第27話

今日はピクニック日和の気持ちいい朝を迎えた。

早速お弁当を作るために調理場に向かった。


昨日のうちに下ごしらえはしていたから時間はかからない。

この世界には前世の名称とは違うが日本と同じ調味料があるのだ。


だけどマヨネーズだけはなかったんだよね。

だから簡単だし作ったんだ。


元マヨラーだと言っていたレイは『これよこれ!』って、大袈裟に涙を流していたわ。


マヨネーズを使った料理は伯父夫婦にも、公爵家の使用人たちにも絶賛された。

これも異世界転生によく出てくるあるあるだよね。



ピクニックの定番のサンドイッチは、照り焼きチキンサンドとたまごサンド。

それと前世のハンバーガーを作った。


それにサラダとポテトフライ。

昨日から漬け込んでいた私特製の唐揚げだ!



多めに作った料理は伯父夫婦と、公爵家の使用人たちに『お昼に食べてね』と、それぞれ大皿に盛って置いてきた。




先に到着したルフランが私の作ったお弁当のカゴをチラチラと見てそわそわしている。


私も令嬢の中では背が高い方だが、ルフランはその私よりも頭ひとつ分は背が高い。


無駄のない引き締まった身体に長い手足。背筋の伸びた綺麗な姿勢。

結論!とてもスタイルがいい!


レイも到着した。

今日のレイは私が13歳の時に着ていたズボンをはいている。

ちっちゃくて可愛い!


当然のようにレイを前に乗せるアラン。


まだ私の乗馬禁止令は解除されていない。


そうなるとルフランが私を乗せることになる。


ルフランはなにかに耐えているような引き締めた口になっている。

彼の大きな手が私を馬上に引き上げてくれる。

うん。今日の彼の手も温かい。


背中に当たる彼の胸は広くて馬の扱いも上手い。安心して身を任せられる。

平民のルフランが馬に乗れることを深く追及することはしない。


きっと私の想像通りなのだろう。





初めてエメラルドグリーン色の湖を見たレイは瞳を輝かせて喜んでいる。


ルフランの口の端も上がっている。



公爵家の使用人たちがテーブルセットを手際良くセッティングしてくれて帰って行った。

後で適当な時間に片付けに来てくれるらしい。


テーブルに乗せられたお弁当のカゴがどうしても気になるルフラン。


「ちょっと早いけどランチタイムにする?」


「い、いいのか?」


ルフランを見ていたアランとレイも気持ち良く頷いてくれる。


料理を出していく度にルフランの口の端が上がっていく。

なんだか可愛い。


「これ全部エリーが?」


「そうだよ食べてみて」


お!ルフランが最初に手を出したのは照り焼きチキンのサンドイッチだ。


一口食べて「美味しい!この白いソースは何だ!」

マヨネーズも気に入ってくれたようだ。

分厚いメガネのせいで目は見えないけれど、驚いているようだ。


次々に食べていくルフラン。


アランのお気に入りはハンバーガーだ。


レイも小さな口でたまごサンドを食べている。


レイがアランの口に横からポテトフライを持っていくとパクッと食べるアラン。


それを見たルフランの動きが止まった。


まあ、イチャついているように見えるよね。


「あ、あれは・・・」


「アランはね、昔から信頼している人に食べ物を差し出されると無意識に口を開けちゃうんだよね。可愛いでしょう」


「お、俺も・・・」


なにを言っているのか声が小さすぎて分からない。


「私自慢の特製唐揚げだよルフランも食べて」


フォークに刺した唐揚げをルフランの口もとに差し出した。

遠慮しながらパクッと食べるルフラン。


「こんなに美味しい食べ物は初めてだ」


「大袈裟だよ~」


なんて言いながらも褒めてもらえるのは嬉しい。


何を食べても美味しいと次々食べていくルフランに私も唐揚げやポテトフライを口に入れてあげる。

最初は遠慮していたのに、最後の方では口を開けて待っているルフラン。

雛鳥に餌をあげている気分だ。


多めに作った料理はあっという間に無くなった。


ルフランの口の端は今までで1番上がっている。

満足してくれたようだ。


食事のあとはレイがお茶を入れてくれた。

レイの入れるお茶は美味しいんだよね。

これも王子妃教育で習得したことらしい。

レイは学院に入る前に王子妃教育を終わらせていたからね。



今はアランと並んで散策している。


「アレも見慣れてきたな」


「お似合いの2人でしょ?」


アランとレイが纏う優しい雰囲気は見ている私までが癒される。


残された私とルフランは会話を続ける。


「ルフランから見てミーシャ嬢の魅力ってどこか分かる?」


「俺には分からないな。あの女だけじゃなく他の令嬢にも興味がないからな。アランだってレイ以外の令嬢には見向きもしないだろ」


そうなんだよね。

アランの目の前で転んだり、物を落としてみたり、ぶつかってきたりする子を何度も見たけれどアランは知らん顔しているんだよね。

それも紳士としてはどおなんだか。


アランが気にするのはレイと私の2人だけ。


私はアランの姉だから嫉妬の目を向けられることはないけれど、レイを見る令嬢の目は嫉妬と妬みが含まれている。


そして、王子がレイの存在を無視する事でレイを嘲笑い、軽蔑の眼差しを向ける令嬢も多い。


そんなレイが傷ついていないワケが無い。

それでも毅然とした姿を崩さないレイ。

尊敬するのは当然だ。


普段は友人として適切な距離を置いている2人だが、公爵家の庭園や、今日のように誰も見ていない所でアランはレイの心を癒すのだ。



レイを見るアランの眼差しは年を重ねるごとに甘くなっている。

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