第22話
ベルゼブブを含めて俺の魔法でこのフロアを飛び回っていたハチ達の動きが鈍った。
普通にダンジョン外にいる形状のモンスター相手は意外とこういう知識も使えるらしいな。
そのベルゼブブが俺に目を向けてきた。
そして手に持っていた杖を天に向ける。
【ベルゼブブが魔法ハイパーインフェルノを使いました】
俺に高速で向かってくる火の柱。
それは俺の体に当たったが
「ギィィィィィィィィィィィっ?!!!!」
ここでやっとベルゼブブが言葉を発した。
「残念、効かないんだよねそれ」
俺は火魔法を完全に無効化できるアクセサリを今つけている。
だから火魔法は効かない。
【ベルゼブブが魔法ハイフリーズを使いました】
今度は俺を凍らせようとくるが。
「効かないって」
少しも寒さを感じない中俺はベルゼブブに向かって歩いていく。
それを阻止しようとなんとかハチが飛んできたが
【十字斬り】
俺はそのハチをすべて斬り殺してそのまま抜き身のままベルゼブブに近付くと、剣の先をベルゼブブに向けた。
「悪いね。俺の勝ちだ」
【閃光斬り】
俺はベルゼブブを倒した。
するとベルゼブブが呼び出していたハチは何処かへと消えていく。
思った通りだな。
あれらのハチは突然なにもないところから出てきた。
だからベルゼブブの魔法によって作られているのではないかと思ったが。
その場合本体を倒すと消えるだろうとも思っていた。
こうして本体を倒したらいなくなるところからやはり読みが当たっていたらしい。
【霧島が大迷宮1階層のボス、ベルゼブブを撃破しました】
そう表示された。
駆け寄ってくる真白に目を向けて
「サポート感謝するよ」
「うん」
そう言いながらフロアの先に進もうとしてみるが、東條も駆け寄ってきた。
「なんだ……?今の魔法は」
俺の顔を見てそう聞いてくる。
「日本にこれだけ強い冒険者がいるなんて話聞いたことがない!ダンジョンが現れたあの日から日本は完全に後進国となった」
そう言って俺の胸ぐらを掴んでくる。
今までに見たことのない表情。
「だが、ひとりだけ心当たりがある。それはあの穢れた人間だ。お前なのか?それは」
黒の殲滅者、とすら呼ばないのはそれだけ俺の事を嫌っている証なのだろう。
「答えろ!」
「俺がそうだと答えたら、なに?」
「貴様のせいで私達ロシアの血が流れた人間がどれだけ苦労したか……」
「知らないな」
「なっ……」
「お前たちがどれだけ苦労したかなんて知らないし興味ないから。それに、自業自得だろ?」
勝手に侵攻を始めて返り討ちにあって、言うことがそれなのか。
「どうでもいいよ。お前らの苦労なんて」
そう言って歩いていこうとするがそれでも俺に縋り付くようにしてくる。
「私の名前はアンナだ。覚えておけ。貴様を地獄に引きずり下ろして必ずや祖国ロシアを復興する者の名前だ……!!」
「それは俺に言うことじゃないと思うけどね」
それ以上なにも言うこともなく俺はアンナを引き剥がして先に進んでいく。
その道中で先に倒れた冒険者たちの様子を見てみたが毒状態も解除されていた。
問題ないだろう。
歩いている道中で真白が話しかけてきた。
「あの時日本が敗戦国になったら私たちが今のロシアみたいになってたんだよね?」
「さぁ?それは知らないな」
ダンジョンができてから力が全て的な流れができつつあり、とにかく国家間がギスギスしていた。
まぁありえない話ではないだろうなということを思うと怖いものである。
◇
大迷宮一層突破の報告は真白に任せることにした。
俺は陽菜に呼び出されていたので彼女の部屋を訊ねた。
「なんの用?あんまり男を部屋にあげない方がいいと思うけど?」
「なぜですか?」
「ほら貞操的なあれだよ」
「それなら心配はございませんね。私の結婚相手はお兄様と決めておりますので。夫となる方を部屋に招くのは当然のことです」
小さな頃から割とその手のことは言っていた陽菜だけど、俺は冗談だと思ってた。
でも、今日思った。
(あれ、もしかして本気で言ってるのか?)
俺としては別に陽菜とは結婚するつもりはあまりないのだが。
だって血は繋がってないとは言え一応俺にとっては妹みたいなものなわけで。
いや、考えるのはよそう。
そう思ったとき。
「えー、本日のニュースです」
と、部屋に置いていたモニターが音声を流し始めた。
「ダンジョンができた日から攻略できていなかった大迷宮の1階層が初めて突破されました。攻略したのは二階堂真白さんのパーティです」
と、紹介される真白。
なぜかモニターの中にいた。
俺の代わりに報告に行ったのはいいけどこんなインタビューにまで付き合わされているらしい。
報告に行かなくてよかったー。
そう思っていたら前に見た髭もじゃの冒険者省の大臣が入れ替わるように出てきた。
「えー、大迷宮突破の件だが、これでやっと一区画の攻略に成功した、という話だ。皆知っての通り大迷宮は日本全国に張り巡らされるように生成されている。入口は数十もあり、その全てが別々のダンジョンとして独立しているみたいだ。それを同時に攻略して次の階層への扉が開く、というシステムみたいだが、攻略されていなのは残り、ひとつ。関西の区画のものだ」
なるほど。
俺はあまり詳しくなかったが、つまりあと関西の区画が攻略されれば次の階層へ行ける、とそういうわけか。
となるとそれが攻略されるまでは特にやることがないと、考えていいみたいだな。
そう思いながら陽菜の顔を見た。
「そろそろ私もダンジョンに出ましょうか?お兄様」
「いや、陽菜は最後まで取っておくよ。詰まったら頼むよ」
「私も早くお兄様と冒険したいのですが、仕方ないですね」
そう言いつつも納得してくれている陽菜。
そのあと適当に陽菜と話してから俺は外に出た。
真白から家まで送って欲しいとの連絡があったから迎えに行くところなのだが
その道中。
冒険者たちに絡まれているアンナを見かけた。
「えぇ?東條さんよぉ。あれだけ自分たちが攻略するって息巻いてたくせに別のヤツに攻略されてんじゃねぇかよ?普段イキりやがってムカついてたんだよ、今からぼこすわ」
アンナの腕を乱暴に掴む男。
それを睨むことしかできないらしいアンナ。
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