第5話

9歳になった。


今年も王家からのお茶会の招待状が届いてしまった。

また行くのか・・・

今回も挨拶だけで帰えろう。


王子たちの側近候補やお友達に選ばれるのは名誉なことだとは思うが、私だけでなくアランも興味が全く無いのよね。

このままフェードアウトする方向でいければいいのに、と思う。



普段私は動きやすさ重視で服を選ぶのだか、今回のようにお茶会に呼ばれるとそれなりのドレスを着ることになる。


そうなると、張り切るのが祖父母なのだ。

私を着飾る口実が出来て張り切ってデザイナーにあれこれと注文している。

もちろんアランとお揃い。

アランは服装には拘りがなくされるがままだ。


「目立たないドレスでお願いします」

生き生きしている祖父母を見ると、もうこれしか言えない。


出来上がったドレスは1枚ではない。軽く10枚はある。

それも、いかにもお金かけてます!って感じのドレスだ。

やめてくれ!


こんな数のドレス外に出ない私に必要なのか?


その中でも私とアランの髪の色にも合う淡いラベンダー色のドレスを選んだ。


お茶会当日。

朝一でメイドに起こされ、浴室に連れ込まれてあっちこっち磨かれた。

肌はスベスベになったが既に疲れている。

そこからドレスを着せられ、メイクまでされる。

もちろんメイクはナチュラルになるようにお願いした。

やりきった感満載のメイド達は満足そうな顔で頷いている。


アランも今日は一段とかわいく出来上がっている。

これはお茶会の会場で令嬢達の目にも止まってしまうだろうな。


祖父母に至っては「うちの孫が一番可愛い」

「双子の天使が我が家に舞い降りた」など言ってメイドたちと一緒に盛り上がっている。

うん、安定の孫バカだ。


「それではお爺様、お祖母様行ってまいります」


2人で馬車に乗り込み王宮に向かう。


会場に着くなり令息令嬢に注目されている。


そりゃあね。アランは誰が見てもかわいいし、優しい性格が顔にも現れていて素敵だものね。




王妃の横には2人の王子が並んでいる。


アランと挨拶のために並ぶ。


侯爵家の嫡男、嫡女として恥ずかしくない挨拶を無難に済ませた。

あとは前回同様、茶菓子を堪能して帰るだけ。


そっと周りを見れば、また見慣れた光景が見える。


王子2人に群がる令嬢たち。

あれだけの令嬢に囲まれる王子たちも大変だろうね。

それとも喜んでいたりして。


私が安心できるように、早く婚約者を決めてくれ!


やっべ!第一王子と目が合った。

知らん振りして、アランの口にお菓子を入れる。

礼儀作法もマナーも完璧なアランだけど、口のそばに食べ物を持っていくと自然と口を開けちゃうのは私のせいかもしれないわね。


幼い頃から繰り返し食べさせてきたからね。

今じゃ当たり前になっていて素直に口を開けるのがかわいいわ!


アランもお菓子に満足したようだし、そろそろ帰りましょう。




またまた馬車に乗り込む間際に「おい!」もう振り向かなくても分かる。第一王子だ!


「命令だ!毎日僕に会いに来い!」


「無理です」


逃げるように馬車に乗り込んだ。


本当になんなんだ!

私に声をかけるな!

早く婚約者を見つけろ!

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