第2話 幼馴染に彼女が出来た報告をした翌日
いつも通り、俺は綺海と一緒に登校する為に、薺宅の前で待っていた。
いくら彼女が出来たと言っても、綺海との登下校は日課なので欠かさない。
これは、彼女の許可を得ている為浮気にもならない。そもそも綺海は俺の事を友達としか思っていないので、浮気展開にはならないから安心だ。
「お、おいっす~」
綺海が家から出て来たのは、数分後の事であった。
制服に身を包み、何かに怯えた様子で縮こまりながら玄関から出てくる。
「お前どうした?体調悪そうだな」
「え、いや………そんなことないけど?」
「いつもより顔色悪いからさ」
「え、嘘? マジ?」
慌てて頬を両手で触り、挙動不審に動く綺海。
実際はそんな事ない。
いつもと変わらず、白くハリのある肌だ。違うと事があるとするなら、挙動がおかしいことくらいだ。
昨日の帰り道から、どうもそそっかしい気もする。
「別にお前が大丈夫ならそれでいいんだけど」
「あ、そ……」
じんわりと染める頬をブレザーの襟で隠しながら、コツコツと階段を降りてくる。
「んじゃ、行くか」
「う、うん」
やっぱりどこか変だ。いつもなら「早く学校行くぞ~」と元気に前を率先して歩く綺海だが、今日は静かに俺の隣を歩いている。
それに、くだらない雑談もない。
本当にどうしたんだ?
横目でチラチラと綺海の様子を伺っていると、
「南……そうえば、彼女とはどんな感じなの……?」
唐突に質問してくる。
「どうって、普通にいい感じだけど、なんでだ?」
「普通に……気になっただけ」
「気になたって、昨日の帰りに色々話してやろうと思ったのに、先に帰ったのお前だろ」
「昨日は用事があったから―――心の準備とその他諸々」
「ん? なんて?」
「いやなんでもない」
「そうっすか」
俺の目を見てはすぐに逸らす。どこか怖がってるようにも思えるが………嫉妬とも捉えられる感じ。
もしや、彼女が出来たから自分とは関わらないとでも心配しているのか。
「鹿野ちゃんに告られたって、どんな感じでされたん?」
「どんな感じーって言われても、呼び出されて告白されたな」
「ふーん、屋上とかに呼ばれたん?」
「なんかお昼食べてたら急に鹿野が俺の方来て、んで、階段の所で言われたな」
「昼間から……大胆だな~鹿野ちゃん」
目を見開いて驚く綺海。
確かに、放課後でもなくお昼休みに告白してくるのは大胆だと思った。階段だって誰が通ってもおかしくないのに。
「鹿野ちゃん、パッとしない南のどこに惚れたんだろうね~、そこが一番謎」
うーんっと喉を鳴らしながら考えこむ。
「おい、それ俺に失礼だろ」
「いやいや、ホントに」
「さ~? 俺にも分からん」
「なら仲良くなった成り行きとかから聞けば分かるかもね~」
「えっとな~、体育祭やっただろ?二ヶ月前くらいに。そん時に係が同じになって、そこから仲良くなったって感じだけど」
「二ヵ月……そんな付き合いで告白するなんてとんだビッチだ鹿野ちゃん私なんて十六年間一緒に居てまだ告白してないんだぞ。浅い付き合いで南の本当の良さが分かるかっての」
「お前、さっきから何ボソボソ言ってるんだ?」
隣で永遠と呟く綺海に、細い目を向ける。
何をそんなボソボソと呟いてるんだ。鹿野と俺の出会いに何か不満でもあるのか?
仲良くなって間もない女子と付き合ってるのを幼馴染として心配してるのか。
それかただの嫉妬……って考えやめておこう。自意識過剰だと思われる。
もし、そんな事を考えてるのバレたら「なに? 私南のこと友達としか思ってないんだけど、変な勘違いやめてくれる?」とかマジトーンで言われそうだ。
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