第54話
「何を騒いでいるの?」
夢か?幻聴か?
俺が聞き違えることのないエリーの声が聞こえた。
ゆっくり聞こえた声の方を向くと、あんなに会いたかったエリーが俺を見上げていた。
「もうルフラン、眉間にシワが寄っているよ。」
そう言ってエリーの手が俺の眉間のシワを伸ばそうとグリグリする。
幻じゃない本物だ。
騒がしかった通路が一瞬で静まり返った。
そりゃそうだ。
エリーのような綺麗で可愛い令嬢が突然現れたんだからな。
「エリー・・・なんでここに?」
なんで学園の制服を着ているんだ?
「長くなるから後でゆっくり話すね。それよりもルフランお昼は食べたの?」
「いや、まだだが」
「よかった!ルフランと一緒に食べようと思ってお弁当を作ってきたの」
そう言って微笑んだエリーを見て、そこらじゅうから溜息が漏れた。
男たちは顔を赤くしている。
ダメだ!エリーの微笑みは男を虜にしてしまうんだ。
俺はエリーの微笑みを誰にも見せないようにエリーの手を引いてその場から離れることにした。
おい!ゾルティーまで真っ赤じゃないか!
やめろ!みんなエリーを見るな!
ああエリーの手だ。
小さくてスベスベなエリーの手だ。
エリーの持つバスケットを引き取り歩き出した。
ゾルティーが俺を呼んだ気がしたが、まあ後は任せても大丈夫だろう。
少し離れるとさっきの何倍もの騒がしい声が聞こえた。
横目でエリーを何度も確認してしまう。
俺はカフェのテラスの端まで連れて行くが勿体なくて手を離すことが出来ない。
「どうしたの?ルフラン座りましょう」
エリーはバスケットを俺の手から取りセットしていく。
「たくさん食べてね。ルフランと前に約束したでしょ?また作るって」
「ああ」
覚えてくれていたんだな。
エリーが目の前にいることが信じられない。
俺は緊張で震える手でサンドイッチを掴んだ。
口に入れた瞬間、あの時の味がした。
王宮での食事も学園の食事も味がしなかったのに・・・
俺は夢中で食べた。
エリーもタイミングを合わせて俺に食べさせてくれる。
俺も口を開けて催促する。
俺を見るエリーの女神の微笑み、こんな幸せってあるか?
まだまだ食べられるが弁当がなくなってしまった。
レイが『綺麗になっているわよ』って言っていたことは本当だったんだな。
疑ってはいなかったが、俺の想像よりも遥かに美しくなっていた。
エリーも17歳になったもんな。
それに・・・エリーに胸があるのだが?
聞いても大丈夫だろうか?
無理しているんじゃないのか?
「エリー・・・・気になることがあるのだが」
「なんでも聞いていいよ」
「その・・その胸は何か詰めているのか?」
失敗した!
エリーの怒ったところを初めて見た。
その顔も可愛いがな。
「そんな事を言うのはこの口か~」
エリーの指が俺の頬を引っ張ったんだ。
「えい~いひゃい」
「私がどれだけこの胸を育てるのに努力したと思っているの?」
育てる?え?本物なのか?
胸は育てるものなんだ・・・初めて知った。
「エリーダメだよ。不敬罪で捕まるよ」
後ろからゾルティーと学園の制服を着たアランとレイが出てきた。
冷静に周りを見るとカフェの中から生徒たちが見ている。
あいつらこっそりエリーの微笑みを見ていたな。
手を離したエリーは立ち上がって胸を張った。
「ふふん、私も人並みに育ったのよ。どう?」
自慢気に言われても、なんて答えればいいんだ?
大きくなったが正解か?
アラン助けてくれ!
アランが察してくれた。
「エリー、こんな所でそれを聞くのはどうかと思うよ?聞こえてはいないだろうけど皆んなこっちを見ているよ」
エリーは首を傾げて「だから?」って聞いているけど、その仕草も可愛い!
相変わらずエリーは周りの視線に気づかないんだな!
おい!お前ら見るな!
ゾルティーもまた赤くなっているぞ。
「そ、それよりどうしてここにいるんだ?学園の制服まで着て」
話しを変えて一番気になることを聞いた。
「私たちウインティア王国に帰ってきたの。だから学園に編入するの。今日は手続きが終わったら帰るわ。明日からよろしくね」
嬉しくて体が勝手に動いた。
気づいた時にはエリーを抱きしめていた。
ああ、エリーの香りだ。
「あ、兄上ここではダメです。詳しい話はあとで聞きましょう」
なんだよ!邪魔するなよ。
エリーの香りを堪能してるんだよ。
そっとエリーから離れるとエリーの綺麗な顔がほんのりとピンク色になって照れているように見えた。
エリーのこんな顔見たことがない。
少しは俺を意識してくれているのだろうか?
それに柔らかかった・・・本物なんだ。
前に抱きしめた時と抱き心地がまったく違った。
胸って柔らかいんだな。
これも初めて知った。
その時、午後の授業の予鈴が鳴った。
「学園が終わったらウォルシュ家に行ってもいいか?」
「もちろん!待っているわ」
エリー、アラン、レイの3人と手を振って別れた。
「兄上エリザベート嬢にまた会えて嬉しいですか?」
ゾルティーまだいたんだな。
「ああ、またエリーの側にいられる」
エリーの小さな手も、香りも何もかも何度も思い出していたんだ。
エリー本当に会いたかったんだ。
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