第11話 水族館はどう⁉
「鹿野ちゃん、どこに行くか決めてるの?」
紙パックのジュースを飲みながら、綺海は鹿野に聞く。
「そうだなぁ~。私は一個決まってるんだけど、逆にいい案ある?」
「俺はどこでもいいぞ? 2人に任せる」
「私はプールとか行きたいかな(更衣室で鹿野ちゃんと2人きりになれるし)」
「プール! いいねそれ!」
綺海の提案に、鹿野は目を光らせる。
「でしょ!(それに、胸を武器に出来る絶好のチャンスだ)」
「プールか、そしたら水着買わないとな」
最後にプールに行ったのは2~3年前だ。水着を新調しないとピチピチのスクール水着で行くことになる。
鹿野は、綺海をじっと見つめると、
「プール、やっぱやめない?」
「ん、なんでだ?」
「ほら、私泳げないし……」
「あー確かにそうだな」
そういえば、前泳げないって話してたな。それも重度の金槌らしい。
「え~残念(今、絶対私の胸見て言ったな。このボインに勝てないって分かったからプールから逃げたのか。貧乳可哀想だなぁ~)」
綺海も納得したようだが、どこか表情に裏がありそうだ。笑顔なのに、心が笑っていないような気がする。
「あ、そうだ! 水族館はどう⁉」
ハッと閃いた鹿野は、前のめりになりながら言う。
「水族館いいな」
「いいねぇ~、水族館(デートスポットじゃねーか)」
「なら水族館決定だぁ~!」
「水族館なんて久しぶりだな~。前行ったのは―――綺海とだ」
「中三の時に行ったね~、懐かし」
確か、クリスマス前にリア充ムカつくとか言い出し恋人のフリして、水族館に行った。
手も繋いでみたし、2人で写真も撮った。だがしかし、周りは案の定イチャイチャをひけらかす本物のリア充ばかり。
その後どこか観光でもして帰ろうかとしたか、萎えてどこにも行かずにすぐに帰ったけどな。
てか、今考えるとなんで恋人のフリなんでしたんだ? 受験勉強でおかしくなっていたのだろうか……自分でも分からん。」
「え~、なんかそれってデートみたいだね!」
「でで、デート⁉」
パァっとした笑顔で言う鹿野に、言葉を詰まらせながら綺海は赤面する。
「そうだよ~、だっていくら幼馴染とはいえ水族館に男女2人で行くのはデートだよ~」
「言われてみれば、デートみたいだな」
本物のリア充に対抗心を燃やして恋人のフリして行ったし。
「み、南まで何言ってんの⁉」
「よく考えたらデートじゃん。そもそも恋人のフリして行ってたんだし」
「そうなの~。だったらもう完璧デートだし、周りからも絶対カップルだって思われてたって~!」
「んんな訳ないし! 私と南は幼馴染だから! 一生友達だから恋愛とかそうゆうのには……ななならないから!」
と、目を回すながら言う綺海。
なんか行動と言動が合ってないような気がするな。友達とか言ってる割には意識してるみたいに動揺してるような気がする。
それとも、当時の事を思い出して恥ずかしくなってるだけなのか? いや俺もよくよく考えたら恥ずかしいな。
好きだった人と水族館デート。それに手まで繋いで写真まで撮った。なのに、告白もせず俺は帰宅した。まぁ成功するわけないし、雰囲気に流されないで良かったと思う。
「んまぁ、過去の話だ。それで? いつ水族館行くんだ?」
これ以上話をしていると、綺海が走ってどこかへ行ってしまいそうな気がしたので逸れた話題を戻す。
綺海のやつ、いつも俺と付き合うとか、デートとか冗談を言っても笑って流してたのに、ここ最近反応がおかしい。まさか俺の事を……? でもそしたら言動が真逆だ。今も幼馴染で一生友達とか言ってるし。
それに、綺海は彼女持ちに手を出そうとするビッチではない。
これまで彼氏ができたことないし、経験もないだろう。裏でシてる……とかはないはずだ。
もしそうだとしたら、下ネタ話をした時も赤面するわけがない。
俺に好意があるとしたら、もっとアピールしてくるはずだ。それがないという事は、ただの幼馴染と思ってるという事で確定だろう。
「なんで南はあんな恥ずかしい話をしちゃうのぉぉぉぉぉ‼‼ え⁉ は⁉ ちょ! ほんとに思い出しただけで死にたくなるんだけどぉぉ⁉ 私が喜んで南とデートしててニヤケ顔で写真撮ってたことバレてないよね大丈夫だよね⁉ もしバレてたとしても時効だよね! ……にしても鹿野ちゃん……よく水族館みたいな悪魔的場所を選んだわね。……腹黒いのかしら……」
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