゲ会しようよ!」


「おーいいな」


「え、エロゲ会⁉」


「うんうん~、綺海ちゃんもエロゲーするって南くんから聞いたから勉強会ついでにちょうどいいかなーって」


 そうえば、定期テストが2週間後にあるんだった。勉強する息抜きでエロゲーするのはいい案かもしれない。


「3人でエロゲープレイするってこと?」


 オドオドとした綺海は、目を回す。


「メインは勉強だって~。エロゲはちょっとしかしないよ~」


「別に俺と一緒にプレイした時だって1時間くらいで終わっただろ」


「そ、そうだけどー……」


 幼馴染の彼女と一緒にエロゲーをするのは流石にハードルが高すぎるか。

 でも、同じ趣味同士仲良くなってちょうどいい気もする。

 鹿野の家にも行ってみたいしな。


「んじゃぁ来週の放課後、決定でいい?」


「……南、どうする?」


「全然いいぞ~、勉強教えてもらいたかったしちょうどいい」


「な、なら私も行くよ」


「ホントぉ~! なら決定だ!」


 と、鹿野はベンチから立ち上がりガッツポーズをする。

 勉強メインじゃなくて、ただのエロゲーをするだけになるかもしれないが、それはそれで楽しそうだ。


「そろそろ移動するか、俺カピバラ見たいし」


 俺も、鹿野に続いて立ち上がる。


「ほら! 綺海ちゃんも行くよ!」


「え、ちょ!」


 鹿野は綺海の手を取ると、引っ張りながら歩き出す。

 この2人、いつの間に仲良くなったんだ? なんか距離感が一気に縮まった気もする。


 連れションのパワーなのか、水族館のパワーなのかは分からないが、2人の仲が深まったならいい事だ。

 それより、来週鹿野の家行くの楽しみだな。部屋中にエロゲーの箱めちゃくちゃ置いてそう。




「鹿野ちゃんの家でエロゲー会⁉ ……私どんな顔してプレイすればいいのぉぉぉ! 隣には好きな人、その隣には私の事を好きな幼馴染の彼女……居心地悪すぎるんだがぁぁぁぁああ⁉」



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