第6話 休日の過ごし方 ~南の場合~

 祝福の休日を迎えた。

 学校で疲れた体を癒す土日。学生に取っては短いが天国の時間。

 本当ならこの貴重な時間を使って鹿野とどこかへデートしたり、綺海とその他友達とどこかへ遊びにいったりするもありだが、


「おーい、ボーっとしてんじゃねーよ。ボール出てきてるぞ」


「…あ、ホントだ」


 相談も兼ねて、男友達とバッティングセンターに来ていた。

 後ろのネット越しから俺にヤジを飛ばしてくるのは坂倉朱音(さかくらしゅおん)。

 同じクラスで尚且つ男子の中で一番仲がいい。


 茶髪でイケメン、高身長。性格もよく女子から絶大な人気を誇る。

 そんな朱音は、俺の相談相手にうってつけってわけだ。


「ボーっとしてると彼女にもいつの間にかに逃げられるんじゃねーの」


「んなわけあるか。順調だっての」


「綺海もいるのに、お前は罪な男だぜ」


「あ?」


 ラスト一球を打ち終わると、振り返り眉をひそめる俺。

 打席から出ると、朱音の隣に座り聞く。


「なんで綺海が出てくるんだ?」


「何でって、幼馴染だからに決まってんだろ」


「幼馴染が彼女の話の時になんで出てくるんだよ」


「ハァ……お前それでも男か?」


 額に手を付きながらため息を吐く朱音。


「あのなー、綺海がお前に彼女が出来てなんとも思わないわけないだろ?」


「そりゃー、ビックリしてたよ。俺にあんな可愛い彼女が出来るとは思ってもなかったって」


「それは俺も同感だ」


「マジでひでーなお前ら」


 彼女くらい出来たっていいだろ高校生なんだから。それに可愛い彼女で良かっただろ。

 もし、ブサイクな女を彼女にでもしたら2人から非難の雨あられだ。


「それは一旦置いておいて、それ以外にも綺海なんか言ってただろ」


「というよりは、なんか鹿野と付き合ってるって報告した時から妙に言動とか行動がおかしくなったような気がする」


「それだよそれ!」


 机をバンと叩きながら、朱音は声を荒げる。

 なんで怒り気味なんだこいつ。腹減ってるのか?


「なんだよ」


「綺海明らかに動揺してんじゃねーか!」


 いや、動揺してる事は分かっている。俺に彼女が出来た事にと、その彼女が可愛い事に。

 言動は元々おかしい部分があったし、色々俺と鹿野に聞いてくるのは必然的だろう。


「……お前、綺海に報告する時、なんとも思わなかったのか?」


 スーっと深呼吸をすると、真面目な顔をして聞いてくる。


「まぁ、恥ずかしかったし、色々考えることはあるよな」


「綺海がお前の事を好きだったらとか?」


「いやそれはない」


 首を横に振りながら即答する。


「なんで言い切れるんだお前」


「だってあいつ、俺の事友達としか思ってないし」


「だからよ、なんで綺海がお前の事友達にしか思ってないって言い切れるんだって俺は聞いてるんだ」


「あいつ「一生友達ね!」が口癖だし、もし、あいつが俺の事を好きだったとしたら既にラブコメに発展はずだ」


 こっちに気があったとしても、俺にも周囲にも「友達」と言われると萎えてしまう。

 言われ続けているにも関わらず、俺は高校入って鹿野と関わるまでは綺海の事が好きであったし。


 綺海が俺の事好きだったらもう既に付き合ってるだろう。こんなに仲が良いんだ。良好に恋人を続けているに違いない。


「もし綺海が、お前の事を今でも好きだったらどうするんだ」


「だからそれはないって」


「例えばの話だ、少しくらい話に付き合え」


「綺海が俺を好きだった、か~。あいつに告られたら考えるかな」


「自分から告んないのかい」


「だって、自分の事を好きって確信した時以外告りたくなくね? 振られるの嫌だし」


「鹿野ちゃんはどうするんだ?」


「好きだよもちろん、可愛いし。………という事は三角関係になるしか?」


「……ダメだこれ、救えない……」


 ため息交じりに落胆する朱音。

 何を絶望してるんだ。たとえ話を真に受けてるのか?

 自分から言い出したくせに、相変わらず変な奴だ。




 一方その頃綺海はというと―――



「鹿野ちゃんと南をどうにかして別れさせなきゃ私の勝ち目はない……でも鹿野ちゃんと仲悪くはなりたくないけど南を私のものにしたい……やっぱ幼馴染という力を使って攻めるしかないのか……とりあえず、今日友達に色々聞いてみよ。あぁぁぁぁぁ早く南とエッチしたいイチャイチャしたい! 私の豊満なおっぱいで挟んであげたいぃぃぃぃ」


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