第13話 幼馴染の恋バナ
「ホントなの~? 意外だなぁ~綺海ちゃん」
ほへぇ~と口を開けながら綺海を見つめる。
「……別に彼氏なんて必要ないし」
「そ~? いたら毎日幸せだと思うんだけどな~」
と、鹿野は俺の腕に抱きつき、
「こうやってギューとかすると幸せだな~っ感じると思うんだけどなぁ」
「――ぁ――ぁ――ぁ」
「どうしたの?」
「いやなんでもないよ」
俺達を見ながら、あんぐりと口を開ける綺海に鹿野は小首を傾げる。
いきなり目の前でイチャつかれたらその反応になるのも無理はない。
俺だって、綺海が目の前で男子とイチャイチャしたら唖然とするだろう。
「まぁ、綺海ならすぐ出来るんじゃないか」
「南まで何を言い出すんだよ……」
「いや、だって要らないとかいいつつ、前自分の事可愛いとか言って欲しそうだったし、やっぱりそうゆう事を言ってくれる人を探してるんじゃないか? それにモテるんだからその気になればすぐ出来るって」
「だから、私は自分で決めた人としか付き合いたくないの」
頬を膨らませてそっぽを向く綺海。
待てよ、その言い方だったら……
「綺海ちゃん好きな人いるの⁉」
綺海の手を掴みながら、鹿野は興奮気味に言う。
彼氏は出来たことないが、好きな人どうのこうのって言うのはちょくちょく聞くことがある。中学生の時は結構頻繁に聞いていたが、高校に入ったから全然耳にしてこなかった。
もういないと思っていたが、
「い、いないよ~」
と、吹けない口笛を吹きながら綺海は目を逸らす。
反応を見る限りいるらしい。
「俺も知らなかったなー、中学までは居たことは知ってるけど、高校でも出来たのか」
「だからいないって言ってるでしょ⁉」
「昔っから分かりやすいんだよお前は。そんな反応してバレないとでも思ってんのか?」
「わ、私に好きな人がいたらなんだってんのよ~」
言い逃れ出来ないと察したのか、口をすぼめながらも認める綺海。
「またイジれるから面白いなーって」
「人の恋路をネタにするんじゃない!」
「やっぱ綺海ちゃんも乙女なんだね~。好きな人の話で赤くなっちゃって!」
「別に赤くなってないし!」
「なってるじゃ~ん」
「うん、なってるな」
昔も、好きな人の話をしてる綺海は毎回赤面してる気がする。いちいち目を見て真剣に話をしてきては、恥ずかしそうに体をもじもじとさせる。
まさに乙女だ。
「ま、まぁ? 南と鹿野ちゃんには関係ない事だし? 私の問題だから気にしなくてもいいから! それより私るちに呼ばれてるから行かないとそれじゃあね!」
早口になりがらお弁当を片付け、るちがいる方へ戻る。
何をそんな焦ってるんだ? 恋バナくらい普通にするタイプだろあいつ。
鹿野がいるから恥ずかしいのか? あまり親しくない女子に恋バナを聞かれるのは恥ずかしものなのか。それにバラされたらという心配もあるのだろう。
「ふ~ん、綺海ちゃんそうなのかぁ~」
「ん、どうした?」
「ううん? なんでもないよ~」
なにやら、綺海の後ろ姿を見てニヤニヤとする鹿野。
鹿野と綺海、仲良くなれると良いのだが。なんか見てるとライバルというか敵視しているような気がする。
俺の気のせいだといいのだけど。
にしても、女子は恋バナ好きだよな。鹿野があそこまで綺海にグイグイ行くとは思わなかった。元々口達者な性格だけど、今日の食いつきは凄かった。
それに、最後のあの笑み……なんか引っ掛かる。
「んにゃぁ~~‼‼ 好きな人の話を好きな人の前でするか⁉ 中学の頃は私の好意に気付いて欲しかったから積極的に話してたけど、今は状況が違う……南には鹿野ちゃんがいるし……話せるわけないじゃん! それにバレたら友情が決裂するかもしれない! だって彼女持ちの事が好きなんだよ⁉ 諦められないし、初恋を十何年引きずってる重い女だって思われるって……とりあえず……水族館かんばろ」
「綺海……頑張ってるわね」
席に戻ったや否や、綺海が漏らす愚痴を、るちはコーヒーを飲みながら聞くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます