第10話 お昼休みの3人
「み~なみ! 今日は一緒にご飯食べよ~」
時は昼休みまで経過した。
いつもなら朱音と食べるところなのだが、今日は鹿野がお尻をフリフリとさせながら誘ってきた。
前の方の席にいた朱音も、俺達の方を見るとキリッとした顔でサムズアップをしてくる。
なんて分かりいい友人なんだ。いい友をもったよ本当に。
「私の席の方で食べよ~」
俺の手を引っ張りながら自席へと移動する鹿野。
「ご飯誘ってくるなんて久しぶりだな、いつもお互い友達と食べてるのに」
席に座ると、菓子パンの袋を開けながら言う。
「今日は色々話したいことがあったんだ~」
鹿野もお弁当箱を開けると、卵焼きを一口食べる。
「話したい事?」
「そうそう~! でも、話をするにはもう一人必要なんだぁ~」
と、鹿野はゆっくりと後ろの方を向く。
その目線の先には窓際で友達をご飯を食べている綺海の姿。
「綺海も必要と?」
「うん! だから幼馴染の南くん! 呼んできてもらっていい? 私あのグループあんま好きじゃなくて……」
「でしょうね……全然系統違うし」
「馬が合わないって言うのかな?」
「知ってるから安心しろ」
「南くん私の事全部分かってくれるから好き~」
頬杖を付きながら、目をハートにする。
可愛すぎるだろ。反則だその表情だ。……って惚気ている場合ではない。綺海をこっちに呼ばなければ。
後ろを振り向き綺海の方を向くと、ちょうどこちらを見ていた綺海と目が合う。
なんか凄い眼圧を感じるが、アイコンタクトをしてこちらに呼ぶ。
目だけで話が通じるのは幼馴染のテレパシーというやつだ。その証拠に、綺海は友達に一言断ると、お弁当を持ちながらこちらへとやって来た。
「どしたん?」
近くから椅子を持ってくると、俺の隣に座る。
「なんか鹿野がお前含めて3人で話したいことがあるってよ」
「そ、そうなんだ」
綺海な不審そうに、鹿野の事を見つめる。
そこまで警戒しなくていいだろ。何されるわけでもないんだから。
「んで、話ってなんなんだ?」
揃ったところで、俺は鹿野に聞く。
「話って言うのはね~、今度3人でどっか行こーっていうお誘い!」
「俺と鹿野と綺海でって事か?」
「うん!」
ニパァっと笑顔を浮かべる鹿野。だが対照的に、
「私、必要ある?」
引き攣った顔をする綺海。
「もちろん‼ 最初は南くんと2人でデートって考えてたんだけど、私綺海ちゃんともっと仲良くなりたいし、南くんと綺海ちゃん仲いいからちょうどいいかな~って」
「へ、へぇ~」
「南くんも、綺海ちゃんもいい?」
小首を傾げる鹿野に、
「俺は別にいいぞ」
「やったぁ~! 綺海ちゃんは?」
「私は別にいいけど、その……2人の邪魔しちゃわない?」
気まずそうな顔をする。
確かに、幼馴染のデートの間に入るような形は気まずいのも分かる。
どこか行っても、綺海と隙間が生まれそう。というか、俺と鹿野がイチャイチャしていたら、綺海はどんな顔していいか分からないだろう。
「全然! 今回はデートって言うよりも普通に遊びに行くって感じだから変な気を遣わないでもいいよ!」
「そ、そう……?」
「うん! 私、綺海ちゃんと遊んでみたかったの!」
「なら、一緒に行こうかな」
鹿野の笑顔につられて、綺海も少し口角が上がる。
デートについて行くという感じではなく、友達という感覚で行くならお互いやりやすいだろう。
それに、綺海と鹿野が仲良くなるのは嬉しい。よそよそしいよりは、楽しく会話して欲しいからな。
「なんで私を2人のデートに誘うわけぇぇえぇぇ⁉ 自慢でしょ! 絶対に自慢だからそれ! 「私と南ラブラブでしょ~」って言うのを私に見せつけたいだけでしょ! でも、鹿野ちゃんには色々南の事を聞きたいので、仲良くなって損はなさそう。普通にいい子だし。南と付き合ってること以外は……よし! こうなったら絶対仲良くなって南を略奪する方法を考えてやる!」
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