第4話 幼馴染と彼女の会話

 そんな雑談をしている内に、学校へ到着した。

 正門をくぐり、下駄箱の方へ向かう俺達。

 すると、後ろからコツコツとローファーの音が響いて来て、俺の肩にポンと可愛げのある手が掛かる。


「み~なみ! おはよ~」


「お、鹿野か。おはよ」


 太陽のような明るい笑顔でピンと立てた指を俺の鼻に当ててくる。


「鹿野ちゃんか~……おはよぉ~……」


「ん、綺海ちゃんおはよ~」


 鹿野に気付いた綺海は、どこかよそよそしく小さく手を振りなががら挨拶を交わす。

 なんか気まずそうだな。

 幼馴染の彼女が現れたら気まずくなるもの無理はないか。


「相変わらず仲がいいね~、南と綺海ちゃん」


 俺の横に着き、手を握ってくると、少し前のめりなりながら言う。


「幼馴染だしな~」


「そ、そう幼馴染だからね~」


「どっちかと言うと腐れ縁だけどな」


「腐れ縁とか言うなし」


「一生友達! とか面と向かって言われたらもう離れられない腐れ縁なんだよな~」


「ふふっ、ホント仲良しだね」


 俺達のやり取りを見た鹿野は小さく笑う。


「南と鹿野ちゃんも仲良いんだね~、というかラブラブ」


 無理やり作ったような笑みを浮かべる綺海に、


「そりゃ~、付き合ってるから仲いいしラブラブだよ~! だよね~南くん」


「そこらのカップルよりは良好な関係だとは思うな」


「なにそれ~、もっとラブラブとか言って欲しかったんだけどなぁ?」


「人前で言えんだろそんな事」


「て、手まで繋いじゃってさぁ~? 今も鹿野ちゃん南にべったりだし」


 さっきから綺海が繋いでる手を死んだ目で見てきているのは気のせいか? それに鼻息も荒い気がする。

 殺気が溢れているようにも思えるし、そんなにこの状況が気まずいのか?


「それはもうラブラブだよ~、相思相愛だしね~」


「俺はあんま人前でイチャつくタイプじゃないけどな」


「でも~、2人になったら南くん積極的じゃん~」


「おい、綺海の前で言うな恥ずかしい」


「あうっ」


 小悪魔な笑みを浮かべる鹿野に、俺は軽くチョップを食らわす。


「へ、へぇ~2人の時は南積極的なんだ~……具体的にどんな感じなの?」


 探りを入れるかの様に、綺海は鹿野に質問する。


「ふふん、そうだよ~。いっぱいギューしてくれるし、キスだって……ね?」


 俺の顔を、じんわりと頬を赤くしながら覗く鹿野。

 うわ、俺の彼女可愛い。なんだこの可愛い生物は。この天使を生んでくれたら両親と世界に盛大に感謝する。


「キ、キス⁉」


 キスと言う単語に、明らかに動揺を示す綺海。


「うん! 南くん上手だからさぁ~病みつく気になっちゃうんだよねぇ」


「……キス上手なんだ南、いつの間にそんなテクニックを……」


「最初はお互い下手クソだったんだけど、いっぱい練習してたら南くんの方が上手くなっちゃたんだよね~」


「そんなキスするんだ……」


「恋人だから普通じゃない?」


「だーかーらー、そうゆう事は人に言わないの」


 幼馴染に彼女とのイチャイチャ話を聞かれたくない。多少の惚気だったら喜んで話すけど、

 少し踏み込んだ話は正直恥ずかしい。

 注意された鹿野は、自分の頭を照れくさそうに撫でながらも、


「えへへ。でもちょっと自慢したかったんだよ~。だって、南くんは私の自慢の彼氏なんだから!」


 腰に手を当てて胸を張る。


「(普通彼氏の幼馴染の前で自慢するか? 私が南の事好きって可能性だってあるのに、脳みそが詰まってない女め)」


 一瞬、綺海が鹿野をギロりと睨みつけたように思えたが、多分可愛い鹿野を凝視していただけだろう。

 分かる。この天使の顔は実に凝視したくなる。




「南の事が好きな私の前で盛大に自慢しやがってぇぇぇ! ムカつくムカつくムカつくムカつく! 絶対寝取ってやる! 南の好きな女子の行動とか仕草とかこっちは全て把握してるんだ……絶対、絶対! 鹿野ちゃんの味を覚える前に私の事で頭をいっぱいにさせてやるぅぅぅぅ‼」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る