第3話 エロゲー趣味

「……なんで、南は鹿野ちゃんからの告白をOKしたの?」


 コホンと咳ばらいをすると、また質問してくる。

 妙に鹿野との事についてツッコんでくるな。幼馴染が恋人とどんな感じなのかそんなに気になるもんか?いや、もし綺海に彼氏ができたら俺も同じことをしそうなので疑問を持つのはやめておこう。


「そうだな~、話しやすい性格いいし、趣味も合う。あとぶっちゃけ可愛い」


「可愛い……私の方が可愛いと思うけど―――――って、南と合う趣味って一つしかなくない?」


「うん、偶然にも同じだったんだ」


「……そんな偶然……ある?」


「俺も奇跡だと思ったわ」


 俺の趣味、それは……ゲーム。これだと誰とでも趣味が合うと思われがちだが、俺が好きなのはただの万人受けするRPGゲームやシューティングゲ―ムではない。

 エロゲーだ。


「鹿野ちゃんも、エロゲが好き……なの?」


「好きってレベルじゃない。これお前を信用してるから言うんだけど、俺よりも全然ヘビーユーザーなの」


「南も結構な量やり込んでるよね?」


「そうだけど、俺の倍近くはやってたんだよな」


「……痴女め」


「ん?」


「いやなんでもないよ?」


 一瞬、綺海が鋭い目をしたような気もしたが、気のせいか。


「で、でも? エロゲヲタクな彼女はちょっとどうかと思うけどな~? ほら、一人でさえ周りの目を気にしてたのに、それが2倍に増えそうな気がするんだけど」


「逆だろ。これまで一人でしか遊べなかった趣味を共有できる人が出来たんだぞ? 至福でしかない」


 エロゲーなんて、偏見になるとは思うがキモデブヲタクがやってるイメージが世間一般な認識だ。


 俺も、その世間体があったためエロゲヲタクな事を綺海にしか言っていなかった。

 だがしかし、鹿野と仲良くなる過程で、エロゲ好きな事が発覚。

 漫画喫茶で一緒にエロゲーをしたこともあった。


 勘違いしないで欲しいのは、まだ、俺達はそう言った行為はしていない。

 ただ純粋に、エロゲーを楽しんだだけだったからな。


 自分が主人公になり、美少女とゲーム内でエッチをする。エロアニメやAVとも違うエロさ。

 その中でも自分が選んだ言葉やストーリーでエッチの内容が変わるゲーム性に、俺と鹿野はのめり込んでいたからな。

 全く、2人の間には気まずい雰囲気は流れなかった。


「いいなぁ~、趣味を共有できる恋人がいるって、私もそうゆう彼氏欲しいわ~」


 グーンと伸びをしながら、でも口調は少し焦った様子で言う。


「お前彼氏くらいすぐ出来るだろ。モテてるし」


「趣味が合う人なんてそうそういなくない? 私の趣味もほら、エロゲと官能小説」


「エロゲは俺と一緒にやりたいからってお前がやり出したもんだろ? 官能小説は完全お前の趣味だろうけど、読むのも書くのも」


「そんな趣味を持ってて理解してくれる人が近くにいればいいんだけどなぁ~」


 チラッと俺の方を伺うように見てくる。

 なんだその目。俺にエロゲと官能小説が好きな男子を紹介しろと? あいにく、俺の周りの友達にはそんな不健全な趣味を持った人はいない。


「どこかしらにはいるんじゃないか? 官能小説とかネットじゃ書いてる人いるし、エロゲだって隠れてやってる人いるとは思うけど」


「そうゆう人が近くにいないから言ってんの! あと居たとしても気まずくならないで話せる人がいる可能性がないから言ってんの!」


 プクリと頬を膨らませながら俺の肩を叩いてくる。

 いなかったとしても、理解してくれる人はいるとは思うけど。今は多様性の時代だからな。


 それに、自分の好きな人が好きなものは受け入れてくれて、一緒に楽しもうとしてくれるとは思うが。

 あれ、こんなような話どっかで………いや、気のせいか。






「私もエロゲー買って色々エロゲの知識学んだのにぃぃぃぃ‼ 南と一緒にやって流れでエッチ出来ると思ったのにぃぃぃぃ‼ 最初からエロゲ趣味の彼女なんて……勝ち目ある訳ないじゃない……どんな奇跡よ‼ 官能小説も私と南がエロゲーしていい雰囲気になってエッチするやつ書いたのに現実にならないじゃないぃぃぃ!」


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