第5話 お互いに頑張ろうね?(初体験を)

「ちなみにさ……エッチな事はしたの?」


 教室に入り、席に着くや否や綺海は爆弾発言を投下してくる。


「え、エッチな事⁉」


「おいその質問はデリカシーなさすぎだろ……」


 綺海から発せられる言葉に、鹿野も俺も驚きを隠せなかった。


「そんなイチャイチャしてるとかって自慢されたら気になるでしょ……」


「そうは言っても、人に言うもんじゃないだろ」


 男友達だったら「昨日彼女と初エッチしたわ~」とか言っても祝福されて崇められるだけだが、異性の幼馴染に言うものではない。


「わ、私たち……エロゲはするけど、エッチな事はしてないよ……」


 体をもじもじとさせながら、恥ずかしそうに鹿野は答える。


「鹿野、言っちゃっていいのか?」


「べ別に、言ってどうこうなるわけでもないし、南くんと付き合ってて綺海ちゃんに変な迷惑かけるのは嫌だな~って」


「迷惑なんてかけてないだろ多分」


「南くんと綺海ちゃんは幼馴染じゃん? だからその、仲が凄く良いわけで、そんな人に彼女が出来たら色々心配なのかなーって」


 やはり心配するのか。とはいっても、鹿野と綺海は面識があるし、今だって普通に会話できているからそこまで心配はいらないとは思うが。


「え、っちな事はしてないんだ~、へー」


 鹿野の言葉を聞くと、綺海は少し口角を上げながら言う。


「なんでそんな嬉しそうなんだお前」


 にやける綺海に細い目を向けて言うと、


「まだ南は童貞なんだな~って、エロゲーの様に上手くは行かないね」


「ケンカ売ってんのか?」


「いやいやそんな事はないけど?」


「あ、もしやお前、自分より先に卒業されてなくて嬉しかっただけじゃね?」


「なっ‼」


 俺の指摘に、図星は反応をする綺海。その証拠に、


「そそそんな事ないけど~? べべつに私より先に卒業してたからってなんとも思わないし~?」


 声が裏返って目も虚ろになっている。


「そこで争う必要ないだろ。時が経てばどっちも経験はするだろうし」


 クスッと笑いながら、挙動不審な綺海の肩を叩く。

 もう高校生だ。いつ経験したっておかしくない。今更競っても何もならないだろう。


「ま、お互い頑張ろうね~(初体験は私が絶対奪う)」


「お、おう」


「ちょっと~、幼馴染で仲良く話してないで私も混ぜてよぉ~」


「ごめんー、こいつと話すと話弾んじゃうんだよね~」


「ホント仲良しなんだね~。あんな楽しそうに話してたら止めようにも止めれないよ~」


 静かにしていた鹿野は、俺達の会話がひと段落着くとひょこっと顔を出す。


「あー、てか早く席戻りな? もうすぐホームルーム始まるぞ?」


 チラりと時計を見ながら、2人に言う。

 時刻は8時40分。ホームルームまであと5分であった。


「あーそれもそうだね~」


「戻りますかぁ~、先生怒ると怖いし」


「南くん、また後でね~」


「んじゃまたな~南」


「おう」


 ちょこちょこと自分の席に歩いて行く2人。

 綺海の席は、俺の席から一列前の右へ4つほど離れた席で、鹿野の席は列は同じなものの一番前の席。


 綺海とはクラスでグループを作るときに一緒になったりすることはあるが、鹿野とは授業で関わる事はほぼない。

 なんという不甲斐なさ。


 そんな事考えてると、ホームルームが始まり、そのまま時が経っていく。

 お昼休みは、それぞれ友人を食べるので立ち話くらいしかせず、帰りもそこまで目立った会話はなかった。


 しかし、一日中気になったのは、綺海から向けられるなんとも言えない目線。

 この視線になんの意味があるかは、本人に聞いて見なきゃ分からない。





「よかった……まだ鹿野ちゃんと南はエッチしてなかった。とりあえず寝取るとしたら確実に私の味を覚えさせられる! でも、どうやって南と距離を詰めようか……彼女持ちの男子に安易に近寄ると周囲の視線が痛いし……でも私達は幼馴染! 学校で一緒に居ても周りからは仲がいいとしか思われてない! これはチャンスだ! 鹿野ちゃんと南が一緒に居ないところで積極的に行こう! でも、その前に友達に相談しよ……」

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