「一生友達ね!」と言ってくる幼馴染に彼女が出来たと報告をしたら、どうも幼馴染の様子がおかしい

もんすたー

第1話 幼馴染に彼女が出来たと報告したら

 幼馴染というのは、その名の通り、幼い頃から馴染みのある友人の事を言う。

 同性であれ、異性であれ、昔から一緒に過ごしているとものすごく親しい仲になる。


 よくアニメや漫画では恋愛に発展することだって珍しい話ではない。

 でもそれはあくまで二次元の話であって、現実ではそう上手くいかないのだ。

 俺、斉木南(さいきみなみ)には幼馴染がいる。


「一緒に帰ろ~」


 ある日の放課後、俺の肩を叩き後ろから現れる女子。

 薺綺海(なずなまりん)。家も隣で、親同士も仲がいい。典型的な幼馴染というやつだ。小中と一緒に過ごし、現在進行形で仲がいい。


 黒髪のサラリと艶のあるボブショートの髪には内側に少し青色が入っている。

 白く柔らかそうな足に、スッキリとした腰元、そして一際目を引く胸。

 顔もとびっきりの美形。完璧な女子高生と言っても過言ではない。


 もし、ここが漫画の世界だったら綺海と一緒に過ごしていくうちに恋愛に発展するかもしれないが、それは到底無理な話であった。


「一生友達ね!」


 小中高と、何かあるごとに言ってくるセリフ。

 そう、綺海は俺のことをただの幼馴染としか思っていないのだ。


 一緒に居ると周囲から付き合ってるだのと噂される事があったのだが、その都度綺海は否定して「ただの友達だから」と一点張り。一緒に買い物に行った時、店員さんにカップルですかと聞かれた時も、「幼馴染です!」と即答する。


 要するに、俺と綺海は幼馴染なだけで、それ以外は何もないという事だ。

 異性の幼馴染がいるのに、ラブコメが起きないと言うのは心に突き刺さるものがある。


 それも、キッパリとただの幼馴染とか友達とか言われるとなおさらだ。


 だがしかし、不幸の幸いにも俺にも彼女が出来た。


 鹿野愛来(かのあいら)。同じクラスで、綺海とは違うグループに居る、あまり目立たない女子だ。だが、彼女はおしとやかで人当たりもよく、人気者の部類に入る。


 茶髪のカールが掛かったセミロングに、細くハリのある太もも。顔も可愛い系。

 胸は平均以下だが、そこが小柄な彼女と合っている。


 今日は、俺に彼女が出来た事を綺海に言おうと思う。


「何、なんか深刻そうな顔してどうした?」


 隣にいる綺海は俺の顔を覗きながらそう言ってくる。


「あ、いや」


「その反応、絶対何かあるって感じだね」


「まぁ、話はあるな」


「大事な話な予感がするけど~、何か悪い話なん?」


「いやいや、俺にとってはいい話なんだけど、お前にとっていい話から分からん」


「なんだよそれ~、話してみ?」


 ニヤリと不快な笑みを浮かべながら、肩をツンツンと突いてくる。

 別に、俺に彼女が出来たと知っても綺海はなんとも思わないんだろうな。俺の事、幼馴染としか思ってなし。


 それどころか、応援されそうだ。

 何か悩んだら恋愛相談に乗ってくれたりアドバイスをしてくれたり、逆に頼り甲斐がありそう。


 俺がここで変に深刻そうな顔しても、綺海に心配されるだけだ。


「俺、彼女が出来たんだ」


 吹っ切れた俺は、見栄を張りスッキリとした顔で言う。


「……彼女?」


「そう、彼女」


「へ、へぇ~……そうなんだ」


「なんだ、どうした?」


 それを聞いた綺海は、ポカンとした表情を浮かべたが、


「おめでとじゃん~! 南のくせにやるなぁ~」


 すぐにいつもの笑顔に戻り、肘で軽く脇腹を押してくる。

 なんだその反応は。ただ単に動揺しただけか。まぁ、幼馴染に彼女が出来て驚かない方がおかしいか。


「どうもどうも~、俺にもやっと青春が訪れたってわけさ」


「これまで、女っ気なかった南にとうとう彼女か~」


「どうだ、凄いだろ」


「世紀の大発見並に凄いよ」


「だろだろ~、もっと崇めよ」


「んで、相手は誰なん?」


「俺達と同じクラスの鹿野愛来だよ」


「あ、愛来ちゃんね…………ふーん」


「なんだ、文句あるのか?」


「いやいや、愛来ちゃん可愛いのによく付き合えたな~って」


 確かに、不思議に思われても仕方がない。

 鹿野は静かなキャラであったが、男子によくモテる。告白されてる所なども、多々見かけたことがあったくらいだ。


「それがさ、告白されたんよ」


「告白された⁉」


 告白という言葉に、綺海の声が大きくなる。


「俺も、告られた時はビビったよ。まさか鹿野から告られるとは思わなかったから」


「そ、そうなんだ……告白か――」


「ん、なんか言ったか?」


「いや、なんでもない」


「お、おう」


 そんな俺に彼女が出来た事に驚くか?別に、高校生にもなったんだから出来てもおかしくないだろ。流石に動揺しすぎだ。

 綺海だって、結構モテるんだから彼氏の一人や二人くらい出来てもおかしくはない。


「まぁ、帰りながら色々付き合う事になった経緯を教えてやるよ」


 色々気になってそうだし、家に帰りながら教えてやろうと思ったが、


「あ、今日私用事あったんだった! また明日ね!」


 と、綺海は俺を置いて足早に帰ってしまった。


「分かった、また明日な」


 その後ろ姿に、俺も手を振る。

 なんだ今日のあいつ。なんかいつもより落ち着きがない。

 体調でも悪いのだろうか。


「あいつのことだし、別に気にしないでもいっか」


 そう呟くと、俺はスマホを開き、鹿野へ『今日、一緒に帰らない?』とLINEを送るのであった。





「南に彼女が出来ちゃったぁぁぁぁ‼‼ ………なんで⁉ 私が一番近くに居たはずなのに幼馴染なのに……私の方が鹿野ちゃんより南の事知ってるのに……おっぱいもおっきいのにぃぃぃぃ‼‼」

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