第7話 休日の過ごし方 ~綺海の場合~
さて、今日は私のターンだ。
南をどうやったら落とすのか。一人で考えるのは限界がある為今日は助っ人を用意した。
「綺海は行動が遅いから鹿野ちゃんに南取られたんだよ~」
白石るち(しらいしるち)。同じクラスの親しい女子。
三つ編みおさげにメガネがよく似合う美形女子。見た目はいわゆる陰キャなのに、男に困らない謎な友達だ。
「別に遅くないし、私は南とイイ感じだったんだけど」
「ちゃんと南くんとイイ感じだったらさ、南くんに彼女が出来るわけないよね?」
「……なんも言えません」
駅前のカフェにて、南をどう攻略するかを私たちは話していた。
身近に男に慣れている人がいるのはありがたい。それも、あらゆる男をたぶらかして経験値が高いので有力な話がいっぱい聞ける。
「南だって、絶対綺海の事好きだったって。でも、綺海が「友達~」とかみんなに言ってるから他の女に目移りしちゃったんだよ」
コーヒーを啜りながらるちは言う。
「南が私の事を好きだったと?」
「幼馴染でしょ? それに綺海可愛いし、好きにならないわけないでしょ」
「好きだったら普通アピールしてくるでしょ。南の事だから何かしら行動くらいしてくれてると思う」
「それは南くんも同じことを思ってるんじゃない? けど、南くんは綺海ならなにか行動に移してくれると思ってたけど、逆の行動をされた」
「じゃぁ、全部私のせい……ってこと?」
「そうゆうこと」
「何やってるんだ私ぃぃぃいぃぃ‼」
自分から南を突き放してたじゃん‼ マジで何やってるんだ私は‼ バカかバカなのか⁉
そうだよよく考えたら南が自分から動くわけないじゃん! だって私が照れ隠しというか南に好きだってバレたくないからわざと友達って本人にも周りにも言ってたんだから!
「もうおしまいだ……全部私のせいだ」
机にうつ伏せて傷心する私に、
「とは言っても、今からいくらでも巻き返せるよ?」
ニヤリと不快な笑みを浮かべる。
「どうやって」
「この陰キャみたいな容姿でモテまくってる私がそれを伝授してあげるのさ―」
「あんたがその恰好してるの、髪降ろして眼鏡取ったら今よりモテて大変だからでしょ?」
「そうそう! あと陰キャの格好して見たかったからさぁ~」
るちは格好はどう見てもBLが好きそうな腐女子陰キャなのだが、それは高校からだそうだ。
中学のるちは、正反対の陽キャ美少女。かなりモテたらしい。
高校で陰キャにジョブチェンジしたのは、ちやほやされるのに疲れたらしい。あとは本人も言ってた通り興味本位。
どれだけ見た目が変わってもにじみ出るイイ女感は消えない。仕草や表情も美少女そのものだ。
だから、その恰好でも異様にモテる。
「まぁ~、私の話を聞けば南なんてイチコロだってことよぉ~」
コーヒーカップから立ち上がる湯気で眼鏡を曇らせるるち。
ほら、こうゆう所に可愛さがにじみ出ている。
「なら早速教えてよ、南を落とす方法」
「んな簡単だよ~、あんたの武器を使うんだよぉ~」
「ひゃっ//ちょいきなり何するの」
唐突に、るちは私の胸を揉んでくる。
「こんなにいいの持ってるんだから使わないと損でしょ」
「だから揉むのやめてって……」
「感度も良いんだし、これを南に当てて意識させればいいだよ~」
揉む手を止めずに、るちは言う。
自分でも胸は武器だと自負している。同年代の女子よりは絶対に大きいし、形も柔らかさのピカイチ。確かに、これを南に押し付けたりラッキースケベで見せたりすればイチコロかもしれない。
しかし、南が貧乳好きな説もある。だって、鹿野ちゃんおっぱい小さいし……小柄で可愛い守りたくなる系……私と正反対だ……。
いやいやいや! ここで落ち込んでちゃダメだ! 自分の胸にもっと自信を持て!
この胸には無限の可能性がある!
「胸を使う以外で、私が南くんと落とすとしたら――――」
顎をさすりながら考えるるち。
「やっぱ幼馴染の特権を使う?」
「いや、寝取れ!」
「それを簡単に出来るのはるちだけだから気軽に言わないで」
細い目をする私。
NTRみたいな荒業が出来るのはるちだけだ。
男の経験が多いのも、巧みな話術で陽キャ、陰キャ、彼女持ちまですべての男子をたぶらかしてはすぐ捨てるを繰り返してるから。
私には到底無理な話。だって、一番近くにいる幼馴染にさえ告白できないで、さらに照れ隠しで友達とか南を離すような事言ってるんだから。
終わってるよ……私。
しかも寝取ったら鹿野ちゃんに恨まれること間違いなしだし、マジでどうしよう私ぃぃぃぃぃ‼ とりあえず胸は使うとしても南が貧乳好きだったらと考えると………いやぁぁぁぁぁぁぁそんな事考えたくもないぃぃぃいいいいい‼
その頃、鹿野は――――
「南くんとのデートどこ行こーかなぁ~? 水族館? 遊園地? まぁどこ行っても南くんと一緒なら楽しいよね! ……綺海ちゃん、誘うのもありかな。そっちの方が楽しそうだし南くんの事色々聞けそう! うん! そうしよう!」
呑気にデートプランを考えていた。
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