メリー・オア・ノット!!!? ガテン系メイドは占いかぶれなボクっ子ご主人様の専属サンタをしたくないッッ ※アドベントカレンダーなのにクリスマスは消滅したようです
Tale 2 (Dec. 12) メイド服について
Tale 2 (Dec. 12) メイド服について
なにを隠そう、
日給、三万。時給にして四千円に近い破格のアルバイト。
半年無職のまま家具に散在して貯金が底をつきかけていた端柏ヒタキは賭けに出た。
体力に自信はある。見かけによらず家事もこなし不得手はない。ほかにアピールできるものといえば気合いと意気込みだけだと悟ったヒタキは裁縫スキルもフル回転させ見事に
応募者は全員スーツだった。
【服装:清潔感のあるもの。(募集要項より)】
★ ★ ★
ニッセはガラスにへばりつくようにしてベランダから
今世紀最大の憂鬱に飲まれヘッドドレスをもしゃる機械と化したヒタキが引っかかっている特大ビーズクッションのそばのローテーブルにはヒタキ愛用のバックル付きスクエアバッグと並んで意外に目立つ装飾のないスマホが放り出されていた。すでに二時間以上も
赤い靴のまま、ニッセはフローリングをぺたりぺたりと決死の覚悟でスマホに近づいていく。ローテーブルによじ登り、自分の顔より大きな液晶に表示された緑の電話アイコンに手のひらでタッチした。
んポッ
「も、もしもしぃ、ニッセでありスますっ!」
『おや?』
バイブをやめたスマホのスピーカーからよく通る若い女性の
声が遠いのかと思ったニッセはマイクがどこかわからずとりあえず液晶に赤い
「そ、そうでありスますっ!」
『娘さんで?』
「ニッセはニッセでありスます!」
『なるほど』
冷静に納得してみせたあと、電話口の女性はしばし考えこむように間をあけた。ほどなく、
『ニッセさん。こんにちは』
「こんちはでありスます!」
『こんにちはでありすます。申しわけありませんが、ヒタキ様にお取り次ぎ……いえ、替わっていただくことはできるでありすますか?』
「い、いまは、つごーが悪いでありスますっ」
『左様ですか。では、伝言をお願いいたします。
「ヴぁいぼウッッ!?」
大声をあげたのはニッセではない。
むしろニッセはその至近距離からのだしぬけな圧倒的音圧にたちまち意識を刈り飛ばされ「こふっ」とよだれを噴き散らしてスマホの上につっ伏した。その液晶と人形サイズのケープの隙間を青いネイルが風のようにすべり抜け、その旋風でニッセもろともよだれを吹き飛ばすとともに妖精の体重で通話の終了アイコンをタップされる前にスマホを救出した。
「端柏です! 幾春さん!? はいッ、ハイッ! 全ッ然明日からでダイジョブです!! はいっ、ハイっ、ハイッ! わぁりやしたッ、よろしくお願いしゃっスッッッ!!」
んポッ
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………よし。……よし、ヨシ……よし、よし、ヨシ、ヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシよっっっしゃあああああああああああああああああああああああぁぁらぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!」
ダンッダンッダンッダンッ
ヒタキがフローリングを踏み鳴らす音だ。下の階にも住人はいる。
床を伝う振動でニッセは目を覚ました。
なにが起きたかわからず自分のヨダレでべちゃべちゃになったアゴもぬぐえないままフローリングを這いすすみローテーブルの脚にすがって立とうとしていた。
下着姿で床に転がるヒタキ。往年のガメ〇よろしく水平スピンで宙を舞うニッセ。
通常の人体の4分の1しかない小さな体は壁や天井を何度もバウンドし、ようやくフローリングに着陸してからも額を押さえて「んももももももももも!!」とうなりながら
「ぐぐぐ……なんっの、くぉれっ……しきィッ……!」
うめき声をあげつつも歯を食いしばって先に立ちあがったのはヒタキだ。明日への希望と日給三万円が彼女を奮い立たせた。責任感は特にない。そんなもので飯が食えるか。
が、体を起こしたちょうど目の前に、まだ殺虫剤をかけられたコオロギのように床で
「よ……妖精さん?」
「むぬぬぬぬッ……すんごい普通の反応でありスますっ……」
「うぅわ、しゃべった! 語尾ダっサ……」
「ほっとけぇっ、でありスますぅ……!」
【クリスマスまであと13話!】
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