第25話 二つのボスを撃破

順調に攻略を進めた俺たちは二階層のボス部屋まで来ていた。


そのボス部屋の扉を見て呟く東條。


「これが……世界最強と呼ばれてる霧島の力なのか……」


俺を見て呟いていたが、世界最強は言い過ぎなように思う。


「アメリカや中国とかは俺より上なんていくらでもいるだろうさ」

「どうかな……。中国でもここまでのは聞いたことがないし。アメリカも同じでそこまで強い冒険はいなかったはずだ」


俺は実際に海外の冒険者にはあまりあった事がないので分からないが。


そもそも強い冒険者は国が外に出したがらないから当然の話ではあるのだが。


そう考えたら秘匿されてる可能性も全然ある訳か。


「私はロシアで見たよ。霧島がロシア軍を壊滅させてるところ。汚い映像だったけど圧倒的な攻撃力で壊滅させてたのを覚えてたし、すっごい恐怖だったけど」


と言って俺を見てくる。


「味方だとこんなに頼もしくなるんだなってふうにも思ったよ」

「そりゃ良かったよ」


そう言いながら俺はボス部屋に繋がる扉を開けようとしたが


「最後に、いいか?霧島」


そう聞いてくる東條に続きを促す。


「私はもうお前のことを味方だと思ってるけど、そう思ってていいのか?」

「東條に敵対の意思がなければ好きに思ってればいいさ。俺も悪魔じゃないんだから」


そう言いながら扉を押し開けた。

中にいたのは巨大なケルベロスだっと。


「グルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……」


3つの首それぞれの口、牙と牙の間からヨダレが垂れ流れている。


そのケルベロスが即座に走ってくる。


死の牙デスファング


スキルを使ってきた。

やはりこのダンジョンでボスをやっているようなモンスターは当然のようにスキルを使えるらしいが。


【ファランクス】


俺は俺たちの前方にシールドを展開。


3つの首で俺たちを同時に攻撃しようとしていたが、その牙が届くことは無かった。


シールドに噛み付いたケルベロスの牙は砕けて


「……ガァァァァ……」


カウンター魔法のファランクスが作動。


ケルベロスの3つの首、全てが断ち切られた。


一瞬のできごと。


【霧島がケルベロスを討伐しました】


【クリア条件が確認されました】


【初回攻略特典である不死鳥の羽根が霧島のアイテムポーチに送られました】


どれだけ戦闘時間が短かったとしてもこのように表示されるログ。

それで俺たちの勝利を確信した。


クリア特典がアイテムポーチにしっかり入っていることを確認して先に進もうとしたが東條が話しかけてくる。


「これが黒の殲滅者、の力なのか。ボスを相手にしても一瞬だなんて。デストロイヤー、そう呟いたロシア軍の兵士の気持ちが分かるよ」


俺が戦う時に心がけていることはある。


それは戦闘時間を無駄に伸ばさない、ということ。


すぐに倒して魔力消費を抑えるのを徹底している。


そんな俺を見て身震いする東條。


「ははっ……体が震える。ほんとうに規格外だな霧島は。ロシアはこんな怪物を相手に戦っていたのか。勝てるわけないじゃないか」


そんな東條の言葉を背に受けながら俺は更に先のフロアに進んだ。


「前と同じか」


次の階層に続く扉は固く閉ざされていた。


「ステータスオープン」


その扉のことをいろいろと調べてみたが、何も分からなかった。

強引にやれば開くかもしれないがそれはやめておくことにする。


なにが起きるか分からないし。


そうしながら部屋にあったモニターに目をやった。


そこにあったのは


「これ、各区画の攻略状況かな?」


分割された画面だった。

何十個もあってそこには攻略中か攻略済みかを示すマークがあったが。


現在、攻略されているのは西林の言った北海道区画と、俺のいる区画だけ。


勝負をしかけてきた西林は未だ攻略中なようだが。


そうして俺がモニターを見ていると真白が横から俺の視線を追ってくる。


「女の子見てるの?」

「俺がそんなもの見るような男に見えるか?」

「カタブツだもんね。そんなわけないか」


別にカタブツじゃないと思うけど、と思いながら俺はモニターの下にあったボタンに手を伸ばす。


番号が書かれたボタンだ。


「なんなんだろうなこれ」

「さぁ?なんなんだろうね」


ボタンの上のプレートには【お助けボタン】という感じの言葉が書かれているが、どういうことだろう?


そう思いながら俺は西林のモニターの番号を確認。5番だった。


多分関係があると思うので俺は5番のボタンに手を伸ばすと、押した。


すると転移魔法を使う時のように俺たちの下に魔法陣が現れた。


「こ、これなに?!ま、まさか転移しちゃう感じ?!」


そう聞いてくる真白に頷く。


「おそらくな。そんな感じだろう」


俺がそう答えた瞬間、俺たちの体は光に包まれた。


次の瞬間俺の前には女の顔があった。


「き、霧島?!」


そう叫んで後ずさるのは西林という女だった。


「な、なんでやねん。なんでお前がここに」


そう呟く西林にかいつまんでこれまでのことを説明。


「ちっ。そしたらウチらの負けってことか。はっ。意外にやるようやな?見た目がモヤシやから、もっと弱そうなんを想像してたけどやるやん」


そう言いながら西林は歩いていく。


「これからボス戦や、そこでウチらが華麗に倒すとこ見とれや」


そう言って西林はパーティメンバーを引連れてボスフロアの中に入っていった。


それから数分後。


ボスのブラックドラゴンの大群に何もできずに吹き飛ばされる西林。


「ぐっ!なんやこいつ……でも、おもろいな。燃えてくるで」


だが、そう呟いている西林から目をそらすブラックドラゴン。


今度は俺を見て


「ガァァァァァァァアァアァ!!!!!」


なにかに取り憑かれたように俺の方に向かってくるブラックドラゴンはそのまま口にエネルギーを溜め出して


【メガブレス】


ブレスにして吐き出してくるのを見て俺は


「俺とやりたいの?やめといた方がいいと思うけどな」


ため息混じりに呟いて魔法を使う。


【ハイエクスプロージョン】


ブラックドラゴンを。


​───ブレスごと吹き飛ばした。


それによって生じた爆風がこちらまで届いてくる。


余りに強力な魔法は他の魔法の威力をすべて殺して、なかったことにできる。


これは、そういうことだった。


そうやってすべてを終わらせた時俺は振り返って、爆風で転がっていった西林に近付こうとしたが


「は、ハイエクスプロージョン……お、お前は……」


西林のパーティメンバーに声をかけられた。

黒髪の男。


名前は知らないが。


「忘れもしない、この魔法は……黒き死神……ブラックデストロイヤー。シックス・ウィンター……祖国ロシアに六の冬を与えた、悪魔……だ」


その男の手の甲にはかつてロシア軍に所属したことを示す紋章が刻まれていた。


男は俺を恐れ半分、怒り半分の表情で睨むように見ていた。


少しでも神経を逆撫でするようなこと言えば戦闘になりそうだ。

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