第8話 朝、布団の中には幼馴染が

「……おはよ、南」


 月曜日、ぐっすりと寝ていた俺は下半身に柔らかい重みを感じて目が覚めた。

 布団をめくると、そこに居たのは制服姿の綺海。


「……なんで俺の布団に居るんだ?」


 まだ眠い目を布団の中に向ける俺。


「なんでって、幼馴染としてお寝坊さんの南を起こしに来たからに決まってるじゃない」


「こんな急に?」


「来ちゃ悪いわけ?」


「別に? てか重いからどいてくれ」


「……分かった」


 不機嫌そうに、綺海は俺の上から降りる。

 なんだいきなり綺海の奴。これまで起こしに来た事なんてなかっただろ。それに布団にもぐり込んでくるなんて何を考えてるんだ。

 まるで幼馴染がいるラノベヒロイン見たいじゃんか。


「なーんだ、もっと驚いてくれてもよかったのに」


 椅子に座りながら、背伸びをしながら言う綺海。


「驚いたっての。起きたら目の前にお前がいるんだからな」


「だったらもっと表情に出して欲しかったんだけど?」


「………お前は何を望んでたんだよ」


 もっと甘い展開をお望みか? でも綺海がラブコメ展開を望んでるわけないか。

 だとしたらもっと早めに仕掛けてきているはずだ。俺に彼女が出来る前に。

 彼女が居る今、こんな事をするのは単純に俺をからかっているからだろう。


「どうでした? 幼馴染に起こされた感想は」


 クスクスと綺海は笑いながら聞いてくる。


「どうって、普通だが」


「ふ、普通⁉ もっとなんか感想ないわけ?」


「お前は何を聞きたいんだよ逆に」


「興奮したとか、襲いたくなったとか……かな?」


「はっ? 何言ってんだよお前」


「ほら、もし鹿野ちゃんにやられた時の予行練習的にさ、このシチュエーションで興奮しないのは良くないかなーって」


 顎に手を当てて考え込む。

 誰が幼馴染で興奮するか! ……と言いたいところだが、正直興奮した。

 平然を装っていたが、俺の息子は朝勃ちとダブルパンチでガチガチになってたからな。


 よく綺海にバレなかったよ。

 あのアングルは神がかってた。

 上目遣いに、その下にはワイシャツの隙間から見える谷間。破壊力が凄まじい。


 何を隠そう俺は大の巨乳好きだ。

 鹿野という可愛い彼女が居るのに、幼馴染を性的な目で見ていいのだろうか。


 男だからしょうがない。大きい胸には目が行ってしまう。それに、元好きな人だ。

 意識しない方が無理がある。


「鹿野との時は、その時場に応じて反応すればいいだろ」


 ベッドを整え、顔だけ綺海の方を向きながら言う。


「そう? 咄嗟にされたら南うろたえると思うんだけど」


「それりゃー驚くだろうが」


「か弱い男子は嫌われちゃうよ?」


「俺はそんなに女々しくないから安心しろ。あと、鹿野とはまだそうゆうのはないから」


「えー、でも鹿野ちゃんエロゲーのシーン再現したいとか言ってしてきそうじゃない?」


 確かに言ってきそうではある。


「ベッドに押し倒して、そのまま目隠しと手錠して犯して?」とか言ってきそう。

 まぁそんな事言われたら喜んで仰せのままにやるけど。

 まだ、言われることはなさそうだな。


「あのー、話後でいいかな? 俺着替えたいんだけど」


 制服に手を掛けると、部屋の外へ出るように促す。


「別に私は気にしないけど?」


 机にある小物をイジりながら、呑気に返事を返してくる。


「俺が気にするんだよ」


「えー、小さい事はよく一緒に着替えてたのに?」


「いつの話をしてるんだ」


「もー、南もいつの間に恥ずかしがり屋になっちゃったのか~」


「なら、今度お前が着替えてる時俺もその場に居てやるよ。それが嫌ならリビングで待ってろ」


「んな……!」


 俺の提案に、綺海は目を見開く。

 別に、俺は見られた所でどうって事ない。見られたって何にもならないからな。

 でも、見られるなら代償くらいあってもいいと思う。


 これなら、合法的にあの胸を拝めるし、綺海もここに居れる。

 彼女持ちがこんな発言していいか自分でも危うい所ではあるが、胸には勝てない。


「どうするんだ?」


 眉をひそめて言う俺に、


「で、出て行きます」


 と、綺海は顔を赤く染めながら俺の部屋を出て行った。



「なんで私に興奮しないんだぁぁぁぁぁぁ‼ 結構攻めたと思ったんだけどあれじゃまだ足りないのかぁぁ⁉ もしかして、私を異性として見てない⁉ だったらもう一巻のおしまいだぁぁぁああ! でも、ちょっと胸に視線あったから意識はしてくれたのかな………だったらいいんだけど……もう少し際どい所をいかなきゃダメなのかぁぁぁ⁉」


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